製作人数(ほぼ)一人。キャラクター79匹、100ステージ。
「はむころりん」ができるまで。
初めまして、ゲーム制作チーム illuCalab. 代表のEIKI (@eiki_okuma) と申します。
今回は、プログラムからモデリング、レベルデザインに楽曲制作まで一人で作ったスマホゲーム、「はむころりん」の製作過程を紹介いたします。
Unity 1 week でプロトタイプ製作
はむころりんが生まれたのは、unityroom というサイトのゲームジャムイベント。
ゲームジャムだけど、期間が一週間ある! 敷居のとても低いイベントです。
お題が「転がる」だったので転がる球体……いや、キャラクターが転がるのはどうか? と考えて、転がりそうな丸いハムスターを友人に描いてもらいました。

要はこのハムスターが転がればいいのですが、操作方法はいろいろ考えた末にゴルフ方式に落ち着きました。ハムスターを転がす、止まる、また打つ。星をゲットしたら次のステージへ。チュートリアルいらずの、シンプルなゲーム性です。
Unity 1 week での完成作品はこちら。製品版と比べるとビジュアルも大分違いますね。見てくれはいいのですが、ぶっちゃけ遊びづらいです。
スマートフォン版の製作へ
illuCalab. は本来二人組のゲーム制作チームなのですが、メインの3Dゲームプロジェクトのリソースにデザイナーが掛かりっきりのため、プログラマーである自分の手が空くことになりました。
何か一人で作れそうなゲームはないかな?という所で白羽の矢がたったのがこの「はむころりん」。プロトタイプではオミットしてしまった仕様も多数あり、ポテンシャルはありそうだなという感覚でした。

コンセプトは以下の通り。
子供と大人(カジュアルユーザ層)の遊べる無料スマホゲーム。
色んな世界を旅するゲーム。冒険して楽しい。
ゴルフゲームにピタゴラスイッチのようなギミックを取り入れる。眺めて楽しい。
ツムツムのキャラクタースキームを導入する。集めて楽しい。
α版を TOKYO SAND BOX で展示
二週間程度で完成した試作α版を、早速 TOKYO SAND BOX という4月のイベントで展示。おおむね好評で良かったです。特に、小さなお子さんがチュートリアルも不完全なのにガシガシ進んでいて印象的でした。パワーが凄い。

やはり、実際にユーザさんに触ってもらうと見えていなかったものが色々見えてきます。
今回は特に、操作周り。
コントローラがあるゲームだと、とりあえずスティックやボタンを動かして遊べますが、スマホはどこをタッチしていいか分からないとゲームを進めることすらままなりません。
また、スマホは既に様々な「慣れ親しんだ操作」があるので、直感的にそれをしようとして戸惑っている人も多かったです。
#TokyoSandBox フィードバックより、うにょーんUI。うにょーん#はむころりん #indiedev #screenshotsaturday #madewithunity pic.twitter.com/wjXnBMPu2i
— EIKI`@はむころりんイベント準備中 (@eiki_okuma) April 21, 2018
フィードバックを元に作成した、うにょーんとタップ位置まで伸びるUI
カジュアル向けの色々な工夫
チュートリアル……というより、遊び方は極力シンプルに、最悪テキストを読まなくてもステージを遊んで行くだけで分かるように。いまどきはアタリマエかもしれません。

ゴルフって結構操作が複雑で、方向を決めるだけでも精一杯なのに、パワーやら、ショット角度やら、ゲームならスキルとか、たくさんやることがあるんですよね。
はむころりんでは角度とスキルを「キャラクターごとの特性」に逃がしました。

これにより、キャラ選択=ショット打ち分け / 或いはゴルフクラブの選択という感じになりました。
「はむころりん」では色んな世界を回ることがメインなので、カップインではなく星を集めることをゴールにしたり、ギミックである程度動きを収束させたりと、緻密な操作があまり要求されないような作りに仕上げています。物理挙動も、Unity のモノをほぼそのまま使っています。

「大砲」ギミック
キャラクター製作
キャラクターを「集めて楽しい」がコンセプトに入っているので、大量のキャラクターを作る必要があります。うっかり。

キャラクターデザインだけはできないので、ラフを描いてもらい、一気にモデルを作っていきました。3D化の過程で多少デザインは変わってしまいますが、それがかえってはむころりんの味になっています。
それにしても、同じモデルでテクスチャを変えるだけでも結構印象が変わるものです。

各キャラクターにはそれぞれ、初期パワー、ショット角度、スキルが設定されており、二匹として同じキャラクターはいません。その数、総勢79匹(ローンチ時66匹)。あ、もうすぐまた10匹くらい増えます。

最終的には、1日で5~6キャラは作っていました。コツ?ありません。……根性です。
ステージ製作
ステージデザインでは最近 Unity に組み込まれた ProBuilder がとても役に立ちました。
MeshCollider をつけた ProBuilder のモデルで仮組みをし、転がしながらステージを調整した後、3Dモデルで肉付けするように装飾していきます。ProBuilder からモデルが排出できるのもとても便利ですね。
また、草原ステージなどではあらかじめモデリングされた地形を組み合わせて作っています。
レベルデザインでは、次のようなことに気をつけています:
・ステージ開始直後の「最初の画面」で、何をすればいいか分かる。
– キャンディ(マリオでいうコインみたいなもの)による導線。
– 誘引効果の強いオブジェクト。橋や、下り坂、上り坂、トンネルなど。
・難しすぎず、簡単すぎず。「ちょっと考える」くらいがちょうどいい。
・フルーツ(取ると体力回復)の置き方を工夫。
– 基本的にキャンディで囲う。直線状に並べたり、円の真ん中に置いたり。
– フルーツは強力な誘引効果を持つので、プレイヤーを惑わすような場所には置かない。
・ステージごとにテーマを決め、たまにシンボルを置く。
– ステージの印象が深まる。
ちなみに、ステージは複雑なルートで分岐しながら繋がっています。隅々まで探索するのはもちろん、スコアアタックとかも楽しいです。
(実は、海腹川背のリスペクト)
楽曲制作
illuCalab. の楽曲は大体自分で制作しているのですが、今回も外注する時間すらなかったので自分で作りました(?)。

Cubase5 です。
今回の楽曲制作におけるポイントは以下の通り:
・エリアごとに1曲。
・ステージ一つ一つが短いので、1分程度のループ。
・楽器はシンプルな編成で音数も少なく。
– ストリング・パッドは使わない。音の響きの間の空間を埋めないイメージ。
– 最初、ゴテゴテしたものを作ったら全く合わず、楽器を間引いていった結果今の形に落ち着いた。
・ 基本的に楽器は使いまわす。セットアップを同じにして時間短縮。
– メロディの楽器やパーカッションで特徴を出す。
– ドラムセットはイメージが画一化するので使わない。
如何でしょうか。一曲30分~1時間で出来上がります。自己最高記録です。
最後に
はむころりんの制作を事例として紹介しました。ブログやツイッターなどにも制作情報を載せている他、はむころりんはまだまだイベントやキャラクター・ステージ追加などでアップデートしていきますので、是非チェックしてみてください。
Twitter: @eiki_okuma
Blog: http://eiki.hatenablog.jp