2020.02.18
作り込まれたグラフィックの裏にある “心地よい手触り”
塚脇忠典
モンキーバレルズ
グッド・フィール

『毛糸のカービィ』や『ヨッシー ウールワールド』、3DSの『すれちがいシューティング』など、社名の示す通り “いい感じ” の触り心地の作品を数多く手がけてきた株式会社グッド・フィール。そして彼らがオリジナルタイトルとしてリリースしたのが本作『モンキーバレルズ』だ。

一見してまず目を引くのはグラフィックだろう。ピクセルアートをベースとしながら3D表現を加えた画作りは懐かしさと新しさを兼ね備えており、瓦礫の山に埋もれている近未来の日本を繊細に描き出している。2019年に開催された「デジゲー博」の企業ブースでも強く存在感を示していた。

少人数、短期間、そして初のUnityを使った開発でありながら高いクオリティを誇る本作のプロダクションについて、プロジェクトの中心人物である塚脇さんにお話を伺った。

インタビュー: 池和田 有輔

プロフィール

塚脇忠典

株式会社グッド・フィール 制作部アート室室長。同社設立から所属し、さまざまなゲームのアートディレクターやコンセプトアートなどに携わってきた「絵をなんとかする係」。『モンキーバレルズ』ではディレクター、企画、キャラクターデザインやコンセプトアートも担当。

オリジナルタイトルを自分たちの名前で出したい

池和田

個人的に『モンキーバレルズ』で素晴らしいと思ったのが、ピクセルアートと3Dを組み合わせたグラフィックでした。よく見ると、粗めのドット絵やちょっと細かいドット、それから3Dなどが混在してますが、それらの組み合わせに全く違和感がないですよね。

塚脇忠典(以下塚脇)

はい、違和感がないグラフィックというのは目標にしていました。あまりリアルに作るとノーマルマップを使う必要がでたり一個のアセットに対してのオブジェクトの工数も増えるので、極力シンプルにしながら、どうリッチに見せるかということにはこだわっています。でも、キャラクターまでドット化してしまうのは「違うな」という。動くナマモノのキャラクターを作りたかったので、プレイヤーキャラクターだけはスムージングもモデリングもしているんです。それと背景を馴染ませるブリッジの部分が苦労したところですね。ほかにも、キャラクタープレハブの自動化ツールを自作したりして効率化を図りつつ、アーティストについてはチームの中でドットの打ち方講座なんかもやったりして理想に近づけていきました。

メインキャラクターのマサル(猿だけに)

池和田

塚脇さんは本作の企画・ディレクターでもあるし、キャラクターデザイン、コンセプトアートも担当されていますよね。

塚脇

はい。今、私はアート室の室長なんですが、主に企画段階のときのコンセプトアートや、プレゼンテーションの際のイラストなど、ゲームの「最初の一枚」を描くことが多いんです。これまでの仕事では、「遊びの要素と見た目の良さをどう両立させるか」が常に課題でした。経験を積むうちに、デザインだけでなくゲーム全体のことも少し見れるようになってきたので、本作ではゲームディレクションを是非やらせてほしいということで挑戦しています。

池和田

そもそも、どういったきっかけでプロジェクトが始まったんですか?

塚脇

これまでは「グッド・フィール」として請け負ったデベロッパーの案件が常にラインで動いている中で、どうにかリソースを確保してFacebookのゲームやアプリなどをリリースしていたんです。でも最終的には、コンシューマーのオリジナル作品をリリースするというのが僕たちの夢でした。私自身グッド・フィールが設立したタイミングでデザイナーとして入って、会社の成長と共にずっとデザインの仕事をしてきたんですが、社長(蛭子悦延氏)といつも「オリジナルのタイトルを、いつか自分たちの名前で出したいね」と話していたんですよ。プロジェクトの隙間で「今ならいける」というタイミングをずっと狙っていたわけですね。

マッドマックスの舞台が日本だったら?

