2017.07.27
破壊と再構成を重ねて実現したパズルとアクションの両立
尾上 将之、伊藤 博人、小川 一美
GIGA WRECKER
ゲームフリーク

ギガレッカーは瓦礫や鉄屑を武器に再構築する能力を得た少女が、謎のロボット軍団の支配する世界を探索するパズルアクションだ。開発は『ポケットモンスター』シリーズなどで知られるゲームフリークの若手スタッフを中心に進められ、早期アクセス期間を経てSteam版がリリースされている。

社内コンペティション制度である「ギアプロジェクト」からスタートしたこのゲームは、小規模チームならではの柔軟性や自由な発想が散りばめられ、それが大きな魅力となっている。しかしインタビューを通じてわかったのは、決して平坦な道のりではなく、多くの作り直しや試行錯誤を経てリリースに漕ぎ着いたということだった。

インタビュー: 池和田 有輔

プロフィール

尾上 将之

岡山県出身。神戸電子専門学校卒業。2010年に株式会社ゲームフリーク入社。 プログラマーとして、『ポケットモンスター』シリーズ、『TEMBO THE BADASS ELEPHANT』に携わり、『GIGA WRECKER』では初めてディレクター兼プログラマーとして携わる。

プロフィール

伊藤 博人

東京都出身。武蔵野美術大学卒業。2010年に株式会社ゲームフリーク入社。 ゲームデザイナー(プランナー)として、『ポケットモンスター』シリーズ、『TEMBO THE BADASS ELEPHANT』、『GIGA WRECKER』に携わる。

プロフィール

小川 一美

千葉県出身。日本工学院専門学校卒業。約3年ほどゲーム会社に勤めたのち、2016年に株式会社ゲームフリーク入社。 エフェクトデザイナーとして『GIGA WRECKER』に携わる。

各位、様々な役割をこなしつつ

池和田

まずは皆さんのチーム内での役割を教えてください。

小川

本職はエフェクトデザイナーですが、今回の『GIGA WRECKER』ではゲーム内のイベントの演出やグラフィックの監修なども担当していました。

尾上

名刺の肩書きではプログラマーですが、今回はディレクターとメインプログラマーの兼務というような形で、他にはスケジュール管理なども担当していました。

伊藤

プランニング全般を担当しました。全体の仕様設計や、レベルデザインといったものです。こういう敵がいて、こういう動きしますみたいなのだとか。あとはシナリオですね。

池和田

みなさん様々な役割をこなされていたんですね! 特に伊藤さん、ゲームのエンドクレジットでの肩書きは何になっていたのでしょう?

伊藤

なんだったかな…。リードゲームデザインです。

小川

レベルデザイン?

伊藤

それもですね。なんでもっていうか、まあいろんなことをしました(笑)。

池和田

プロジェクトの発起人は、ディレクターである尾上さんなんでしょうか。

尾上

今回は、伊藤と自分の二人で会社に提案をしました。

伊藤

ゲームの内容は二人で話しながら詰めていきました。僕はスケジュール管理や人の指導が苦手だったので、尾上にディレクターをやってもらいました。神輿を担ごうかと(笑)。

尾上

詳細な内容を考えるのも二人で、という感じですね。

全ての社員に挑戦権を「ギアプロジェクト」

池和田

ゲームフリークさんの社内制度である「ギアプロジェクト」としてスタートしたと伺いました。

伊藤

はい、ギアプロジェクトはスタッフ発案のオリジナルタイトル開発を支援する弊社の社内制度で、企画書を提出すると約3ヶ月のプロトタイプ制作期間が与えられる、というものです。

池和田

まずは賛同者を何人か集めないといけないとか?

伊藤

当時は3人でしたね。今は制度が変わってひとりでも提案できるようになりました。

池和田

その変更はどのような理由なのでしょう。

小川

ギアプロジェクトは、シンプルに「面白いものを作れ」っていう主旨なんです。だからデジタルゲームじゃなくて、カードゲーム等でも良いわけです。

池和田

そこまで間口が広いんですね。

伊藤

基本的には進行方法も自由です。3カ月前後くらいのタイミングで「今までの成果を見せてください」というふうになって、プロジェクト化するかどうか経営判断がなされるわけです。厳密に全てが3ヶ月で決まるわけではなく「プロジェクト化はできないけど光るものはあるな。もうちょっとやってみる?」みたいなこともありますね。

池和田

素晴らしい制度ですね! いつ頃制定されたのでしょうか?

