2018.12.07
“これぞLA-MULANA” すべてを込めた続編の開発後記
楢村 匠、蛯原 隆行、鮫島 朋龍
LA-MULANA 2
nigoro

オンラインで知り合った愛好家たちが顔も合わせることなくゲームを作る、なんて話はもはや特殊なものではないのかもしれない。だがNigoroのストーリーは遡ること20年前に始まるのだから、彼らがいかに異質な道を歩んだのか想像に難くない。

MSXに関するコミュニティサイトを作っていた楢村氏が中心となり開発が進められた『GR3 PROJECT』から始まり、メトロイドヴァニアの金字塔となった前作「LA-MULANA」。リリースされた当時はメトロイドヴァニアというカテゴリーも、インディゲームという呼称も一般的に浸透するはるか以前の話だ。

そして長い年月をかけてリリースされた本作『LA-MULANA2』。
この作品は日本から世界に向けて放たれた最新型のメトロイドヴァニアなのか。
それとも、果たして…?

聞き手:池和田 有輔(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)

インタビュー: 池和田 有輔

プロフィール

楢村 匠

NIGOROディレクター。 デザイナーとして働いていた際に仲間のプログラマを集めて趣味としてゲームを作り始め、それが今のNIGOROになる。LA-MULANA2ではグラフィック、レベルデザイン、ストーリー、音楽などを担当。

プロフィール

蛯原 隆行

NIGOROプログラマー。 楢村から声をかけられ共にゲーム制作を行う。そこからメインプログラムを担当し、LA-MULANA2ではシステムプログラムを担当。

プロフィール

鮫島 朋龍

NIGOROプログラマー、兼サウンド。 大学生だった頃に楢村と蛯原が当時開発していたゲームのプレイレビューに誘われ、そこから開発に加わり今に至る。LA-MULANA2ではプログラム、効果音、音楽などを担当。

NIGOROとは、どんなチームなのでしょうか?

楢村

NIGOROっていうのは8ビットを表す256の呼び方をそのままチーム名にしたんです。3Dが流行る前の2Dって、ゲームが1作ごと、1年ごとにどんどん進化していった。あれに魅了されていたので、「2Dがあのまま進化したらどうなるんだろうか」というつもりで立ち上げました。8ビット時代のパソコンゲームを作っていたソフトハウスは、3人だったり5人だったり、もっとひどい時はプログラマが1人で全部作っていた時代だったので、そういうチーム体制のまま続けたらどうなるかというのも、意味として含んでいますね。人数が少ないから、今のゲーム作りのようにはっきり分業する形での作業は絶対できないですし、音を作りつつ、プログラムしつつ、僕だったら絵を作りつつ、マップを作りつつとか。1人が何役もやる、やれるようなチームがずーっと続いています。

NIGOROらしさというのは、皆さんにとってどのようなものでしょうか?

蛯原

まず、他人の真似をやらないところですかね。ある種わがままと言うか、自分らが作りたいものしか作らない。「売れ筋とかそんなもん、知ったことじゃねーよ」っていう、そんな感じですね。

楢村

3人でやってるから、細部まで自分たちの目が行き渡っている。なので、すごく細かいとこまでこだわって作っていて、普通さっと手を抜いて終わらせるところに無駄な動作がいっぱい入ってたりします。例えば締め切りの2ヶ月くらい前、主人公の衣装チェンジのドット絵が終わってなかったんですけど、描いてると楽しくなってきてしまったので、衣装ごとにちょっとした動作変化があったりとか。普通の会社だったら、時間がないとか予算がはみ出ているとかで止められるはずなんですけど、黙ってやったらそれが実装されちゃうようなところがあります。

今作『LA-MULANA 2』をリリースしてみての心境は?

蛯原

実感がまるでなくって…。今でもまだ作ってるような感じです。

鮫島

売れる・売れないよりもやっぱりファンの人に「クソやん」とか言われへんかな、大丈夫かな、みたいな感じでした。あと、変えた部分も結構あるんで、そこらへんはやっぱり不安としてはありますよね。やれることは全部やったので、もう「投げつけるしかないやん」っていう、ちょっと諦めに近いかな。覚悟っていうか悟ったっていうか。もうホンマ「とりあえず終わった!終わったからちょっとしばらくゆっくりさしてね」みたいな感じです。

前作『LA-MULANA』から一番大きく変えたのはどんなところでしょう?

