2017.06.15
記憶に残る瞬間を生み出すということ
Emeric Thoa
Furi
The Game Bakers

記憶に残るゲームを作るために:ゲームデザイン上の難しい判断

『Furi』をリリースした後、一部のプレイヤーの方からは絶賛のコメントをいただきました。本当にゲームに熱中してくれて、その熱中ぐあいは僕らの想像をはるかに超えるほどでした。一方で、本作を楽しんでもらえず、「ゲームに拒絶された」と感じたプレイヤーやレビュアーの方もいました。そういった方々から酷評されたのはまさにその点だったのですが、確かに間違ってはいないと思います。というのも、すべてのゲームが「あなた向け」というわけではないからです。人はそれを多様性と呼び、健全なことだと思います(これについては僕よりもずっと見事な説明をKen Wong氏がされているのでそちらをご覧ください)(リンク先英語)。

もちろん世の中にはできの悪いゲームや「そこそこ」のできのゲームだってあります。ゲームに何かが足りないせいで、熱中してくれるプレイヤーがとても少ないケースです。でも個人的に、『Furi』はそうではなかったと思っています。一部のレビューで書かれていたように、本作は「好き嫌いが分かれる」ゲームだからです。そして(信じるかどうかは貴方次第ですが)、そこは狙ってやっています。僕らは、たとえ一部の人に不満を感じさせることになったとしても、「うまくプレイした時の圧倒的な満足感」を生み出すためにゲームをデザインしたのです。

好き嫌いのはっきり分かれるゲームを作るということ

本記事では、本作のゲームデザインに込めた意図を説明し、その意図を実現するためにどう実装したかを説明してみます。

パート1:すべての人に愛されようと「しない」ゲームを作るということ

僕らがモバイル向けに『Combo Crew』を作った後、パートナーのAudreyと僕は次のゲームについて考え始めました。当時は2013年、インディーゲームシーンはすでに巨大でしたが、今後さらに伸びていくことは2人とも確信していました。そして市場はもっと飽和して、細分化していくことも予想していました。2016 年までには、iOSもGoogle Playも2010年とは別物になっているだろうと思っていましたし、Steamは連日新作リリースの嵐となり、当時は出たばかりだった次世代機(PS4とXbox One)のストアも新作タイトルやセールで溢れることになるだろうと考えていました。

そして思い至ったのが、「もしインディーでトップ10を目指すなら、何かが「突き抜けて」いないとダメだ」という点でした。どんな形でも、突き抜けたゲーム、尖ったトコロのあるゲームでなくてはいけないと。僕はそういうゲームを「トリプルI」タイトルと呼んでいます。

『Furi』の企画書の最初に載せていた図。右側のトリプルIの図には、「突き抜けて尖ったところがあり、その部分をうまく落とし込んだゲーム」と書かれている。

トリプルAタイトルには潤沢な予算があり、才能あふれるスタッフがいて、壮大なスケールの作品を作るだけのチームがあります。そしてストーリーもビジュアルも、キャラクターもゲームプレイも、ゲームモードも、プレイ時間も、何もかも揃えて誰もが楽しめるゲームを作ろうと尽力します。彼らのターゲットはマス層だからです。

そこで僕らは考えました。小規模なスタジオがそんなゲームたちと競っていくには、正反対を行くしかないと。すべての点で優れたものを作るには小さすぎても、一点において最高を目指すことはできる。つまり、尖ったものを作ろうと考えたのです。要するに、すべての人に愛されようとしなくても良いんだと気づいたのです。ニッチ層が本当に愛してくれるゲームを作るためなら、大多数に嫌われることを「自ら選んでも」いいのだ、と。

この気づきは、その後3年のあいだ僕らの戦略の基礎となりました。

成功の秘訣は知らないけれど、失敗の秘訣は知ってる。
すべての人に愛されようとすることだ。

『Furi』を作る上で下した決断のすべては、「ある種のゲーム」に飢えたニッチ層に楽しんでもらうためのものでした。要するに、日本のキャラクターアクションゲーム好きに刺さるようにゲームを作っていたのです。突き抜けていて、ユニークで、何かに特化したゲーム。それを具現化する役に立つかどうかが、制作の判断基準となったのです。

まずカラフルかつシュールリアリズム溢れる世界を作り上げて、アートスタイルが突き抜けたものになりました。

キャラクターデザインもスタイリッシュでユニークになりました。何といっても『アフロサムライ』のデザイナー岡崎能士氏の仕事ですからね。

戦闘も(超)高速なものになりました。これは日本のゲームのデザインにインスピレーションを受けています。

シューティングと格闘アクションの融合というのも他にない点だったと思います。

サウンドトラックについても優れたエレクトロ/シンセウェイブ系ミュージシャンからオリジナル曲を提供してもらうことができました。

近年のメインストリーム系アクション、たとえば『ゴッド・オブ・ウォー』と比較してみれば一目瞭然ですが、『Furi』で僕たちが舵取りした方向は彼らとは真逆です。彼らがリアルさを追求したのに対し、僕らはシュールリアリズムへ向かいました。サウンドトラックもオーケストラに対してエレクトロ。大手の人たちと正面切って戦うなんて避けたほうが良いですもんね。

