ハイレベルなラインナップに刮目せよ!Unityインターハイ2019

Unityインターハイ2019、優勝は函館ラ・サール高校 松田活さん!

2019年12月15日(日)、秋葉原UDXシアター「Unityインターハイ2019」本選のプレゼン発表会が開催された。「Unityインターハイ」とは、西暦2001年4月2日以降に生まれた方を対象にした、Unityを使ったオリジナルゲームのコンペティション。今年は全国から昨年を超える116組の応募があり、その中から選びぬかれた12組が本選に出場した。

審査員の簗瀬洋平(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)さんが「もはや市販のゲームレベル」とコメントする、ハイレベルな作品が揃った。下記トレイラーにて本選出場作品を見ることができる。

全方位に高品質のパズルゲーム『Overturn』

『Overturn』

見事優勝を勝ち取ったのは、北海道/函館ラ・サール高校 チーム「Kats」松田活さん(17歳)によるシンプルかつ奥深い仕掛けのパズルゲーム『Overturn』。オレンジ色の三角形を動かし、回転などのギミックを用いてゴールまで導くパズルゲーム。氷のように滑ったり、画面全体が反転するなど様々な罠があるので知恵を絞ってクリアしていく。三角形の主人公は動く方向によって目がキョロキョロ動くのだが、そういった細かいエフェクトが効いていて、まるでキャラクターが生きているかのような表現ができている。

本戦出場は昨年に続いて二度目!昨年はマップを傾けながらキャンディを落としていくパズルゲーム『DROPS』で出場し、審査員特別賞。技術力と表現力で審査員を驚かせたのは記憶に新しいところ。

『DROPS』(2018年)

アニメーションや画面の切り替えなどの演出にこだわった

シンプルな色彩とデザインで、ついつい夢中になって遊んでしまう『Overturn』。
優勝した松田さんにお話を聞いた。

優勝おめでとうございます!まずは、感想をお聞かせください。

松田

驚きしかないです!優勝する要素がないと思っていました(笑)。去年よりはいいものが作れたかな、とは思っていたんですが…。アニメーションや画面の切り替えなどの演出にこだわったので、そこを評価していただいたのかなと。

いや、すごくハイレベルでしたよ(笑)。キュートなキャラクターが印象的でしたが、最初から「三角形」という形に決めていたのでしょうか?

松田

はい、そうです。最初は、パズルのブロックも三角形だったんですが、そうすると実装が難しいので四角にしました。

バリエーション多いステージで遊べるゲームですが、まだまだ出していない仕掛けもあるのでしょうか?

松田

ボツにしたものはないんですが、実装していないアイデアがあるので今後作っていきたいと思います。

Unity歴はどれくらいですか?

松田

うーん、物心ついたときにはもう知っていたという感じです。中学1年生ぐらいの時ですね。実際に使い始めたのは中学3年生からで、科学雑誌に載っていたゲーム制作の特集でUnityが紹介されているのを見たのがきっかけでした。使えるようになってきたので、「せっかくだから大会に出してみよう」と思ったんです。

『Overturn』着想のきっかけは?

松田

毎日、呼吸するようにプログラミングをしているので、その流れで出来たものです。ブロックと三角形が逆に動くので、回転する性質をいい感じにするのが目標でした。苦労したのは、主人公の動きとブロックの回転のデバッグのところですね。

制作期間はどれくらいですか?

松田

今年の2月に作りはじめて、ちょこちょこ開発していたので、合計すると2ヶ月半くらいでしょうか。実は今年、もう1本違うゲームを作っていたんです。

2ヶ月で優勝とはすごいですね!それでは将来の夢や目標がありましたら教えてください。

松田

将来的には、ネイティブアプリを作るような分野に行きたいですね。その傍らで、趣味として『Overturn』のようなゲーム作りができればと考えています。

Unity歴9ヶ月で準優勝!

準優勝は今年3月にUnityを始めたばかりという東京都/戸山高校のチーム「トロコイド」こと阿部悠希 (16)さん。モノクロの画面に数学式で描かれた美しいモチーフの弾幕を避けるゲーム『mathmare』での受賞だ。サインやコサインなどを組み合わせた図形が美しい。自分で数値を入れてステージを作ることもできる。オブジェクトが多い(MAX1024個)ため、苦労したのは最適化。オブジェクトの生成と削除が多いため、ゲームが重くなる。そのため、自機が被弾したかの判定は自作のスクリプトを書いたという。阿部さんのインタビューは後日公開するのでお楽しみに!