鮫島

パッとプレイしてわかるのは、主人公の挙動だと思いますね。前作はもともとキーボードの操作を前提としてる制御系だったし、プレイヤーにかなりシビアな操作を求めていました。今作はもうちょっとコントローラー寄りにして、例えばジャンプ中ある程度戻れるようにしています。その代わりボスキャラが強烈な攻撃をしてくるようになって、その挙動を使いこなさないと普通にくらうところがあったり。
あとは前作で、はしごを降りる時間をショートカットするために上の方でわざとダメージをくらって落下するテクニックを使う人たちがいたんですけども、今回はしごの途中でもジャンプキーで降りられるんですよ。そういうアクションのクイックレスポンスみたいなところはすごく意識して、拡張してますね。

蛯原

今作は、結構あちこちでスクロールをするゲームになりました。前作は一画面で分けて考えられるような仕組みがあったんですけど、スクロールによって範囲がでかくなりすぎるので、謎が緩くなった。その分、アクションがキツくなったというか、より楽しくなったというか。今作をやる人は、そういうところを見てもらえたらなって思います。

今回の開発で大変だった部分について教えてください。

楢村

一番大変だったのはやっぱり、Unityを使ったことですかね。今まで使ったことがない環境だったので試行錯誤をしながら作るっていうのが、最初は大変でしたね。Unity の本を見たりいろんな人の話を聞くとよく言われる、「まずはちっちゃいプロジェクトから作れ」っていう、アレ本当ですね。僕らはそういうのなしで、いきなりデッカイのを作るから苦労した部分もあります。逆に大変でもUnityで作り続けようと思ったのは、僕らプログラムとグラフィックの修正のやり取りもネットで行うので、そこのやり取りを出来る限り少なくしたかったんですね。

鮫島

前作の時は全部こちら側のエンジンで動かしていたので、楢村が作ったアニメデータやギミックの動作データを、一回プログラムのほうに持ってきて調整して、「こうですよね」って渡したやつをもう一回楢村が見て、みたいなやり取りがあったんです。今回はUnityで全部制御用のプログラムを作っておいて、あとはもう勝手に楢村のほうで作ってくれて、そこらへんはすごい速くて楽でしたね。こっちが見たこともないような制御をされて、「いやいや、それをやられたら困るんです」みたいなこともありましたけど(笑)。

楢村

あとは移植のしやすさとか。つまり「将来的に絶対に楽になるだろう」っていうのを呪文のように唱えながら、「大変だ大変だ」って言ってやっていました。あとは前作の評判があっての今作なので、前作からボリュームを減らせない、手を抜けない物量がやっぱり大変でしたね。

ゲームを作りの楽しさについて教えてください。

楢村

もともと子どもの時からゲーム作りたいという願望があって、絵を描くのが好きだったので、ノートにびっしりとキャラクターとかマップとか、いろんなゲームのアイディアが連なっては作ることなくたまっていて。そういう幼少の頃の影響でしょうかね、ノートにアイデアを書いて、自分の世界を作ってる時が一番楽しいですね。

あとはちょっとゲーム作りとは離れますけども、自分が作り上げた世界とかが、遊んだ人の中で喜んでもらえたりとか、また違う空想を遊んでいる人がしてくれたりとか見てると、やっぱそれも楽しいですね。

鮫島

こんなこともあんなこともやりたいって言ってるときが、やっぱり一番楽しいんじゃないですかね。そこからどんどん作っていくってなると、あれが上手くできないこれが上手くできないが出てきて、「じゃあ、あれを上手くやるためにはどうしよう」っていうのができて、そういうのができていくときは楽しいんですけども、次の「何このバグ、わけわかんねー」っていうのとの表裏一体なので。

蛯原

こんなこと言ったら怒られるような気がするんですけど、手に取ってくれたユーザーが、謎にはまったり、罠にはまったり、そうやって悔しがった時、何か嬉しいっていう気持ちになりますね。逆に難しいように設定してたはずのところをプレイヤーがすんなり抜けてしまうと、ガッカリしちゃったりします。やっぱりユーザーと開発は、ある種、ライバルみたいなものでもあるので。

続編が作られる可能性はありますか?

