2017.09.12
100のアイディアの果てに生まれたVRボードゲーム
濱田 隆史、小笠原 雄太
モニャイの仮面
ギフトテンインダストリ

世界初のVRボードゲームである『アニュビスの仮面』、スーパーミステリー・マガジン「ムー」が世界観のリサーチを担当した『モニャイの仮面』など、話題に事欠かない独創的なゲームを開発するギフトテンインダストリ。

今回は開発者である濱田隆史氏と、音楽全般を担当した小笠原雄太氏に、現在に至るまでの経緯やムーとのコラボレーションの舞台裏などについて伺った。

インタビュー: 池和田 有輔

プロフィール

濱田 隆史

ゲームデザイナー。デジタルゲームの開発やオリジナルボードゲーム・玩具の企画・製造など。1984年生まれ。埼玉県出身。武蔵野美術大卒。もともと陶芸をやっていたが任天堂ゲームセミナーからゲーム制作を開始。ハル研究所を経て、2015年ギフトテンインダストリを設立。

プロフィール

小笠原 雄太

サウンドクリエイター。1987年生まれ。北海道出身。HAL東京卒。在学中からフリーランスで活動。 ゲームのBGMや効果音、アイドルへの楽曲提供や編曲、イベント運営などを経て、2017年8月よりハル研究所に勤務中。

100のアイディアが生まれるまで

池和田

ギフトテンインダストリは濱田さん一人で立ち上げられたんですか?

濱田

スタートした時は僕を含めて3人だったんです。一時期4人になりましたが、今は2人です。プロジェクトごとに求められる能力が全然違かったりするので、今は社員自体は減らしてその都度外部の方とつながるのがいいかなと思ってますね。

池和田

まさに音楽を担当された小笠原さんは「外部の方」ですよね。

小笠原

はい、効果音とか全般を担当しました。今年の3月まで専門学校にいたんですけど、今は濱田さんのご紹介で会社(ハル研)で働いています。『モニャイの仮面』は入る前にやっていた作品です。

池和田

事務所のある西国分寺は濱田さんにとって縁のある場所なんですか?

濱田

僕はムサビ(武蔵野美術大学)出身なんですけど、この辺りムサビエリアなんですよ。さっき社員4人って言いましたけど全員ムサビ出身で。学生の時から一緒にやってます。メンバー全員が美大ってヤバい(笑)。

池和田

文化圏が同じだとコミュニケーションも取りやすいし、元々知り合いだったら言いたいことも言えますよね。

濱田

そういう意味ではすごいやりやすいし、割と本音でガンガンやるような感じです。

池和田

ハル研を辞めてから立ち上げられたわけですよね?

濱田

そうですね。まず個人事業で初めて、そのあとに会社にしました。組織じゃないので一人で作んなきゃいけない、だからゲームジャムに出て鍛えたりしました。小笠原さんと会ったのもゲームジャムでしたね。

池和田

企画職は長いことやられてたんですか?

濱田

そうです。5年ぐらいですね。『星のカービィ』シリーズのマップを作ったりしました。

池和田

独立されたのは、やっぱり自分のゲームを作りたいみたいな?

濱田

僕は新しいものが作りたかったんです。どんな会社も最近新規タイトルって作りにくいじゃないですか。

池和田

どのような会社にせよVRボードゲームの企画を通すのはかなり難しいですよね。

濱田

まず通らないですよ。今は自分が諦めなければ一応モノは出るので、そういうのはすごくいいですよね。お金とかどんどん無くなっちゃったりするけど(笑)。会社にいるとそういう経験ってそもそもないじゃないですか。この製造方法をミスっちゃったからすげー金がなくなっちゃったとか。この書類を出し忘れたからすごい金がなくなったとか(笑)。でも、一回やればちょっと学ぶし、次はもっと賢い作り方になってる。その強力なフィードバックっていうのはやっぱり会社を出ないとなかなかないですよね。

池和田

元々「こういうものを作りたい」っていう何かがあり独立されたのでしょうか。あるいは「自由な環境を手にいれてから考えよう」って感じだったんですか?

