2019.01.25
他のインディゲーム開発者は仲間? ライバル? Strange Telephoneアップデートレポート
yuta
Strange Telephone
HZ3 Software

Strange Telephoneは不思議なアドベンチャーゲームだ。
6桁の電話番号を入力し、電話をかけることでプレイヤーは奇妙な世界に誘われる。

都市伝説や怪談話のように噂話をシェアすることで世界がシェアされ、プレイヤーは緩やかなつながりに身を置くことになる。それこそが開発者yutaさんの目指した物語の形だということが去年のSense of Wonder Nightで伝えられた。

広く賞賛を得た本作は、Unityをベースにすることで大きくアップデートされた。
久しく遊んでいなかった方も、これを機会にまた不思議な世界を体験してみてはいかがだろう。

インタビュー: 池和田 有輔

プロフィール

yuta

1991年4月2日生まれ。学生時代にiアプリの開発を始め、現在では主にPC・モバイル向けにゲームの開発を行っている。プログラム、ストーリー、グラフィック、サウンドを基本的に一人で制作し、独自の世界観を表現。代表作はワールド自動生成型2Dアドベンチャーゲーム『Strange Telephone』。

待望のアップデート、内容の変化は?

池和田

『Strange Telephone』はバージョン2.0からUnityになりました。バージョンアップでエンジンが変わるってかなり珍しい例だと思うんです。どのあたりが最も変わったポイントでしょうか。

yuta

操作面やキャラクターたちの反応、それからエフェクト周りなど、全体的に大きく進化しました。わかりやすい部分だと、主人公のジルの動きですね。普通に歩けるようになりましたし、画面の端っこまでいくと隣のワールドにも歩いていけちゃう。この点は要望が多かったんですよね。

池和田

おー! 自由に行動できるんですね。

yuta

それからオブジェクトに近づくとグラハムから「?」が出てきて、なにかあることを教えてくれたり。アイテムで言えばカテゴライザーという移動先の概要がわかるアイテムがあったんですけど、それがだいぶ使いやすくなりました。

池和田

この文字列を記憶しなきゃダメだったけど、ダイレクトに電話ができるようになったんですね。これは嬉しい。ところで『Strange Telephone』はストーリーラインというか体験として、抽象的な部分がありますよね。ゲーム内でのパートナーでもあるグラハムがどういう存在なのか、とか。

yuta

グラハムについては「ストーリー上ある必然性があってこの姿をしている」というのが僕の中ではあるんです。それは一切公表してないんですけど、99%ぐらいまで読み解いたプレイヤーがTwitterに当時1人いて。考察力がすごいなって思いましたね。

池和田

それは開発者冥利に尽きますね。

yuta

ただ、「意味わからない」っていう人がほとんどなので、今後もうちょっとわかりやすく、文章としてヒントを各所に散らばせようと思っています。

開発者はパブリッシャーをどのように決めるべき?

池和田

今回、もう一つ変わったこととして、PLAYISMさんというパブリッシャーが付きましたよね。どういうきっかけで実現したんでしょうか。

yuta

初めてインディーゲーム系のイベントに出展したのが、2015年のBit Summitだったんですけど、当時からPLAYISMさんは声をかけてくださっていました。そこからだいぶ時間がかかり、2017年の1月にリリースしたところ、すぐまた連絡をいただいたので「じゃあお願いしてみようかな」と思ったんです。

リリースしてみて、Steamで出したいなと思ったときにパブリッシャーさんの力を借りたほうが絶対やりやすいなと思ったのが要因のひとつ。あとはプロモーション周りの負担を考えてですね。イベントのたびに準備するものがフライヤー、グッズ、ポスター…って色々あり、ゲーム開発の時間を削るしかなかった。PLAYISMさんは、そのへんのプロモーションを海外含め一生懸命やってくれるだろうと思い、他の面も含め総合的に判断した上でお願いしました。

池和田

今まで多くのイベントに出展されてると思うんですが、基本的には手伝ってくれているんですか?

yuta

PLAYISMさんのブースで展示があったときは、という感じですね。去年の東京ゲームショウでも別のブースに出したんですけど、事前にポスターのデータとチラシを送っただけで、あとは当日全部準備してくれました。PLAYISMさんは老舗というか、インディーゲームを知ってくれているので、安心感があります。インディーゲームって、どうしてもこだわりが強いし延期も多いのですが、そのあたりの理解がないと、ややこしくなると思っていて。パブリッシャーがいてくれた方が絶対いいと思うんですけど、しっかり選ぶのはすごい大事だと思ってます。

池和田

そのためにはまず組む目的を明確化することですよね。

yuta

そうですね。僕はゲーム内容にはそんなに口を出してほしくないんですけども、内容のアドバイスをくれるところがあってもいいと思ってます。それを必要としている人にとっては恩恵がありますから。

