結婚と独立とクロッシーロード
私は会社員としてソシャゲ開発に携わりながら、独立して個人ゲームを作るために貯金をしてきました。
結婚したばかりということもあり、独立するからには絶対に成功しなければならなかった。
しかし具体的なゲームの案は定まっておらず、なんとなく視界が曇ってる状態でした。
そんな中、すでに世界中で超ヒットしていたクロッシーロードに出会い、動画広告によるマネタイズ方式と、極めてシンプルなゲーム構造にやられました。
しかし、私がクロッシー型のゲームを作ることにした決め手は、ゲームをまったくしない・しようともしない妻がクロッシーロードにだけは夢中になったということです。
これは、自分が作りたいと思えて、かつ世の中に広く受け入れられるという、まさにスペシャルな条件を満たす方向性だと確信したのであります。

人生で初めて捕まえたオオクワガタ。子供の頃からの夢が叶った瞬間である。
妻に飽きられる
約8ヶ月間の制作期間中、妻のiPhoneには常に最新のビルドを入れるようにしていました。
しかし初めは積極的に意見をくれていた妻も、次第にアプリを遊ばなくなっていった。
感想を求めても『なんとなく飽きた』ぐらいのことしか言ってくれません。制作者として、これは結構こたえる。
2人の人生に関わる超重要な問題なんだから、もっと深く考えて、つまらない理由や改善点をあげてほしいと不満に思った。

違反を取られた上にバーストした実家の車。この日はさんざんであった。
感情をくみとれ!
しかし『これは逆に貴重な状況なのでは?』と考えてみた。
クロッシーロードをベンチマークにしている以上、妻はターゲットとなる顧客層の中心にいる。
そんな妻をテスターとして『制作側』に取りこんでしまうより、あくまで最初のユーザーとして率直な反応を観察した方が有効なのではないか?
無理に深部まで考えさせると、目線がユーザーから制作側に移ってしまい、最終的には作者の私と同化してしまうのではないだろうか?
そこで、根掘り葉掘り聞き出すのをやめて、ビルドをプレイしてもらうたびに『感情』だけを聞き出すことに注力してみた。
『むずかしい』とか『ハラハラしない』とか、至極原始的な感情を、です。
そして感情の『原因』については、あくまで自分で考えて、ひとつずつ対処していきました。

引越しの際に見学したマンションの一室。ピンク色の洗面台が嫌だったのでここには住まなかった。
毒殺学校
それを繰り返すうちに、ついに妻がTIME LOCKERに戻って来た。
空いている時間に自ら進んでプレイするようになり『おもしろい』『たのしい』という感情を引き出すことに成功したのである。
振り返るに、これはTIME LOCKERにとってなくてはならないプロセスだったと思う。
私が一人暮らしだったら、もっとハードなゲームになっていて、多くの人には受け入れられなかったと思います。
また、数年前の私だったら妻の感情を無視していた可能性が高い。
3年間のIT企業生活でソシャゲ開発にかかわっていたことにより『徹底したユーザー目線』という考え方が刷り込まれていたのです。
そういう媚びた姿勢は大嫌いだったが、私には必要だったのである。