2017.08.25
一筋の光
Evan Shamoon
Implosion
Rayark

家庭用ゲーム機(とアーケード)の体験をモバイルで!台湾発インディーRayark

台湾・台北ベースのインディーゲームディベロッパー、Rayark。だがそういう会社は、実は台湾にはあまり多くない。「台湾の大手ゲーム会社のほとんどはパブリッシャーなんですよ。そして台湾の人気作のほとんどは中国、日本、米国から輸入されているのが現状です」スタジオ共同設立者のMing-Yang Yuは語る。「台湾では、オリジナルタイトルの開発というのは小規模な会社やインディーディベロッパーがやるものとみなされているんです。ディスカッション用のFacebookグループもいくつかはありますが、しっかりしたコミュニティというのはまだできてません。まだ情報は基本的に英語フォーラムから仕入れている状態ですね」

しかしRayarkはそんな環境に負けることなく目覚ましい成功を遂げた。現在のところ最大のヒット作である『Cytus』は2012年にiOS/Android向けにリリースされると高い評価を受け、アジアと欧米の市場でビッグヒットとなった。翌年にはPlayStation VitaとPlayStation Mobile向けの移植となる『Cytus: Lambda』がリリースされ、さらに2015年2月のJAEPOでは、2015年のリリースを目標としたCapcomとのコラボレーション作『Cytus: Omega』が発表されている。

しかしそんなRayarkも会社設立直後はたった4人の小さなチームだった(執筆時現在はフルタイム社員12名)。しかも起業前の段階ではアーケードゲーム開発経験者6人のチームだったのだという。「始まりは2008年、僕とクラスメート2人で立ち上げたHYPAAというスタジオがきっかけでした」とYuは振り返る。HYPAA時代には『Theia』と『Mozarc』という2本のアーケード音楽ゲームを制作している。特に『Theia』は22インチタッチスクリーンの筐体を使用した大掛かりなものだった。「あの2本を作ったことで、いい音楽ゲームを作るために必要なことをたくさん学べました。ゲームプレイも『Cytus』っぽかったのですが、グラフィックはあまり良くなかったですね」そう語るYuはまた、PCや家庭用ゲーム機と比較してプレイセッションが短い(およそ5~10分)というモバイルとアーケードゲームの共通点についても触れた。「10分以内でユーザーを楽しませるというのは、アーケードとモバイルに共通する目標ですよね」

2015年4月にリリースされたRayarkの最新作『Implosion – Never Lose Hope』は、同スタジオにとって新境地だった。「全員筋金入りのアクションゲーム好きなんですよ。『デビルメイクライ』とか『ゴッド・オブ・ウォー』とか遊び倒していて」Yuは語る。実はチームは当初、家庭用ゲーム機向けにハードコアアクションゲームを作ろうとしていたのだ。ファンタジーが牛耳るこのジャンルにSFテーマを組み込むという目標を掲げて。しかし、その計画はある瞬間に大きく方向転換する。「開発開始から1年半経過したところで、モバイル端末の性能が凄まじい勢いで進化していることを認識して、優先プラットフォームを家庭用ゲーム機からモバイルに変更したんです」

だが、家庭用ゲーム機で『デビルメイクライ』を遊んだ人間ならば誰もが想像できる通り、この決断はかなりの冒険だった。「方向キー操作のモバイルアクションゲームといえば、ほぼイコールでユーザーから不満噴出じゃないですか。画面が小さすぎる、ボタンが多すぎる、と言われ続けてる」これを解決するため、Rayarkは限界までシンプルさを追求した操作システムを作り上げた。プレイヤーが押すのはボタン1つのみ。しかし入力のテンポを変えることでさまざまなコンボを打てるというものだ。「モバイルデバイス上で遊びやすく、プレイヤースキルの重要性も保てる、いい入力システムを生み出せたと思います」とYuは振り返る。本作はモバイル機器向けコントローラーにも対応しているが、実際の使用率はおよそ2~3%。核となるゲーム体験はコントローラーなしを想定して構築されている。

そうしてリリースされた『Implosion』は大ヒットとなった。先述の入力システムも小さな画面上で濃厚アクションを実現する上で一役買っている。「『Implosion』がiPhone 4Sでも滑らかに動いたのは、頑張ったかいがあったなと思いました。だって4年前の端末ですよ。たぶん、家庭用ゲーム機レベルのゲーム体験をモバイルに持ってきたというのがポイントだったんだと思います。それには優れたグラフィックと操作性が欠かせませんからね。最適化は一番苦労したところでしたが、うまくやれたと思います」

一方で、YuはこのタイトルもまだRayarkが描く壮大な絵のピースの一つだと語る。「うちのゲームはどれも、世界観とストーリーがキモなんです。メンバーは全員ストーリーを紡ぐこと、そして新しい世界のコンセプトをデザインすることが大好きなので」この理念の先に、同スタジオは今後同IPを用いたアニメーション、コミック、ノベルの展開を考えているそうだ。「いいストーリーはいいIPの柱ですからね。これからもいいストーリーのゲームを作り続けますよ」