尾上

自分が入社した2010年に始まりました。常に新しいゲームを作りたいという気概が創業当時から会社にあったんだろうなと思っていて。ゲームフリークっぽいところが、ギアプロジェクトという制度になったんだろうなという印象ですね。

チーム全員で議論を交わし、より良いものへ

池和田

では、そういった「ゲームフリークさんらしさ」は、このゲームにも表れていますか?

尾上

そうですね。社風として「業種に関わらず企画の内容をしっかり話し合う」というのがゲームフリークらしさなのかなと思っています。

伊藤

結局、良いものを作りたいという気持ちはみんな一緒なので、共同するような体制になりやすい雰囲気はあるかな、という感じです。今回でいえば、パズルがあまりにも量が多くてプランナーだけでは間に合わず、少し手の空いていた人たちに「ギミックのネタを考えてもらえないですか」ってお願いしたりしました。

小川

それでパズルのギミックを私とプログラマーとで考えて。実際に採用されました。

池和田

小川さんのアイディアをプログラマーが実装し、まず試してみたわけですよね?

伊藤

あ、でも最初は企画書を書いてもらいましたね。

池和田

それは完全にプランナーの仕事なのでは(笑)。

小川

そこまでカッチリした企画書ではなく「こんな動きをするよ」ぐらいのことしか書かなかった記憶があります。

尾上

もちろんプランナーが考えた企画意図が第一で、一番尊重されるんですけども、その意図に沿っているかどうか、こっちの方が本来やりたかったことができるんじゃないかみたいなところは、メンバーみんなで考えたり、精査される余地があるって感じですね。

池和田

なるほど。プランナーさんがまずしっかりした土台を作るけど、中身はチームでチェックされ、かつ遊ぶ余地もあるといいう。

伊藤

やっぱり実際に作って触ってみて、そこでみんなの意見を出し合ってより良いものにするっていうプロセスが重要だと思います。

池和田

でもそれは、お互い気をつかいあっていたら実現しにくい部分ですよね。

小川

バチバチですよね?

池和田

んん?

伊藤

自分と尾上は同期なこともありますし、わりと議論というか、口論めいた議論をしたりとか。

池和田

衝突するようなことも…?

尾上

別に衝突しているわけではないんですけど。なんか傍から見るとそう見えるみたいで。バチバチが普通くらいですね(笑)。

伊藤

二人とも、歯に衣着せないものの言い方をすることがあって。議論自体が熱くなってくるときはあります。「大丈夫ですか?ケンカしてないですか?」みたいなことを言われたり(笑)。

池和田

チームにすごく目上の方がいるわけでもないし、そのあたりは風通しがいいというか、やりやすい部分だったんでしょうね、きっと。

伊藤

そうですね。同期で距離感が近かったからこそ、できたことかなとは思います。

独特の世界観はいかにして生まれたか

池和田

ゲームが出来るまでの経緯って様々だと思うんです。世界観がベースとしてまずある場合や、システム先行、あるいはゲームプレイそのものから作る場合もあるし。

尾上

今回は自分がプログラマーだったので「物理エンジンを使ったゲームを作りたい」というところから伊藤と話し始めましたね。あとは「ロボットと女の子が、同時に出るようなゲームを作りたい」ぐらいのフワッとしたものがあって。その頃はまだデザイナーさんがいなかったので、伊藤が女の子とロボットの絵を描いたり、そのあたりが原点です。

伊藤

それが3、4年ぐらい前ですね。

池和田

ロボットと人類の対立という世界観や、イラストレーターのあさぎりさんによる特徴的なルックも当初から想定されていたんですか?

