2017.04.18
1930年代的アートスタイルの実現
Chad Moldenhauer
Cuphead
StudioMDHR

インタビュー・翻訳: 矢澤 竜太

プロフィール

Chad Moldenhauer

アートディレクター、StudioMDHR共同設立者。ユニークなアートスタイルが特徴的な同スタジオ初のタイトル『Cuphead』のクリエイティブ部分のリードとして活躍。元々はグラフィックデザインを得意とし、昔の激ムズゲームをこよなく愛し、2Dアニメーションに情熱を燃やす。カナダ・オンタリオ州在住。

1930年代的アートスタイルの実現

最近、どんなゲームをプレイしてますか?

Chad

最近はあまりゲームを遊べていないのですが、『Pit People』はずいぶん長いこと遊んでいます。すごくクールなゲームですよ。それから、Jaredと僕の兄弟は『Ultra Street Fighter IV 』を遊んでます。時間がなくてまだVはガッツリ遊べてないですが……。それから、折に触れて『Jamestown 』は遊んでますね。レトロゲームだと、先日スーパーファミコンの『Castlevania IV』(日本では『悪魔城ドラキュラ』)をクリアしました。何年かに一回、クリアするまで遊んじゃうんですよね。最高のBGMを聞きながらプレイしていくのが凄く好きなんです。あとはNES版『Mr. Gimmick』(日本では『Gimmick』)が上手くなりたくて、ずっと遊び続けてますね。

研究のためにゲームをプレイすることもありますか?

Chad

もちろん! 要素を参考にしたり、『Cuphead』のアイデアをまとめ上げるうえで役立ちそうなゲームは無限にありますから。『スーパーマリオワールド』や『ヨッシーアイランド』、『ザ・スーパー忍II』、それからもちろん『ガンスターヒーローズ』、『魂斗羅スピリッツ』、『魂斗羅ザ・ハードコア』、『ロックマン』シリーズなんかも顕著な例ですね。

ゲーム開発を仕事にしようと思ったきっかけは?

Chad

ゲームを作りたいという気持ちはずっとあったんですけど、始めた時はこれを仕事にするなんてことを考えてもいませんでした。「ゲームは副業で作り続けて、日中は普通の仕事をすればいいや」って思ってたんです。でもE3で見に来てくれた人の反応を見て、これは全力で打ち込むべきだって判断したんです。だから「ゲーム開発会社を作るぞ!」っていう気持ちで活動してきたというよりは、自然にそうなったって感じでした。

Cupheadの開発で一番難しかった点と、その克服方法は?

Chad

アートとゲームデザインが圧倒的に一番難しかったですね。予算があれば大量に人を雇ってスピードアップできますけど、予算的に無理だったので完成期日を設定するのは諦めていました。アニメーションとかゲームデザインの特定の部分を完成させる時には、想定よりもずっと長い時間がかかりました。これはもう仕方ないことだろうと腹をくくっています。そう思わっていなければ、『Cuphead』は今の姿にはなってないだろうし、クオリティも下がってたと思います。チームのみんなは自分の仕事を愛してくれてるので、モチベーションが問題になることはまったくありませんでした。やってる仕事が好きで、作ってるものに手応えがあると、なんというか「簡単」に感じられるんですよね。もちろんしんどい部分もありますが、やることすべてに情熱を感じている時はそれが苦にはならないですね。

『Cuphead』開発チームメンバー

開発中一番楽しかったことは?

Chad

完成したステージを眺めるのは、毎回最高に楽しいですね! 全部のアートアセットが組み込まれて、最終調整を終えててゲームプレイを磨き切った後、リラックスしてそれを眺めるのは最高の気分です。アニメーションにことさら力を入れたゲームを作っている時は、あらゆるディテールに目を光らせ続けるようになります。だからなんとなくゲームをプレイする機会なんて、この時以外にはないんですよ。

本作でお気に入りの部分は?

Chad

この点については当然ながら個人的なチョイスになってしまいますけど……もちろん1930年代的アートスタイルです。これを「ちゃんと再現する」ために僕たちは相当の労力を注ぎ込んでいますからね。キャラクターデザインからHUD、大量の手描き文字を含むメニュー部分、BGM、効果音、全てにこだわってます。何度となく微調整を重ね、あらゆるディテールがビジョンを反映するようにしました。「あの時代」のカートゥーンの正統性を再現しようとしてるんです。 僕らのアーティストはスター揃いですけど、それでも実現するのは相当に骨の折れる仕事でしたよ。

開発中、一番難しかった決断は?

Chad

一番難しかった決断は、開発中にスコープを広げる(仕様を追加する)という決断にGOサインを出すことでした。おかげで当初夢想していたゲームアイデアを実現することができたんですが、その代償は大量の追加作業とスケジュールの更なる延期でした。この決断が正しかったことは確信しています。でも間違いなく一番難しかった決断でしたね。

ゲーム以外で、ゲーム開発のインスピレーションになっていることは?

Chad

色々ありますよ!映画、音楽、各種芸術作品、Webデザイン、自動車デザイン、そういったものは全部僕のインスピレーションになっています。何か違う視野を与えてくれるもの、リラックスさせてくれるもの、没頭させてくれるもの……全部が糧になってるんです。それから、インスピレーションが降りてくるのってランニング中とシャワーを浴びてる時が多いんですよね。ランニング中は一人きりで考えることに集中できるからでしょうかね。シャワーは僕にとって瞑想的な側面があるんだと思います。時間は短いですけどね。

新プロジェクトの構想はありますか?

Chad

今後のプロジェクトについては、既にいくつかアイデアがあるんです。やりたい事は山ほどあるんですけど、今のところはまだ抽象的なレベルですね。『Cuphead』の開発が落ち着くまでは他に注力する余裕もないですし。ただ将来的なことで言えば、今後も色んなアニメーションスタイルの模索は絶対に続けていきますよ。それは間違いありません。

プロフィール

矢澤 竜太

英日翻訳者。現在の主戦場はゲーム開発関連とesports関連翻訳。過去にはゲーム開発会社勤務や架け橋ゲームズ立ち上げなどを行ってきた。現在はフリーランス。イラスト:Mitsu Hiraiwa

Cuphead

StudioMDHR
  • アクション
  • シューティング

プラットフォーム

  • Windows
  • Xbox One

言語

  • 英語

GAME ゲーム

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