彼らがマス層に向けてゲームを作った一方、僕らはそれを完全に放棄しました。一切の妥協も歩み寄りもなく、完全に。僕らが作ったのはニッチ層のためのゲームで、ファンが永遠に記憶してくれるような「魔法」を生み出すことに全力を尽くしたのです。

パート2:妥協との戦い、強い決断を下すということ

基礎となる戦略からしてすでに大胆だった本作ですが、実際に完成させるのはさらに大変でした。2年にわたるプロダクション期間で、クリエイティブディレクターだった僕は何度となく反対意見を浴びせ続けられました。開発チーム、プレイテスター、体験会でのメディア、トレイラー動画のコメント欄…基本的には本作に多少なりとも触れたすべての人から変えたほうがいいと言われ続けたようなものでした。

プロダクションの佳境に、こんなツイートも投稿しました。

ゲームデザイナーなら、これを読んで共感してくれるんじゃないかと思う。「すべての人に愛されようとしない」という戦略を貫き通すためには、「歩み寄り」や「中途半端」といったものと戦い続けなくてはいけない。ここで譲ればゲームの尖った部分は消え失せ、ゲームオーバーになってしまうのです。

以下に、本作において賛否両論を巻き起こしたゲームデザイン上の決断を紹介してみます。本作を好きだと言ってくれたプレイヤーですら賛同してくれないこともあった部分です。もちろんその声には耳を傾けますし、他により良いやり方があったかもしれないことはまったく否定しません。できることなら改良したい部分もたくさんあります。具体的にはチュートリアルや超イージーモードなんかですね。でもおそらく賛否分かれたゲームデザインの一部についてはそのままにすると思います。それが『Furi』を本作たらしめている要素だと思っていますから。

以下、ネタバレあります。

「移動」パート

『Furi』ではボス戦の間に移動パートが用意されており、移動しながら細かなストーリーの補足を見たり、ウサギマスクをかぶった謎の味方に稽古をつけてもらったりします。またこれは各世界の景色から次のボスの特徴を想像したり、新しいサウンドトラックを堪能したりする時間でもあります。このパートはゲームの大事な部分です。ストーリーは先へ進むための目的を作りますし、緩急により緊張感が出ます。またプレイヤーにとっては熾烈なボス戦の間で一息つく時間にもなっています。この移動パートは筋金入りのアーケードゲーマーには受けが悪いことは理解した上で、その他のプレイヤーにとって『Furi』の評価を「良いゲーム」から「価値ある体験」へと引き上げる要素だと考えて入れてあります。ゲームデザイナーという立場で、プレイヤーに3~4分「歩かせる」あるいは「自動歩行させる」(専用のボタンがあります)というのは非常に難しい決断でした。雑魚敵なし、経験値なし、アイテムなしですからね。2 年間の開発中、これを変えないでおくのは本当に大変でした。

シークレットエンディング時にセーブを消す仕様

本作のある地点には隠し選択肢が用意されています。具体的には戦うのを止め、誰も倒さず、クリアすることができるのです。ただし本作には「ハッピーエンド」はありません。すべてのエンディングには何らかの形で良い点と悪い点が混在しています。それでもプレイヤーは少なくとも、何故戦うのか、そしてそもそも戦うかどうかを選ぶことができるのです。

そして僕はこのシークレットエンディングを絶対に「真エンディング」にしたかった。ただの隠し要素、単なる実績のひとつにはしたくなかったのです。だからこそ僕は、このエンディングを迎えたプレイヤーがセーブを失うという仕様にしました。当然不満を感じるプレイヤーはいました。ゲームの半分をやり直さなくてはいけないということが不満だったプレイヤーもいれば、偶然エンディングを迎えてしまったことに不満を感じたプレイヤーもいました(これは確かに不満を感じて当然だと思います。大胆なゲームデザインの「巻き添え被害」に遭ったわけですから)。

でもこのエンディングを迎えた瞬間頭をよぎること――
– “隠しイベント見つけた!”
– “お、決闘がテーマのゲームで平和的なエンディングだ”
– “セーブ消えてんじゃん!ホントに消えてる!まじか”

これらは『Furi』を通じて僕らが届けたかった感情です。驚き、アドレナリン、強烈な感情。これについては文句を言う人もいますし、意図を理解して愛してくれる人もいます。

超イージーモードからは難易度変更不可

本作には3つの難易度が用意されています。デフォルトモード(Furi)は手応えがあり、我慢と忍耐なしにはクリアできません。その代わりにクリア時の満足感はひとしおです。2つめのハードモード(Furier)は非常に難しく、ボスの動作パターンなども専用のものに変更されます。このモードをクリアするプレイヤーは間違いなく本作を愛し、理解してくれている人です。そうでなければクリアできないですから。なのでこのモードをクリアしてくれた人には開発者として感謝したいほどです。

