ゲームの可能性をアートで拡張「東京藝術大学ゲーム学科(仮)」展

ゲームの可能性をアートで拡張「東京藝術大学ゲーム学科(仮)」展

Unityを使った作品を紹介する「Unity探検隊」。
今回ご紹介するのは、会期の終了した「東京藝術大学ゲーム学科(仮)」展

日本で唯一の国立総合芸術大学である東京藝術大学に「ゲーム学科ができたとしたら?」というテーマのもとに行われた展覧会。本展を運営するのは、東京藝術大学COI拠点、大学院映像研究科、スクウェア・エニックスという教育機関と企業が連携する異色の枠組みは、東京都台東区にある東京藝術大学内の大学美術館陳列館で、2017年7月21日(金)から30日(日)まで行われた。

ゲームに用いられる映像表現は、元を辿ればアートから派生したものも多い。また、ゲームの芸術性を認められてニューヨークの現代美術館「MoMA」に収蔵されたゲーム作品もあるほど。ゲームの表現方法でアート作品を制作する「ゲームアート」と呼ばれるメディアアートのジャンルもあり、アートとゲームの関係は密接だ。Unityを使ったゲームアート作品もここ数年数多く生まれて、美術界隈でもゲームエンジンならではの表現が話題となっている。そして今回の展示は、ゲームを用いてアート作品を作るゲームアートとは逆に、アートの視点からゲーム作品を制作する試みとなる。

本展の展示会場は2階建て。会場内は子どもから老人まで幅広い年齢の客層が集まり、ゲームが体験できるブースはどれも混み合っていた。

1階では映像研究科の修士学生と修了者らがスクウェア・エニックスのアドバイスを受けて制作したゲーム作品たちが展示され、2階ではゲーム制作プロセスを紹介する展示や、スクウェア・エニックスでファイナルファンタジーXVを手がけた第一線のクリエイターの講義や、南カリフォルニア大学(USC)インタラクティブ・メディア&ゲーム学科のアンドレアス・クラツキー教授による4日間のワークショップも開講した。

いちばんの見どころはゲーム作品の展示。大学院映像研究科制作のアニメーション作品から7作品を選び、 既存のアニメーションからゲームを作る「A to Gプロジェクト(Animation to Game)」と称したもの。 制作にあたっては、アニメーション監督、 エンジニア、およびスクウェア・エニックスの第2ビジネス・ディビジョンのメンバーがタッグを組み、 議論を重ねながらおよそ9か月をかけて完成させたという。その中でUnityによって制作された作品からふたつを紹介する。

「見なれぬ儀式」

プロジェクターで映し出されるのは、3DCGで描かれた謎めいた世界。そこに迷い込んだ操り人形のような主人公を脱出させるアクションゲーム。ゲームコントローラーの4つのボタンが主人公の手足に対応していて、押すことで手足が引っ張られるように動く。奇妙な動きをするので、ステージごとにちょっとした操作のコツが必要となるのがこのゲームの面白さ。シュールな世界観は美術学校ならではの発想だろう。

「鞍馬の火祭り」

ヘッドマウントディスプレイを装着して、実在する祭りを元につくられたアニメーション作品の世界に入り込むアドベンチャーゲーム。京都鞍馬の由岐神社で毎年行われる奇祭「鞍馬の火祭」。その期間に宿に閉じ込められた主人公は室内をクリックして、アイテムを手に入れながら妖怪と対話して脱出を試みる。アートアニメの手法で描かれた世界は、世間で主流の漫画タッチのゲームの世界観とは違ったものを構築していた。

元となったアニメーション作品「くらまの火祭」はこちら。

ゲームならではのエンタテイメント性と、アートのクリエイティビティの融合に挑戦した作品は他にも展示され、各々明確なコンセプトが感じ取れる作品たちが並んだ。この展示によって、既存のゲームの枠組みとは違った異色の作品を発表する場が生まれたと言えるだろう。アートによってゲームの可能性が切り開けることが明確になり、次回の展示の開催に期待が高まる。

Credit

タイトル:「東京藝術大学ゲーム学科(仮)」展
会期: 2017年7月21日(金)~30日(日)※7月24日(月)休館
時間: 10:00~17:00 入場無料
会場: 東京藝術大学大学美術館陳列館(東京都台東区上野公園12-8)
主催: 東京藝術大学COI拠点、東京藝術大学大学院映像研究科
共催: 株式会社スクウェア・エニックス
協力: 南カリフォルニア大学映画芸術学科
ウェブサイト:http://game.geidai.ac.jp

「見なれぬ儀式」

予測不能な動きをするキャラクターの制御しきれなさを楽しむゲーム。
薄羽涼彌(ディレクター/東京藝術大学大学院映像研究科修了)
松本風雅(アドバイザー/株式会社スクウェア・エニックス)

「鞍馬の火祭り」

谷耀介(ディレクター/東京藝術大学大学院映像研究科修士課程)
Prasert “Sun” Prasertvithyakarn(メンター/株式会社スクウェア・エニックス)
株式会社アバクス(プロダクション)

Made with Unity - 2017年8月31日