伊藤

敵がロボットというのは、ゲームシステムから逆算して決まりました。物理エンジンを使って物をバラバラと散らばせたい、敵も木っ端微塵にしたいと思ったんですが、人間や動物をバラバラにするようなゴア表現は避けたかったので、敵はロボットにしようと。主人公はほぼ趣味ですが、可愛い女の子にしたいというのがありまして。可愛い女の子もメカ的なデザインもできるデザイナーさんということで、あさぎりさんにお願いしました。

ゲームコンセプトを軸にした世界観設定については、ストーリーの方でも詳しく語っていただいた。

池和田

あさぎりさんと世界観を共有したり、またゲームとして再現するあたりはうまく行きましたか?

伊藤

世界観という意味ではあさぎりさんにお願いする時点である程度決まっていた部分もありますが、実際に話しながら詰めていった部分もあるので一緒に作っていったという感覚です。敵に侵略されたビルに謎の機械がグシャアってくっついてると面白いんじゃないか、とか。キャラクターも事前に、ゲームシステムやシナリオ上必要な要素は詳しく詰めていました。こちらからお渡しした設定を元に描いてもらったものを見て、「このデザインは面白いな。でも設定と少し違うな。じゃあ、ちょっと設定の方を変えちゃうか」みたいなこともありましたね。

池和田

柔軟に進められていたんですね。僕はプレイして、思っていたよりパズル要素が強いな、と感じました。

尾上

実は企画段階では、普通の物理アクションでした。でも諸事情あり、プロジェクトとして動く前に間が空いたんです。一旦考える時間ができて、その間にパズル要素を強くしたり探索要素を入れようと舵を切った経緯があります。

池和田

方針の転換はどのような理由でしょうか?

伊藤

所属部署の部長と話していて「物理でパズルっていうのも面白いんじゃないか」というアイディアがあったんですよね。それから、このプロジェクトがペンディングとなっている間に作っていた『TEMBO THE BADASS ELEPHANT』がわりとオーソドックスなアクションゲームだったので、少し毛色を変えたかったっていうのもありましたね。ただし、パズルとアクションのバランスという意味ではプロジェクトを進める中で難しい部分が出てきましたね。

TEMBO THE BADASS ELEPHANT

赤いハチマキを付けてミリタリー装束に身を包んだゾウのTEMBOが主役の2Dアクションゲーム。セガゲームスとゲームフリークの共同タイトルとして2015年に海外市場でリリースされた。こちらもギアプロジェクト発のタイトルで、ゲームフリークのデザイナー、ジェイムス・ターナーさんがディレクター。

Steam Store

なぜ、ほとんどのステージを作り直すことになったのか

池和田

開発中、その辺りでトラブルがあったのでしょうか?

尾上

いよいよ開発の終盤近くになって、「これでいいんだろうか」って思い始めたんです。結果、ゲームの方向性を大きく変えるような変更を行うことになりました。あの時期はかなり大変でしたね。

伊藤

レベルデザイン的に、例えば「沢山の敵と戦うバトル寄りの場所」「じっくり考えるパズル寄りの場所」みたいに役割を分けて配置していたんですけど、うまく融合しているように思えなくなったんです。両者の役割が別れすぎていたような気がして。それを解決するために、パズルにもアクション性を強くして、例えば早く動かないと地形が落ちて先に行けなくなっちゃうところを作ったりとか、一方でアクション寄りの場所でもパズルの要素を取り入れ、例えばギミックを使わないと敵をやっつけられないような部屋を作り、両者をうまく組み合わせたレベルデザインにしました。

池和田

それは…大変だったとは思いますが、ゲームとしての魅力は確実に上がったわけですよね。反面、難易度も跳ね上がりませんでしたか?

