『Unity1週間ゲームジャム』おススメ作品ピックアップ

『Unity1週間ゲームジャム』、ひときわ輝くセンスを感じるおススメ作品たち!

世界各国で行われる一大ムーブメント、ゲームジャム。指定された期間でいちからゲームを制作し発表しあうゲームクリエイターのお祭りである。もちろん日本にもその波は来ており、全国で様々なゲームジャムが行われている。

そんな国内ゲームジャムイベントの中でも注目度の高いイベントが『Unity1週間ゲームジャム』だ。2017年4月から定期的に開催されており、Unityを用いて作られた作品ならばだれでも参加できる。Webブラウザ上で気軽に完成品を遊ぶことができるイベントということで毎回多くの開発者が作品を公開し盛り上がりを見せる。もはや定番とも言えるUnityのお祭りだろう。(主催者のnaichiさんに聞く開催のきっかけはこちらの記事にて)

さて、そんなUnity1週間ゲームジャムの第12回(テーマ「あつめる」)が2019年7月1日から2019年7月14日に開催された。回を増すごとにより注目が高まっている同イベントだが、今回は最終的に過去最高の356作品(2019年7月15日現在)が公開されその盛況ぶりを感じさせる結果となった。

ちなみに1週間ゲームジャムなのに2週間の期間があるのは、最初の1週間はゲームを作り公開し、次の1週間で参加者や一般の方がゲームを評価するというスケジュールで行われているからだ。ここで評価の高かった作品はさまざまな項目でTOP作品として表彰され、イベントを締めくくる。

TOP作品は『Unity1週間ゲームジャム』サイト上にて発表

だが、これだけ多くの作品が公開されるイベントである。評価期間中に注目を集められなかったが、ひときわ輝くセンスを感じさせる作品はたくさんある。この記事ではインディゲームライターであるワタシ、洋ナシが「これは!」という作品をピックアップし紹介していこう。

シロニルニル『タマイレラレ』

玉入れという題材はテーマである「あつめる」から連想しやすいものだろう。そこを玉を入れる側ではなく玉を入れられる側を操作するアイデアが光るのがシロニルニルさんが開発した『タマイレラレ』だ。

プレーヤーは玉入れのカゴを動かし、飛んでくる玉を上手く自分に入れていく。白が1点、黄色が3点の玉を制限時間中にいくつ集められるかというスコアアタックゲームだ。プレーヤーであるカゴや玉は物理演算で処理されており、焦ってカゴを動かすとせっかく集めた玉が吹き飛んでしまう。慎重に動かさなければプレーヤーの努力は水の泡となる。

だが、本作は慎重に動かしているだけではスコアアップを狙えない。玉はたわら型をしており、ランダムな回転がかかっている。つまり、ぶつかり方によっては玉はあらぬ方向へと武器が飛んでしまうのだ。カゴへとうまく軟着陸させるテクニックが必要となる。

そしてさらに、玉と一緒に爆弾も飛んでくる。誰だよ投げたの。運動会は戦争じゃないんだぞ?爆弾は触れるだけで爆発し、空中を飛ぶ玉をあらぬ方向に吹き飛ばし、せっかく集めたかごの中身もからっぽにしてしまう。非常に厄介だ。ときには大胆に爆弾を回避する必要もあるだろう。

爆弾があまりにも強力すぎて、かなり難しい作品に仕上がっている。多くのプレーヤーが、集めた玉を爆散させ、泣きを見たことだろう。だが、こういう難しい作品はプレーヤーのチャレンジ精神を掻き立てる。グラフィックもシンプルを極めた洗練ぶりで、少し光ったカゴや文字、トレイルで美しく跳ぶ玉、そしてそれらをまとめあげるデザインが非常に秀逸だ。ぜひとも多くの方に遊んでもらいたい。