楢村

『LA-MULANA』続編。販売して、ツイートでも「3待ってます」みたいな感想を書いている人がいましたけど、ないですね。アイディアとかストーリーの展開的にはもう使い切りました。もうこれ以上大きな話は、多分銀河系飛び出すぐらいしないと無理じゃねぇかなって思うので。

僕が、人気があったからシリーズを重ねるという考えはあまり好きではなくて、次々新しいものを作りたいのもありますし。とはいえ、アマチュア時代から数えるともう10年以上とずっと『LA-MULANA』っていう世界に付き合って作り続けてるんで、愛着があるのも確かなので、ほんのちょっとスピンオフのアクションゲームくらいだったら、機会があれば…ぐらいですかね。特に今、そういうネタがあるわけではなくて、「まだまだ続く付き合いだな」くらいに思っています。

鮫島

『LA-MULANA』でナンバリング作るっていうことは、もう俺らがやる仕事じゃないかもねっていうのはありますね。

蛯原

Unityというフレームワークを使ったというのもあるんですけど、ちょっと調子に乗りすぎて、でかくなりすぎて、とても数人で作るゲームじゃなくなってるんですよ。これを続けることは、さすがに不可能だということで。今、現状では、この続きはないと思います。

新作の予定はありますか?

楢村

今作が終わってアップデートが落ち着いて、もちろんコンシューマーの作業とか移植はお願いして、データの修正も可能な限りしたいんですけど、それと同時に企画を進めたいですね。アイデアはいっぱいあるので、それをメンバーと一緒にどこかで集まって話して、「次はこれ作ろう」っていうのを決めるとこからですね。もう、早いこと新しいものは作りたいです。ゲームとして面白いかどうかとかは抜きにして、アイデアだけで言えば、本当にノート何冊分も書けるくらい、ネタはいっぱいあります。1本作るのに4年、5年かけてる場合じゃなく、現役でいられるうちにもっともっと作りたいので、「もっと短い期間で作れるように」っていうのはずっと目標ですね。

ファンに向けてメッセージをお願いします。

鮫島

間違いなく『LA-MULANA』です。実際、「今回結構簡単になったかな」と思いながらテストプレイを始めて、隠し部屋まで全部じゃないにしろマップは知っているし、ボスキャラの攻略も自分で作ってるから分かってるのでかなり有利なんですけど、その状態で45時間かかってクリアできてないですね。だから普通に長いです。マップの規模自体は前作と同じような規模のはずなんですけど、構造的に広い。最後までクリアできたら、自慢できるゲームです。ぜひお楽しみに。

蛯原

まず、「死んでください」としか言えない(笑)。こんなひどいことしか言えないんですけど、『LA-MULANA』ってもともと死んで、そして自分が何故死んだのかを考えて、そして進んでいくゲームなので、「そういうところを楽しんでください」と言いたいです。

楢村

どうしても人を選ぶゲームなので、「遊んでみたら面白くなかった」って言う人もいますし、逆に、もうどっぷりハマってずっと遊んでるっていう人もいます。やっぱり、この世界を気に入って遊んでくれている人がいるからこそさらに広がると思うので、一緒に広めていきたいんですよね。いろんなきれいな宣伝文句並べるよりも、他の人が楽しそうに遊んでるほうが多分、興味が湧いたりするとは思うので、みんなで一緒に広めていきたいなっていうのが一番の思いですね。

プロフィール

池和田 有輔

フリーランスとしてWEB制作・広告制作のキャリアを経て、2013年からRépublique開発チーム(Camouflaj, LLC.)に参加。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に入社後はエバンジェリストとしてUnityの伝道活動に携わってます。

LA-MULANA 2

nigoro
  • アクション
  • アドベンチャー

プラットフォーム

  • Windows
  • Mac

言語

  • 日本語
  • 英語
  • 中国語
  • steam
  • playism

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