池和田

初期の世界観やコンセプトアートなども塚脇さんが担当されたとのことですが、そのあたりについて聞かせていただいてもよろしいでしょうか。

塚脇

はい。社長(蛭子悦延)からは「マッドマックス(怒りのデス・ロード)みたいなの作ろう!」という提案があったんですが(笑)、僕は「日本」というモチーフで勝負したかった。それで、日本ならではの世紀末的世界観を目指したデザインにしたんです。

東京・五反田ステージ

池和田

「五反田」とか「湘南」とか見慣れた地名がディストピアになってますよね。人類はもう居なくなっちゃって…。

塚脇

人類は開始5秒ぐらいで全滅させられます(笑)。

池和田

良い意味でなんですけど、外国の方が考えるような、ちょっと間違った日本像のような雰囲気がありますよね。

塚脇

それはすごく意識したポイントですね。アートディレクションを担当しているのが、ベルトランという社内のフランス人のアーティストなんです。やっぱり海外の方が見る日本って、目のつけどころが面白いんですよ。普段、町で見つけたちょっとしたロゴとか、変わった看板なんかの写真をインスタグラムでお互いシェアしあっているんですが、彼の目を通した日本ってすごく新鮮に写るんです。それをゲームに活かしたかった。

池和田

なるほど、狙った部分でもあったんですね。

初期のイメージボード

細部まで練られたデザイン

池和田

本作には家電をモチーフにした、全98種もの武器が登場しますよね。敵も、最新鋭のお掃除ロボットもあり、ブラウン管のテレビもありで面白かったです。どういうプロセスで家電を選定していったんですか?

塚脇

武器は「日用品」というルールを決め、スタッフにネタを出してもらいました。敵の選定の基準は、ある程度ボリュームがあるものだったり、用途に応じてだったり…。やっぱり細かい形状のものはなるべく避けて、あとは身近にあって、スケールが想像しやすいものですね。ボツにしたものでは、ドラム式洗濯機のガトリングガンもあったんですよ。

武器のコンセプトアート。トリガーが缶のプルタブだったり細部まで練られたデザイン

池和田

個人的に笑ったのはゲーム筐体の敵キャラです。麻雀牌を飛ばしてくる筐体もありますよね。

塚脇

気づきましたか(笑)。あの弾は、実は、国士無双など、役満の配列になっているんです。ほぼ見えないんですが(笑)。だから、バレットのデータベースにちっちゃいドットのマージャン牌のデータが全種類入っているんですよ。

池和田

面白いなあ。そこまでこだわっていたんですね。キャラクターについてのこだわりについても聞かせてください。

塚脇

そうですね、例えばマサルがモヒカンなのには理由があるんです。上から見たとき、線が入るんで方向がわかるんですよね。ハナコの場合はリボンがあるのでこっちが進行方向っていうのがわかる。コテツがキャップを後ろかぶりしているのも同じ理由です。

池和田

なるほど、全方位であるが故に向きがわかるようにしておく訳ですね。

塚脇

長年アクションのゲームを作ってきたので、ゲームキャラクターは機能がやっぱり入っていないと、という考えがあるんです。カッコいいだけとか可愛いだけじゃ駄目っていうのがいつもあります。なので、今回は見下ろしの画面ということもあり、キャラクターのトップのデザインというのをすごく意識しましたね。

このインタビューのために書いていただいた塚脇さんの直筆メモ

“これまでにない表現” を目指すということ

池和田

新鮮だったのは、ポストエフェクトのレンズフレアのような四角いエフェクトですね。あまり見たことがない表現だったので。

特徴的な四角いレンズフレア

塚脇

それは、キャラクターが普通のスムーズシェイプなのに対して、背景の地面のドットの比率が異なってしまうため、それらを表現的につなぐために作ったエフェクトです。キャラクター、背景、アセットの境界をぼかす意味で「レンズフレアを四角でやってほしい」とエフェクトアーティストに頼んだんです。

池和田

そういう意図があったんですね。

塚脇

開発初期の段階で、エフェクトのアーティストが天候を全部作ったんですよ。雨・雷・風、最終ステージのレーザーの演出など、三十種類以上作りました。その時に、「リアルさもありつつドットの感じも残っている」という加減を検証して表現を固めていったんです。そのエフェクトをサンプルで上がってくる背景にどんどん被せてチェックしていって、「このぐらいだとプレイの邪魔にならない」というラインを見極めていきました。シューティングなので、エフェクトはすごく大事なんです。だから他ではない表現にしたかった。