伊藤

なので、チュートリアルというか、段階的に。要素A、B、Cが絡まった複雑なパズルがあるとしたら、その前に単体で、Aを教える場所、Bを教える場所、Cを教える場所。その次に、AプラスBを教える場所、AプラスCを教える場所…というふうに、最終的には結構な難易度のものが出てきても理不尽ではないようにしています。もちろん閃きは必要になりますが、今まで知らなかったことをいきなりやらせることがないようにしました。でも、作ったステージをほぼ作り直したりとか、絵もかなり描き方を変えたりとか、ずいぶん変わりましたね。

小川

背景も仕組みから変えました。スクロールしたときの動きとか。

池和田

遠近によるスクロールのズレ、いわゆるパララックスですかね。

伊藤

Steamでアーリーアクセスを開始するときは「こんなもんかな」と思っていたんですが、結局クオリティに納得がいかなくなったんです。

小川

それからもっと前の段階ですが、自機の挙動を変えたときもなかなか大変でした。

池和田

プレイヤーの動きにも変更が入ったんですか?

伊藤

ジャンプ操作が「なんかストレスたまるな」みたいな。それこそユーザーの意見もありまして。

小川

みんなに言われましたね。

池和田

そうなんですね。僕、すごく良いジャンプだと思いますよ。ちょっとフワッとしてますよね。

伊藤

そう、跳び始めは速くて、ジャンプの頂点を過ぎたら少しフワッとする感じですね。改善の賜物です(笑)。

尾上

でもジャンプ変えちゃうと、今まで作った数値が使えなくなっちゃうという問題があって。

小川

越えられなかったところが越えられるようになっちゃいますよね。

伊藤

挙動を変えたあとに、作ったマップを全部見て、「跳べちゃいけないところ、跳べたりしないよな」みたいな感じで全部確認して。跳べるところは逐一直すっていう。

池和田

大変ですね。

伊藤

でも苦労して直したものも、さっき説明したようにアクションとパズルに融合させようという話になり結局全体を直したわけですから、影も形もなくなっているんですけど(笑)。まあジャンプによる修正は、それに比べたら大した苦労ではなかったくらいなんです。

池和田

困難の連続だったんですね。

伊藤

そうですね。アクションゲームなのでやっぱり基本的には、触って気持ちいい、見て楽しい、解いて達成感がある、やっつけて爽快とか、そういうところを押さえていないと。そこはホントに最後まで、こだわったり悩んだりしました。

これからのゲームフリークを担う

池和田

ちょっと漠然とした質問ではありますが、みなさんが今後、実現したいことってありますか?

小川

私はまだ入社して1年ぐらいで、入社理由も『ポケットモンスター』シリーズを作りたいというものだったわけですが、ギアプロジェクトに入ってみて、新規のIPを作るという熱意や、ギアプロジェクト自体の熱意みたいなものを身近で感じたので、より一層ギアプロジェクトというものを盛り上げていけたらいいなと思ってますね。

池和田

今後も機会があればギアプロジェクトに関わりたい、ということですね。伊藤さんは?

伊藤

弊社では『ポケットモンスター 赤・緑』がヒットして以来、シリーズが続いているわけなんですけど、それと同じくらい愛されるというか、継続的に皆さんからご評価いただけるようなものを作れると嬉しいなと思ってます。

尾上

僕はゲームをプレイしているユーザーが、そのゲームの中でヒーローになれるとか、そういう思いを大事にしつつ、1本のゲームにしたいなと思ってます。

池和田

自分がヒーローになれるようなものを。

尾上

ええ、ゲームフリークの企業理念は「良質な『遊び』を継続的に創り出すことによって世界中の人に楽しさ、面白さ、発見を。そして勇気と希望、やさしさ、夢、冒険心を提供していきます。」です。入社したときは漠然としていましたが、今はなんとなくわかってきたような感じはあって、やっぱりゲームを通じて、勇気とか希望、夢などを与えられる、感じてもらえるようなものを作っていきたい。そういう気持ちがありますね、今は。

池和田

ではそれがギアプロジェクトとしてスタートして、強いIPになれば、もう…。

尾上

完璧ですよね(笑)。

池和田

これからもアップデートが続くということで期待しております。本日はありがとうございました。

プロフィール

池和田 有輔

フリーランスとしてWEB制作・広告制作のキャリアを経て、2013年からRépublique開発チーム(Camouflaj, LLC.)に参加。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に入社後はエバンジェリストとしてUnityの伝道活動に携わりつつ、Made with Unity日本版の編集長をやってます。

GIGA WRECKER

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言語

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