作品はこちらからプレイ!→タマイレラレ

セイゴロー@seigoro『ワイルドレスキュー ツイン』

1週間でゲームをいちから考え制作するというのは非常に困難な作業だ。だが、参加者は培ってきた技術や知見、以前に作った素材などをそれぞれ持っており、これを活用することで完成度を上げている。

セイゴロー@seigoroさんが開発した『ワイルドレスキューツイン』はまさしくそうした過去の財産が活きる作品のひとつだ。というのも、本作は前回の第11回Unity1週間ゲームジャムで発表された「ワイルドレスキュー」の続編にあたるものだからだ。毎回テーマが違うのに続編が展開できるというのはなかなか稀有な例であろう。

本作でプレーヤーは救助ヘリを操り、災害現場に残された要救助者を救出する任につく。そしてここからが重要だが、ツインの名にふさわしくプレーヤーは同時に2機の救助ヘリを操作しなければならない。プレーヤーはキーボードに右手と左手をおき、左右それぞれの手で救助ヘリ1機づつ操作する。2機の間にかかった救助網(網?)がかかっており、2機を上手く操作して要救助者の群れ(群れ?)に網をおろし、ずずいと掬い(救うでは?)上げるのだ。その様はさながら船びき網漁法である。人間はお魚じゃない。

ヘリには横への水平移動がなく前進後退と左右回転で進まねばならず、加えて上昇下降も操作する必要がある。どっちがどっちかわからくなり、混乱してしまうのは避けられないだろう。混乱に打ち勝ち、どれだけ要救助者を救うことができるか?プレーヤーの繊細かつ、正確なヘリ操作が試される。

チャレンジャブルなゲームに興味のある方はぜひチェックしてほしい作品だ。また、気になるのは次回のUnity1週間ゲームジャムである。まさか3作目が?いやいやさすがにテーマと合わないのでは?今後の動向にもチェックしたい。

作品はこちらからプレイ!→ワイルドレスキューツイン

SHIRASE『猫蟲毒~にゃんこどく~』

「あつめる」というテーマは非常にゲームらしいテーマであるが、連想される題材はかぶりやすいモノなのかもしれない。タピオカ、金、掃除、単位などなどいくつかの題材に人気が集まっていたように感じる。

そうした中でSHIRASEさんが開発した『猫蟲毒~にゃんこどく~』が「あつめる」から着想した題材は蟲毒だ。めちゃくちゃにダークでグロテスクな題材にびっくりしてしまう。たしかに言われてみると蟲毒も「あつめる」だが、それを思いつけるセンスがすごい。グロテスクでダークな題材だが、そこをグラフィックとストーリーでかわいく見せているのもギャップを狙っていていい。

ゲーム内容はスマートフォン向けゲームで見られる物理演算で積みあがるピースを選んで消していくパズルの系統と言える。瓶へとどんどこ詰め込まるネコの死霊をタッチすると、周りにいる自分と同じ柄のネコを捕食し巨大化して毒ポイントが貯まる(こわい)。一定以上巨大化するとネコが爆発し毒ポイントが一気に貯まるので、ばしばしネコを捕食させよう(こわい)。毒ポイントを貯めると制限時間も増えるので、ネコの動きを読みうまく巨大化させていくテクニックが必要だ。

ネコは思い通り転がってくれず、なかなか爆発できるほどに巨大化してくれない。サクッと遊べるゲームながら、なかなか奥深いゲームである。案外このままスマホ向けにリリースすれば、バカ売れしてしまうのでは?そんなポテンシャルを感じさせる。ネコ好きは要チェックだ。

作品はこちらからプレイ!→猫蟲毒~にゃんこどく~

『「あ」つめるゲーム』

Unity1週間ゲームジャムは初心者大歓迎のお祭りだ。ガチで勝利をもぎ取りにいくコンペのような、キリキリとした堅苦しさはない。ならば当然おふざけやジョークもまた許容される。