濱田

その間くらいのところで。会社辞めるかって思ったのは、会社を辞める一年くらい前だったんです。辞めていきなり何も思いつかないと怖いので、毎日1案ずつ出すかみたいな感じで。一応100案あれば安心かなと思ったら100案以上出て、これは安心だなみたいな。辞めたタイミングでネタみたいなものに星とかのレートをつけて、それが高いやつからやっていこうと。

服のボタンを陶器でプロシージャルに作る

池和田

ギフトテンインダストリとしての最初の仕事について教えてください。

濱田

独立後、一番最初にやったのはボタン作りでした。僕もともとやってたのは陶芸なんですよ。陶芸窯も家にあったし。やめたら最初にやるのは陶芸かなっていうので、陶芸をしばらくやってた時期があります。作って路上で売ってて。キテましたよ(笑)。

池和田

ボタンってシャツとかの?

濱田

そうです。それを陶器で作って。自分でいうのもあれなんですが作り方が結構面白くて。まず、プロシージャルに3Dグラフィックを生成して、3Dプリンターで型を作るんですね。ふつうは手で彫ったりして型を作るんですけど、絶対手で彫れないやつ。で、それを女子に売るっていう(笑)。

池和田

あんまり男の人はボタンにこだわらないですからね。

濱田

僕もこだわりは持ってないですね(笑)。

池和田

別に路上で売らなくてもいろんな販売ルートがありそうですけど‥。

濱田

よくよく考えたらそうですね(笑)。でもひとまず路上でって。

池和田

そしてそのノウハウがボードゲームのコンポーネント作成に生きてると。

濱田

そうですね。『アニュビスの仮面』は全部国産で作ってるんですが、作り方はかなりアイデアがいるというか、特にこの中には立体のコマが入ってるんですね。それが、ボタンと同じ作り方なんです。

池和田

陶器なんですか?

濱田

樹脂粘土というものです。僕は以前『アラビアの壺』というゲームを作って、金型を作って大損してるんですね。二度と金型は作らないって心に刻んで(笑)。でも、立体ゴマを作りたい。どうしようってなった時に3Dプリンターで原型を作って、型に樹脂粘土を入れてパカって出して作る方法を思いつきました。

まわりの知り合いにお願いして、セットを渡して内職をしてもらったんです。合計でこれ2万個以上作ったと思う。まあ、ボタン作ったことはすごく役に立ちましたね。

月刊ムーとのコラボレーション

池和田

『モニャイの仮面』はムーさんとのコラボレーションですよね。

濱田

国分寺周辺にムーの記者さんが居て、中国の昔の怪しいゲームとかを一緒にやったりしていました。ムーさんはゲームマーケットに出て、すごいマニアックなネタが書いてある『オカルトかるた』っていうのを作ってたんです。そんなことをやってるならやってくれるかなって(笑)。

僕のゲームの作り方は、世界観とかを一回全部除いてから作るんですね。ゲームが固まったら、どの世界観にしようかなとたくさんネタ出しをして選んでいく。『モニャイの仮面』の世界観は、ムー編集部さんとの相談会で決まりました。幽霊船にしようとか色々あったんですけど、ムーさんは「いや、海底神殿だろう」と(笑)。

池和田

ゲーム内で粘土を使って人形を作るのも面白かったです。

濱田

粘土は、ムーを読んで思いついたんです。僕が見た宇宙人コーナーみたいなのがあり、「これがカマキリ星人だ!」って、すごい適当な絵で描かれていて、これ粘土で作ったら面白いんじゃないのと思って(笑)。

『モニャイの仮面』は基本は一人がVRを体験し、見た情報を他の人に伝えるっていうゲームなんですが、粘土で作るのだけは見た本人なんです。それがムーとすごい似てるなと思って。見ている人が「あれはタコだった」って話をしても実は全然違ったりして。3体しかいないはずなのに、なんか5体できちゃったり(笑)。