そして最後のモード(Promenade)は超イージーモードです。これはゲームプレイにそれほど手間や時間をかけたくないプレイヤーのために作ったモードです。特定のボス戦のみPromenadeで倒してその後Furiモードに戻せないことが不満だと感じているプレイヤーも存在していますが、実はこの仕様はプレイヤーの満足感を高めるために作ったもので、下げるためではありません。もしも難易度の切り替えが可能だったら、プレイヤーは強いボスと当たる度に「Promenadeモードに切り替える」という誘惑にさらされることになります。そして難易度を切り替えて先に進むことを繰り返してしまえば、凄まじい困難を乗り越えたという満足感は完全に失われてしまうからです。

ボタンリリース時にダッシュする仕様、あるいは遅延という誤解

本作には超高速で使用感の良いドッジ(避け)スキルがあり、使用時にプレイヤーは基本的に無敵になります。しかし一部のプレイヤーからはこのスキルについて「ラグい」や「遅延を感じる」といった不満が出ています。実のところこのスキルに遅延はまったくありません。ただ、スキルはボタン押下時ではなくリリース時に発動します。ドッジスキルはチャージして移動距離を伸ばせるため、ボタンを長押ししてから離すとより長い距離ダッシュできます。チャージによる移動距離の変化はプレイヤーが取れる行動に深みを与え、各ボス戦においてプレイヤーが取りうる行動を多様化させる効果があります。しかしこの仕様は開発チーム内においても賛否が分かれました。ドッジスキルを2つのボタンに割り当てる(クイック/チャージ)という案もありましたが、これは操作感が複雑になりすぎるため見送っています。それに、ドッジボタンを即座にリリースして発動させるのに慣れると(多くのプレイヤーはボス戦を1、2度終えた時点で慣れるようです)、簡潔な操作システムと深みのあるゲームプレイが両立できますからね。

さてここまで、賛否両論を呼んだ仕様のうちでも僕が妥協せずに貫いたものをいくつか紹介してきました。しかし当然ですが、不満の声や的を射た意見を受けて変更した仕様もたくさんあります。僕は心を狭くしろ!と推奨しているわけではありません。ただ、尖った部分を維持するためにはリスクを負ってもいいんだ、と言っているだけです。この点について、AudreyとThe Game Bakersのコアチームメンバー、そしてSonyの担当者の皆さんが理解してくれたことに僕は心から感謝しています。最後まで変わらずビジョンに向けて尽力してくれて本当にありがとう。

パート3:強烈な満足感を生み出すために

僕がビデオゲームを愛する理由は、ゲームが感情を生み出すからです。ゲームプレイ、ストーリー、ビジュアル、音楽…それらが詰まったゲームはどんな感情でも引き起こせるでしょう?

『アンチャーテッド 4』なら超高純度の娯楽を与えてくれるし、『P.T.』は心底怖がらせてくれる。『風ノ旅ビト』は絆を生み出すし、『Monument Valley』は自分の中の賢者と詩人を感じさせてくれる。そして『Furi』は、強烈な満足感を生み出します。だからその過程では必然的に、強烈なフラストレーションも引き起こします。

でも僕は「強烈な満足感」を生み出すことには成功したんじゃないかと思います。

本作は難しいとよく言われます。僕の反論はこうです。これはほとんど別の時代からやって来たゲームなんです。流行には乗っていない。遊ぶには根気が必要です(間違いなく流行ではないですね)。そしてカウンターアタックがキモのゲーム(ゼロ年代~のアクションゲームのようにアグレッシブにコンボを決めていくのではなく、好機を待って突いていく)なんです。

一方、根気強いプレイヤーはプレイする度に上達していきます。『Furi』はギター、ボス戦は楽譜みたいなものです。弾き初めは下手くそで、でも練習すると上達していく。誰もがやりたがることじゃありません。でも最後にやり遂げた時の満足感は圧倒的です。そしてその満足感は、努力の量に比例している。強烈な満足感を得るには、努力が必要なんです。

そしてゲームがそれをやってのけた時…プレイヤーがついにフラストレーションや痛みを乗り越えて安息と満足感を感じる時、こんな言葉がもらえるんです。

ゲーム業界には「痒いところがない」ゲームを評価する傾向があります。Metacriticの存在感は大きいし、Metacriticで高いスコアを得る秘訣は優れたゲームプレイを作り欠点をつぶすこと。そうなれば、誰かに負の感情を抱かせるようなゲームを作らないようにし、フラストレーションはつぶそう、という気持ちになるのが当然です。でも最近は尖ったゲームがどんどん増えています。そういうゲームは強烈な感情を引き起こす。たとえそれがターゲット層を狭めてしまうことになっても、です。

それって面白いじゃないですか。
受け入れて、進んでいきましょう。

Emeric Thoa

The Game Bakers のクリエイティブディレクター兼共同設立者。
SNSへのリンクはこちら: @The Game Bakers @EmericThoa

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