さて、そうしたおふざけでも定番なのがやはりテーマの曲解であろう。今回もテーマを曲解する作品たちがいくつか公開されている。そう「あ」を「つめる」作品群だ。私が遊んだかぎりでは4つもあった。おまえら……。私はそういうくだらないの、好きだぜ……。

その中でもひと際くだらなく、私の笑いを誘ったのが、はやかわこうじさんが開発した『「あ」つめるゲーム』だ。本作ははらい部分をうにょうにょさせ疾走してくる「あ」めがけて親指を突きおろし、穴に詰め込めるかトライする、というゲームだ。「あ」はけっこうすばしっこいため逃げられたり、焦って早く押してしまい手と地面で「あ」を挟んでしまって逆にすごい状態になったり、成功までは何度かトライすることになるだろう。失敗してもすぐにリプレイできるので、ミニゲームとして遊びやすく作られている。

いくつかのステージといったバリエーションはなく、非常に短いゲームではある。が、ジョークなんだから短くていいだろう!?という潔さを感じさせる。あと、クリアすると出てきてお礼を言ってくれるお姉ちゃんは誰なんだ?わからない。勢いで突っ走る爽快な作品だ。

お祭りなんだからノリと勢いで突き進むゲームがあってもいい。今回のイベントはもう終了してしまったが、お祭りの雰囲気を感じられる本作に触れ、その熱を感じてほしい。

作品はこちらからプレイ!→「あ」つめるゲーム

がむしゃら『マグネパズル』

1週間という短い時間で作るゲームは、やはりどうあがいても短いゲームになってしまう。まあ、それは仕方のないことだろう。だがこの、がむしゃらさんが開発した『マグネパズル』はすごい。なんと16ステージも実装しており、おそらく1時間くらいは遊べてしまう。ゲームジャムらしからぬボリュームなのだ。

プレーヤーは盤面に配置された磁石を回転させ、磁力を放って周りの磁石をくっつけ、あるいは反発させていく。プレーヤーが操作できる色の濃い磁石は、操作できない色の薄い磁石に接触すると操作可能状態を伝染させる。操作できる磁石を1つ、また1つと増やし、盤面の全ての磁石を操作可能にすればステージクリアとなる。

やみくもに磁石をくっつけるだけでは磁石を画面外へと吹き飛ばしてしまったり、回収できない磁石を作ってしまったりとクリアはできない。わかりやすく奥深いメカニズムもさることながら、それを活かすステージを短い期間でこれだけ用意できるなんて。すばらしいの一言である。

おそらく、この単色のドットで統一されたグラフィックに秘密があるのだろう。やろうと思えば磁石に影をつけるなど凝れたところを必要以上にこだわらず、きれいにまとめたことでステージ考案の時間を作ったのではないだろうか。おどろきの采配であろう。またこのグラフィックを活かす音楽と効果音を自作されているところも見逃せない。

非常に完成度の高い作品で、このまま販売されていても遜色ないクオリティだろう。作者のセンスと才能をビンビンに感じる。パズルゲームに目がない方はぜひともチェックしてほしい。

作品はこちらからプレイ!→マグネパズル

さて、5作品続けて紹介してきたが、気になる作品はあっただろうか。気になった作品はぜひとも遊んでほしい。もちろんここで紹介しきれていないきらりと光る作品はたくさんある。紙面の都合上紹介できず申し訳ない思いだ。今回のUnity一週間ゲームジャムは終わったが、作品は残る。ぜひともみなさんもこれら作品に触れてもらい、よかった!と思ったらぜひとも拡散してもらいたい。それが作者を助け、このイベントをより盛り上げることになるのだから。

「Unity1Week」とは?

定期的に開かれる、一週間でゲームを作るイベントです。
月曜00時にお題が発表され、日曜20時までにお題に沿ったゲームを作ります。
期間中に投稿されたゲームはunityroomに投稿され、日曜20時に一斉公開されます。
ハッシュタグは #unity1week です。
みんなでゲーム作りを楽しみましょう!

公式サイト

洋ナシ - 2019年7月18日