パブリッシャーインタビュー「フライハイワークス」(後編)

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そうだ、フライハイワークスさんに訊いてみよう(後編)

決して「作家性」に口を挟まない、確たる理由とは

私がパブリッシャーとして開発中の作品に意見をさせていただく際の基本方針として、「プロダクト」的なところには口を出すが、「作家性」的なところには口を出さないというポリシーがあります。

意見を出すのは、たとえばボタンのレスポンスが少し悪いですねとか、もうちょっとヒントを与えた方がいいとか、UIの配置はここじゃないと思う…というようなポイントです。細かいところですと「セーブデータを消す」場面では、確認ダイアログのYES/NOはかならずNOに初期状態を置きましょう、ですとか。

逆にゲームのストーリーに関しては、千差万別で10人見れば10人答えがあるものですよね。そういう作家性の部分に、私個人が否定してしまうのは危険だと思ってるんです。お笑いと一緒で、作家性に手を入れたら面白くなくなっちゃうかもしれませんから。

とても頼もしいです。黄さんなら今までの80タイトルのプロダクト側ノウハウがあるわけですからね。

ユーザーさんから寄せられた意見の蓄積もありますので、「過去のタイトルではこう言われたことがあります」などのノウハウも、なるべくシェアするようにしています。

しかしあくまで「一人のプレイヤー」としての意見です。プロダクト性の部分って論理的に話せるし、答えが比較的はっきりしてることが多いと思っているので自信をもって意見ができるんですよね。空気が悪くなろうがズバズバ言います。別に喧嘩しようとか気分悪くさせようと思って言っているのではなく、ユーザーさんはきっとこっちが良いと考えるはずだと。

プロモーションはどのようなことを行っていますか?

基本的なプロモーション活動として、公式ツイッターで情報を発信し、YouTubeでPVを出して、ウェブページへの掲載などを行います。もちろん、ニュースリリースをウェブメディアさんに配信することも行っています。プロモーションの一番の見せ場は東京ゲームショウです。

今年のブースは大きかったですね。ブースに立ち寄ったらギュウギュウにタイトルが並んでいて、ゲーセンのようでした。

沢山のタイトルがタイミングよく揃いました。頑張って出展規模を大きくし、今年の展示は32台あったんですが、大変だったので来年は戻そうかなと(笑)。東京ゲームショウは私がちびっ子の時から憧れの舞台でしたし、いまはそれに出展できる立場になりましたから、出さない手はない。採算度外視で毎年出展しています。TGS出展はロマンです!

海外方面のマーケティング支援はやっていますか?

弊社では海外メディアと付き合いがありまして、海外に在住しているパートタイムスタッフがおります。日本と違って海外のゲームプレイヤーはメディアのレビューを重視しますので、タイトル配信前にメディアへコピーを渡して、発売前にレビューしてもらったりしています。

Unityなどのゲームエンジンがメジャーになってきて、何か最近変わってきたと感じられることありますか?ゲームのタイトルの数や、質などについては。

Nintendo Switchへこれだけたくさんのゲームが短期間でリリースできているもの、ゲームエンジンがあるからこそですね。ゲームエンジンも私たちパブリッシャーと同じで、作家さんのクリエイティビティを助ける側だと思っています。たとえばクリエイティブな人にファンタジーや世界を考える以外のことをさせないための努力と言いますか。ゲームエンジンがコンシューマー機に対応し、開発者の負担が減ったことは、大きなプラスになったと思います。

安易なセール連発が招く “最悪の事態” とは

弊社の特徴として、「安易なセールはしない」というのは意識しております。最初から⾃信のある値段でつけているので、価格はなるべく動かさないようにしています。
リリースされて間もないタイトルがいきなり半額︕という最近の⽂化には絶対反対の姿勢です。Steamとかは「ゲームを買うゲーム」になってしまい、セールしないと売れない世界になってしまったイメージがあります。

セールがあまりにも多過ぎますよね。毎月なにかやっている感覚です。

今までの弊社セールを見て頂けると分かると思うのですが、安易なセールは本当にしていないです。たとえばプラットフォーマーさんが主導するセールなど、意義の大きいものに少しだけ参加しています。

もちろんセールすることが最良の選択肢ならやります。たとえば「年末セール」は3DSで行ったところ大きな効果があったので、今年も行います(*本記事公開時点では終了しております)。

しかし、そのような意図が無いセールはエナジードリンクだと思っていまして、「元気の前借り」なんです。半額で2倍売れても元の金額と同じですし、一番応援してくれている「リリース日に買ってくれた人」が損してしまう。セールのとき買えなかった!と考える人も、同様に損した気持ちにさせてしまいます。

今はセールの履歴を記録しているサイトもありますから、「このゲームは過去にセールやったことあるのか、じゃあ待とう」というセール待ちが発生してしまう。もちろん、裏にいろいろな事情があってセールをやらざるを得ないという状況もあると思いますが、あまり誰も得しない話なんじゃないかなと思います。
ゲームのパブリッシングは作者さんの⼦どもを預かってるようなものですから、作者さんからの要望がある場合は別として、むやみな安売りはしないようにしています。

今後の目標は “直接話せる社長・黄政凱” のキャラ確立?

今後の御社の展開についてお聞かせください。

弊社は老舗のゲームメーカーさんと比べると歴史も浅く、人数も多くはありません。しかし、だからこそ出せるスピード感があります。今年は結果的に27本リリースしました。

来年は例年通り沢山のタイトルを出していきたいと思っていますが、同時に「フライハイワークス」という名前をもっと売っていきたいと考えています。そのために私自身、「黄政凱」というキャラクターを売っていきたいなと。「直接話せる社長」である私…「会いにいけるアイドル」じゃないですけど(笑)。YouTube番組などは宣伝ですからノーギャラで出ます!と皆に言っています。将来的にはテレビに出られるようになりたいですね。
そうやってブランドとして知名度を上げていきたい理由は、ひとえにライトユーザーからの認知向上です。

ヘビーユーザー間であれば、インディーゲームのホットな話題がすぐ共有されますが、圧倒的に数が多いライトユーザーはそういうことを知らない。極端な話、ライトユーザーは世の中全てのゲームは任天堂が販売しているとすら思っています。

ですので、ライトユーザーの中でも、「ここがリリースするゲームだったら大丈夫!」という立ち位置になれたら嬉しいですね。

Twitterでもフライハイワークスさんのブランド買いファンがいて、「さすが安定の面白さ!」と発信しています。

とても嬉しいですね。最近になって「フライハイワークス」の名前を憶えてくれるユーザーさんが現れてきました。そうした知名度の部分は、インディーゲームクリエイターの個別の活動では難しい部分ですので、弊社の存在意義だと思っています。
基本的には面白いゲームをいっぱい揃えることが最大の宣伝効果だと思っていますので、これからも沢山タイトルを出していきたいですね。

Made with Unity - 2018年1月22日