池和田

同じものを見ているのに、作るものが違うという。

濱田

みんな端折ってる部分が全然違くて。それこそまさに僕が見ていた宇宙人コーナーなんです。大人になってわかったけど、ムーは癒し系雑誌なんですよ。仕事って荷物が届かなかったりとか、契約書を調整したりとか、ややこしい話が多いわけですよ。辛いっていう時にこれを読むと、フリーメイソンには実は秘密があってとか、四国で新しい生き物が発見されたよとか、ああ癒されるなーと思って(笑)。

あと、蛇足的なところだと、このチップの中には絵が描かれているものがあるんです。こういうタコのやつとか、泡とか渦とか。すごい意味深ですよね。

池和田

そう、絶対に意味があるんだと思いました。

濱田

でも意味ないんですよね(笑)。入稿直前にムーさんの編集部に行って、なにか入れる絵とかありますか?って聞いてみたら、「そりゃタコの足とかクラーケンとか、無駄に泡が出ているのを入れたらいいんじゃないかな」って。ゲーム的に意味がないのにデカデカと出してしまったのでユーザーさんの誤解が多くて、第二段では全部取りました(笑)。

池和田

ダメじゃないですか(笑)。第二段の変更点はそれだけですか?

濱田

あとは木のコマがハマりにくいときがあったので、製造工程を改善したりとか。一応、製造の前に試作品が送られてくるんですけど、試作と本番では製造方法が違うんですよ。

池和田

試作の段階ではOKでも、実際作ってみたらこれじゃダメ、みたいな。

濱田

検品用のドキュメントを作って、これだけは検品してくださいよってやったりとかで、ある程度回避はできると思うんですけどね。

池和田

そういう時にムーを読んで癒されると。

濱田

そうそう、その通りです(笑)。

「世界初」があたりまえであるということ

池和田

前作にあたる『アニュビスの仮面』は、海外の会社さんに権利を譲渡した形になったそうですが、どういう経緯でそういうお話になったのですか?

濱田

ドイツのエッセンっていうボードゲームの大きい展示会があるんですけど、そこに日本人で集まって出展しようって企画があったんですね。それに2年連続で出しているんです。そこで引き合いがあって契約が決まったって感じです。

池和田

日本からもオインクゲームズさんが出たりしてますよね。

濱田

あそこはすごいですよね。他にあんまりいないんじゃないですかね。ゲームマーケットのブースも日に日にでかくなってるし、オインクゲームズさんみたいな成功はしたいです(笑)。

池和田

作品を作る上で「濱田さんらしさ」みたいなものってどういうことだと思いますか?

濱田

うーん、デジタルとアナログの組み合わせというのがありますが、僕は触覚系が得意なんじゃないかなって思ったりしますね。

池和田

なるほど。手触りがある、生々しさみたいなものがあるところですよね。

濱田

チップが組み合わさったり、粘土の形が人によって違ったりとか、そういうのが面白いなと思います。あえて立体駒を作ってるのも触覚へのこだわりかも知れない。

小笠原

あとは「世界初」にこだわる所とか?

濱田

「世界初」は、宣伝する上で重要なんですよね。目新しい部分がないとメディアにプレスリリースを送っても全然取り上げてくれないとかあるので、「世界初」は押さえておかないとヤバいという感覚があります。

小笠原

それが当たり前みたいになってますよね(笑)。

濱田

そうですね。普通にやってたらだいたい世界初になってるかな(笑)。

プロフィール

池和田 有輔

フリーランスとしてWEB制作・広告制作のキャリアを経て、2013年からRépublique開発チーム(Camouflaj, LLC.)に参加。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に入社後はエバンジェリストとしてUnityの伝道活動に携わりつつ、Made with Unity日本版の編集長をやってます。

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