ゴールドアワード


次点となるゴールドアワード作品は5作品。東京都/芝浦工業大学附属高校・チーム「Hidetyo’s Apps」こと藤澤秀彦 (17)さんによる『虚構ノ世界』と、沖縄県/N高校のチーム「プラムベリー」こと梅村時空 (16)さんによる『朝を知らぬ星』、神奈川県/森村学園中等部のチーム「ideal」による『~SeaRoad~』、東京都/豊島岡女子学園高校のチーム「cigarette」こと島田東子 (16)さんによる『かえるはかえる』、埼玉県/山村国際高校のチーム「毎日Unity」こと田崎直哉 (18)さんによる『TheStackerOnline』だ。

広大な世界を冒険する『虚構ノ世界』

「Hidetyo’s App」こと藤澤秀彦 (17)さんは昨年、一昨年に続く三年連続のゴールドアワード受賞となった。オープンワールドのゲーム。『虚構ノ世界』は広大な世界を冒険するオープンゲーム。大草原や街などを、広大なフィールドを自由に探索することができる。地形にテラインを使用したり、コンポーネントが重かったので地形をいくつかのブロックに変えるなど描画処理の最適化に気を使った。プレイヤーの興味を引くことでゲームイベントへの自然な誘導を狙ったほか、BGMはピアノを主としたランダム音を生成、またフィールドでは虫の鳴き声と風の音を別々に配置して自然な感触の「サウンド」を作り出すなど、かなりのこだわりが詰め込まれている。

高校生でも深夜徘徊してみたい!『朝を知らぬ星』

同じくゴールドアワードを受賞した、沖縄県/N高校の梅村時空 (16)さんによる『朝を知らぬ星』。高校生ではまだ行えない、憧れの「深夜徘徊」をモチーフとして作ったゲーム。太陽が永遠に登らなくなってしまった星で、主人公の「ひめか」が、パートナーの「すずか」とともに地上を占拠する鬼・異形を倒す。こだわったのは戦闘シーン。ジャスト回避でチャンスを作り、一気に責めるという静と動の対比、また大量のパーティクルなどのエフェクトによる気持ちのよいゲーム体験にこだわった。

おさかな大冒険『~SeaRoad~』

魚が海を目指すという個性的なアクションゲームでゴールドアワードを勝ち取ったのは神奈川県/森村学園中等部のチーム「ideal」こと井上恵太 (15)さんによる『~SeaRoad~』。着想は、竜巻で魚が空から降ってきたという事件を知ったことがきっかけ。陸に打ち上げられた魚が、スタート地点のビルの屋上からいろんなところを通って海に帰るゲームだ。陸にいると魚が弱るので、水分補給をしながら進んでいく。奥行きを使って攻めてくるお掃除ロボットや癖があって手強いボスのやどかりを倒して海へ向かえ!2.5Dは作りやすいので、今後も作っていきたいとのこと。

プレイヤーのことを一番に考えた『かえるはかえる』

東京都/豊島岡女子学園高校のチーム「cigarette」こと島田東子 (16)さんによる『かえるはかえる』。主人公は、魔法で人間に変えられたかえる。自分の魂を取り戻す旅をしている。人間なら届かないところでも、かえるの姿になって高いところに飛んだり、水の中をおよいだりすることでたどり着くことができるギミックがユニーク。「親切なゲーム設計」を心がけ、ヒントを教えてくれるかえるを置くことでプレイヤーが自分で考えて自分の力で回答する気持ちよさを感じてもらうことを目標とした。またUIにもこだわっており、ライフやアイコンはフラットデザインで背景に沈み込まない色彩にしている。

全く違う体験をもたらす落ち物ゲーム『TheStackerOnline』

同じ色のブロックを並べて消すというお馴染みの落ち物ゲームだが、遊び心地はこれまでのものとは全く違う!埼玉県/山村国際高校のチーム「毎日Unity」こと田崎直哉 (18)さんによる『TheStackerOnline』は、壁と壁がつながるように同色をつなげて、同色のブロックが消えるようにするゲーム。既存のどのパズルゲームとも内容がかぶらない、運要素でないパズルゲームを考えたという。ブロックの出現時に点数をつけ、ブロックを設置するようにするなどきめ細かい工夫がされている。

インターハイ会場には実際に作られたゲームを遊べる試遊ブースも

twitchとコラボレーションしたジェラートも提供

ほか、審査員特別賞、シルバーアワード、ブロンズアワードなどの受賞作品は公式サイトにて公開中。制作者のショートインタビューも後日公開予定だ。当日の全プレゼンテーションは下記twitchアーカイブから視聴できる。

Unityインターハイは来年も開催予定!ぜひ小中高生、高専生の皆さんはぜひエントリーを!

Unityインターハイ2019

日程:2019年12月15日(日)
開催場所:秋葉原UDXシアター
公式WEB:https://inter-high.unity3d.jp/

齋藤 あきこ - 2019年12月26日