池和田

そこにはさまざまな創意工夫があったわけですね。

塚脇

工夫でいうと、エフェクトのアーティストが、ドット絵の経験がなかったので、まず普通に作ってもらって、そこからテクスチャの解像度をカリカリまでギュッと小っちゃくしたんです。さらにエッジを立てたりして、あとは手打ちでずっと調整していきました。ただ、ヌルっとしないようにだけ気をつけて。「ドットの色は、スーパーファミコンじゃなくてファミコンで」と説明していました。「アンチ(エイリアス)はあんまりかけすぎないようにして」と。ただ、マットだとすごく安っぽく見えてしまう場合もあるので、クロスチェックという市松模様のドットのフィルターをテクスチャにかけて、複雑に見えるような工夫もしています。

池和田

開発スタイルとしては、最初にすごく完成度の高いミニマムなステージを作った上で、クオリティを保ったままスケールさせる感じですよね。

塚脇

そうですね。開発人数が少ないので、アセットをうまく流用しないとボリュームが出せないという理由もありました。ボリュームを出しつつ、「これさっきも見たな」という既視感をいかに無くしていくか。そこで先程言ったように、プログラマーがベースとなる複数のスクロールの仕組みや遷移の処理を作って、レベルデザイナーが想定のブロックパーツを使ってレベルを作り、その上にアーティストがアセットやエフェクトを被せるというやり方にしたんです。レベルデザインが8割くらいの完成度になった時に、ごっそり絵を入れ替えたんですよ。アーティストが2~4画面くらいのスクロール分の小さい絵づくり用のシーンで絵づくりやライティングをしっかりやって、後で入れるという作り方でした。

池和田

Unityの特性を生かした最適解の一つだと思います。

塚脇

ゲーム制作では、同時進行でいろいろなものが動くので、ゲームエンジンを使うと各担当者が同じデータを触れるのはメリットでしたね。最後までいじれるということは、最後まで揉め事も起こってしまうということでもありますが…。でも私的には、アーティストにはなるべく自由度を持たせて「これがカッコいい」というものを突き詰めてもらいたいし、レベルデザイナーには最後までいじって面白くしてほしかったんです。

グッドフィールらしさとは?

池和田

オリジナルタイトルをリリースした今だからこそお伺いしたいのですが、「グッド・フィール」らしさ、とは何ですか?

塚脇

難しいですね(笑)。ずっとアクションゲームを作ってきたので、「動かすだけで気持ち良くないと駄目」というのはまずあります。グラフィックの表面上の情報に隠れているかもしれませんが、触って動かしたときに、気持ち良いスピード、気持ちいい反応というものをすごく大事にしているんです。何よりもまずそれがないと、どんなにきれいな絵でも絶対ストレスがたまって、面白くないゲームになってしまうんですよ。かなり根気強い数字の調整が必要ですが、いつもプログラマーやレベルデザイナーが頑張ってくれています。そこは譲れませんね。

池和田

厳密な調整が必要なところだと思いますが、アーティスト出身だと、プログラマへのディレクションが擬音多めになったりしませんか?

塚脇

そうなんですよ(笑)。幸い、僕が「もうちょっとスパッと動くように」なんて言ってもチーフプログラマーは理解してくれるので甘えてます(笑)。外から見ると、絵を大事にしている会社と思われがちかもしれませんが、プレイヤーとのインタラクティブ性の調整には、かなり時間を使っています。その組み合わせが、グッド・フィールらしさ、なのかもしれません。

池和田

手触りの気持ち良さ、絵づくり、そして技術が高いレベルで融合しているという訳ですね。

塚脇

そうですね。何とかそうなるべく、グッド・フィールスタッフのみんないつも苦労しているところですが、自分たちが誇れるところだと思っています。

プロフィール

池和田 有輔

フリーランスとしてWEB制作・広告制作のキャリアを経て、2013年からRépublique開発チーム(Camouflaj, LLC.)に参加。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に入社後はエバンジェリストとしてUnityの伝道活動に携わりつつ、Made with Unity日本版の編集長をやってます。

モンキーバレルズ

グッド・フィール
  • アクション
  • シューティング

プラットフォーム

  • Nintendo Switch

言語

  • 日本語
  • 英語
  • フランス語
  • ドイツ語
  • スペイン語
  • ポルトガル語
  • ロシア語
  • イタリア語
  • 中国語
  • 韓国語
  • nintendoeshop

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