ゲームにおけるシナリオ

僕は北海道のとあるアパートで一人でゲームを作っています。BGMを除くすべてを手がけており、BGMは友人のはるまきごはんにお願いしています。
去年の夏頃、twitterにアップロードしたプロトタイプの動画に予想を上回る反応をいただけたので、しっかりと作り込んで有料で販売することを決意しました。
今回はインダークのシナリオの仕組みについて苦労したことを語りたいと思います。

繰り返し遊べるアクションゲームの物語のつたえかた

今作は動画公開後には買い切りのゲームとして制作することを決定していたので、ゲームとその物語に明確なエンディングを設けました。
しかし、インダークは繰り返し遊べるランダム生成型のステージをクリアしていくアクションゲームです。ゲーム中に物語を挟み込んでいくやり方は、ゲームのテンポを損なう上に繰り返し遊ぶことに適していませんでした。

よってゲーム外でシナリオを提示する方法として、記憶を復元して思い出していく手法を思いつきました。ゲーム外でシナリオが展開されるならば、テンポロスにはなりませんし、メインのゲームをひたすら楽しむこともできます。
またこの伝え方は、プレイ体験をより濃いものに仕上げる可能性を秘めていました。

インダークにおいて、ゲーム開始時点でプレイヤーに伝えた情報は「海の底を目指していること」「魂がむき出しになっていること」「記憶を思い出さなければならないこと」しかありません。未知なことだらけです。
ゲーム開始時にこれ以外の情報を与えていないのは、主人公が記憶を濁らせているからなのですが、この理由以外に狙いがあります。ゲーム内の主人公とプレイヤーの状況が一致していると、主人公へ感情移入しやすくなると考えたからです。

プレイヤーは主人公の記憶を全く所持していません。この状況は、訳も分からなくなって海に漂っている主人公と同じなのです。
プレイヤーが記憶を所持していないのは当たり前といえば当たり前なのですが、この当たり前の状況に必然性を付与することで、プレイヤーが一人称視点で物語を考え、体験することを促進しています。主人公が記憶を復元するのに合わせ、プレイヤー自身も同様に、記憶を取り戻していくような体験ができるのではないでしょうか。

一枚の切り抜き

ゲーム内で集めたカルマを使用して、記憶を復元できます。
記憶を一つ復元するとステータスが1上がるだけでなく、ワンシーンの切り抜きが一枚もらえます。文字もなく、映像でもありません。独立したシーンの記憶だったり、繋がっている記憶もあります。登場する記憶は主人公が海に沈み始める以前のものになります。主人公の過去を知ることで、物語への捉え方が少しずつ変わっていくのも、このゲームを楽しむポイントの一つになっています。

たくさんの記憶を見たプレイヤーは、それぞれが異なった感情を抱くと思います。記憶を思い出せない状態で、急にたくさんの切り抜きを見せられても、何もわからないし、分かりたくもないと思う人や、何も思い出せはしないけど、かつての自分がこういう思い出を持っていて、今の自分にできることがあるなら、頑張ってみようと思う人もいるかもしれません。

物語の本筋はある程度レールとして引かれているけど、そこからいくら脱線しようが、どんな物語ととらえるかは、プレイヤーに全て任せてあります。したがって、物語をプレイヤーそれぞれが考え、納得する仕組みになっています。それぞれのプレイヤーが抱いている感情を物語の答えとしているので、プレイヤーそれぞれに物語が生まれます。文字も音もない切り抜きだからこそ、物語に多様性が生まれるのではないでしょうか。

まとめ

インダークは始まりから終わりまでプレイする内容は一貫して「海底を目指して進むこと」なので、ゲームのシナリオを表現するにはかなり頭を抱えましたが、しっかりゲームの要素のひとつに仕上がっていると思います。興味を持っていただけたならぜひ遊んでもらえると嬉しいです。

今回Made with Unity掲載を記念してコンセプトアートを新たに描きました。

こんな感じのゲームになっていますのでインダークをどうかよろしくお願いします。