「Rayarkerは全員、同じDNAを持ってるんです。ゲーム、音楽、アートを愛していて、盲目的にメインストリームを追わない、という遺伝子をね。僕らがゲームを作るときには、全員が内なる”コドモゴコロ”を解き放っています。だからこそ、『Cytus』、『Mandora』、『DEEMO』、『Implosion 』シリーズはユニークな世界観を持ち得たんだと思います」チームメンバーの日常は、オフィスビルのロビーにあるバーに立ち寄って息抜きをする他、定期的にボードゲームやダーツ、パックマン、ボクシングなどを楽しんで新しいひらめきの糧としているという。「うちの信条は、”インスピレーションは楽しい日常から生まれる”ですから」とはYuの言葉だ。

もちろん遊んでいるばかりではない。「Rayarkのモットーは”後悔を残さない”なので。この点は全員が徹底しています。だからこそ、流行に流されないんです。メインストリームがどんな顔をしていようと、僕らは自分たちをハッピーにすることに注力し続ける」そう語るYuは、流行とは変わり続けるものであり、それに追いつこうとするのは非現実的な行為だと考えている。「それよりも自分のペースで何か面白いことをやりたいんです。二匹目のドジョウを狙いに行くんじゃなくて。そもそも開発って時間もエネルギーも大量に費やす行為ですから、それなら全力を尽くしたいじゃないですか。この信念を守っている限り、僕らはこれからも末永く遊ばれるいいゲームを作っていけると信じてます」

Yuは『Implosion』がまさにその好例だと語る。当初はXbox 360を優先プラットフォームとして選び、同社には家庭用ゲーム機でハイエンドタイトルを作る力があることを証明しようとしていた。結果このプロジェクトには3年半をかけているが、先述の通り途中で立ち止まった瞬間もあった。「開発の途中で、あるジレンマに襲われたんです。このまま開発を進めて家庭用ゲーム機でリリースしたら、山ほどあるAAAに埋もれてしまうのではないか? と。一方でモバイル端末の性能は著しい進化を見せていた。そこで、もし今モバイルに方向転換すれば、『Implosion』は誰もが求めていた家庭用ゲーム機に匹敵する品質のAAAモバイルゲームになれるんじゃないかと思ったんです」

結局Rayarkは一旦プロジェクトを止め、 ゲームを改めてモバイル向けに再設計している。その甲斐はあったというべきだろう。『Implosion』はApp StoreとGoogle Playの両方でスタッフのオススメに選ばれ、全世界・全プラットフォームの総ダウンロード数は500万回を超える。「僕らにとって『Implosion』はただのゲームじゃなく、Rayarkの歴史における記念碑的存在なんです。僕らの幼年期が終わり、大人になった瞬間というか」

多くのプレイヤー(特に「熱心な」プレイヤーほど)が基本無料モデルを好まないと考えるYuは、その点でもこだわり抜いた。「モバイル向けの完全新作・高品質・買い切り型のハック&スラッシュゲームは本当に長い間出てなかったでしょう。それこそ、僕らが届けたいものだったんです。僕らはこれまでの経験から、クオリティこそがすべてだと学びました。2012年に『Cytus』を出した時にはマーケティングやプロモの予算なんかゼロだった。Rayarkを好いてくれるプレイヤーは、僕らのゲームのグラフィックやゲームプレイ、音楽のクオリティを気に入ってくれた人たちだったんです。これは本当に強く意識してます。絶対に未完成のゲームは出さないぞと。だからこそ、『Implosion』は制作に3年半かかったわけですが」

Yu以外の共同設立者Alvin Chung、Shan-Yung Yang、Holymarsは国立台湾大学で電子工学、コンピューターサイエンス、情報工学などを専攻していた。うち一人はGoogle社でのインターン経験があり、同社に入社することも可能だったが仲間とアーケードゲームを作る道を選んだという。一方のYuの経歴は面白く、彼が国立台湾大学在学中に専攻していたのは森林学と資源保護学だった。しかし途中で自らが持つゲーム制作への情熱を自覚、大学院では計算機科学とコンピューターグラフィクスを修めている。

同社は今後も『Implosion』向けにコンテンツを作り続けていくつもりだという。新モード、キャラクター、ステージなどが無料アップグレードで提供されるとのことだ。「だって『Implosion』は9.99ドルのゲームですからね、新規ユーザーをたくさん獲得するつもりなら、広告を打つかストアで取り上げてもらうしかないでしょう。だから長期的に見れば、『Implosion』を”定番”に数えられるタイトルにするのが唯一の売り上げ向上策なんです」

同社の今後についてはどんな計画があるのだろう? Yuに聞く限り、”コドモゴコロ”は止まらないようだ。「長期的な目標としては、いつか家庭用ゲーム機向けにAAAを作りたいですね。お金のためじゃなく、みんなの小さな頃からの夢をかなえるために」

Implosion

Rayark
  • アクション

プラットフォーム

  • iOS
  • Android
  • Nintendo Switch

言語

  • 日本語
  • 英語
  • 中国語
  • 韓国語
  • appstore
  • googleplay
  • playism

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