ゲームコントローラー・レクイエムは終わらない
2013年の初め、気分転換としてXi(サイ)やI.Qのように綺麗に転がる立方体を物理エンジン上で実現できるか、小規模な実験を行っていました。
おおむね、きれいに転がることは実現できたもののそれだけではゲームにならないなと頭を捻っていました。
そのとき、自分もプレゼンターとして参加していたSENSE OF WONDER NIGHT 2011で見た、まだシンプルなシェイプで構成されていたころの”Incredipede“を思い出しました。
回転するだけではなく、正方形の四辺を伸縮させて進む”トルクル(TorqueL、以下「トルクル」で統一)”のアイデアはこうして生まれました。
「トルクル」は物理演算を活用したアクションゲームです。
プレイヤーは紳士の入った正方形の箱を時計回り/反時計周りの回転と正方形の4つの辺を自在に伸び縮みさせることで、ゴールを目指します。
キーボードであれば、左右キーで回転を、WASDキーで辺の伸び縮みを制御します。
ゲームコントローラーであれば、スティックの左右や十字キーの左右で回転を、ひし形に配置された4つのボタンで辺の伸び縮みを制御します。
4つの辺を伸ばすという操作は現在の殆どのゲームコントローラーに搭載されているひし形配置の4つのボタンの配置ととても相性が良く、ゲームコントローラーで遊ぶことに強いバリューを持っていると感じました。
2013年に初めて開催されたBitSummitでの展示後、PC向けにプロトタイプ版を公開しました。プレイの様子や様々な配信を見ていると、多くのプレイヤーはキーボードでプレイしているようでした。

Readmeや作品説明でゲームコントローラーでのプレイを推奨していましたが、様々な環境があるPCでは限界を感じ、やはりゲームコントローラーで遊んでもらうには、ゲームコントローラーが標準である家庭用ゲーム機でリリースしなければならないと確信しました。
当時はPlayStation 4やXbox Oneが発表される前で、家庭用ゲーム機そのものへの否定的な論調が強かった覚えがあります。
ゲームコントローラーでプレイするゲームへの思い、ゲームコントローラーとの結びつきの強い「トルクル」の仕様、すでに国内と海外で大きく異なっていたゲーム開発の潮流、これらが一つの旋律のように頭の中でつながり、「トルクル」を家庭用ゲーム機向けにリリースしておきたいと言う思いがより強くなりました。
様々な仕組みが整ってきた現在とは異なり、どうすれば家庭用ゲーム機でリリースできるのか、情報も仕組みも不透明な状態でした。
しかし、関係各所のご協力や幸運なめぐり合わせもあって、2014年12月にPlayStation 4版、PlayStation Vita版の「トルクル」の日本国内リリースを行い、その道を開くことが出来ました。

幸い、現在までに家庭用ゲーム機市場は再び盛り上がりを見せ、「トルクル」を継続して配信し、遊べる家庭用ゲーム機のプラットフォームを増やしていくことができています。
2015年8月に北米・欧州でのPlayStation 4版、PlayStation Vita版、2016年11月にWii U版(日本国内のみ)、2017年10月に開発環境をUnity 5に移してXbox One版をリリースしてきました。
そして2018年2月、Nintendo Switch版が日本国内リリースとなります。

ゲームコントローラーで遊んでもらうために、そして、遊びたいと思ったときには遊んでもらえるように、道のりを紡いでいます。