『バタガチャ!』で感じた小さく作ることの価値

池和田

yutaさんは『バタガチャ!』というシンプルなゲームもリリースされましたが、あれは短期間でババッと作ったような形ですか?

yuta

そうですね、『バタガチャ!』はドアをバタバタ閉めていく、あのメインシステムを5時間で作っています。「#5hGameDev」っていうタグを自分で作り、呟きながら作ったところ反応がすごく良かったので、2週間くらいかけて完成度を上げ、リリースしました。

そういうカジュアル路線は僕の中で初めての試みだったんですが、大作は何年も完成しない状態が続くのは精神衛生上良くないので、完成させる・できるものでモチベーション上げるみたいな方法としては良いと思っています。5時間だったらご飯も食べずに集中力を保てますし(笑)。インディゲームには興味ない人も『バタガチャ!』好きって言ってくれる人が結構いて、反応が嬉しかったです。

池和田

ついプレイしてしまう魅力があると思うんです。

yuta

今後は反射神経を一切使わないモードとか、ローカル物理対戦というのを実装したくて。ひとつのスマホ画面を半分に分けてバタバタしていくとか、ちょっと考えています。友達同士で盛り上がるかなと。

池和田

規模の大きいゲームで実験的なことをするのは勇気がいるけれど、小粒なら出来る。そういう考えもありますか?

yuta

それはとても大きいですね。Unityのノウハウがまだまだ少ないので、『Strange Telephone』の2.0を出す前に一回リリースまでたどり着くところまでやらないとちょっと怖いと思っていた部分もあります。結果として、機能、タッチ操作、解像度の調整とか全部『バタガチャ!』で作ったものを『Strange Telephone』の今作っているバージョンに流用したりしてるし、作ってよかったと思ってます。

「個人にファンが付いた時代が復活するといいなと思っています」

池和田

yutaさんが最初にゲームを作り始めたのっていつ頃だったんですか?

yuta

中学2年生ぐらいのときですね。ガラケーの時代で、docomoのiアプリが最盛期でした。当時STG-CIRCLEっていうiアプリがあって、ドットを絵を打ったりスクリプトを組めて、シューティングゲームを作ることができたんです。元々絵を描くのは好きだったんですけど、それがきっかけでドット絵を打ち始めたり、ゲーム開発を始めました。

その後は自分のサイトに本の中身を見様見真似で写したJavaのプログラムを改造してオリジナルのゲームを作りアップロードして、アプリゲットというサイトにリンクを載せるみたいなことをやったり。

池和田

作ったものを友達に見せたりとかもしました?

yuta

もちろん友達にもやってもらいましたけど、やっぱり当時からネット上の人の反応をもらうのが楽しかったですね。掲示板に「アップロードしました」って書いたり、今とあんまりやっていることは変わらないかな(笑)。

池和田

そのころの仲間とは今でも交流があったりするんですか?

yuta

はい、一部の方とはいまだにつながりがありますね。プログラミングを全て教えてくれた師匠みたいな人がいて、その人とは10年近くの知り合いです。最初はビビりながら歌舞伎町の飲み会に遊びに行ったりして。その頃はまだ高2ぐらいで、お酒は飲めないのでジュースで乾杯して。メッチャ怖かったんですけど、いろいろな話聞いて。

池和田

収入を得るとかそういう言う話ではなくて、サークルみたいな感じでやっていたんですね。

yuta

当時は完全に趣味でやっていましたね。みんな好き勝手なゲームを作っていて、今のインディー以上に個人に対しての意識が強かったと思います。ゲームを見れば「○○さんの新作だ」って分かったんですよ。個人にファンが付くっていう状況が当時はあったんですよね。僕はまたそういう時代が復活すればなあ、と思いながら活動しています。

楽しさと辛さ、循環する創作活動

池和田

1人で作りあげるということには強いこだわりがあるんですか?

yuta

ずっと1人でやっているので、それが当たり前っていう考え方かもしれません。ただ、できないところはもちろんあって、例えば僕は「k8x12フォント」っていうドットのフォントを使わせてもらってるんですけど、絶対に僕ができるレベルじゃない。門真なむさんという方が作者で、僕はムチャクチャリスペクトしてますね。

池和田

『Strange Telephone』のメインフォントですよね。僕もすごいなあと思ってました。鉈っていう漢字がギリギリ読める感じとか。

yuta

すごいんですよね、あのサイズで。しかも門真さんが、『Strange Telephone』エディションを作ってくれたんですよ。電話番号のアスタリスクの形が、海外版でちょっと上に表示されているやつだったので、あれを日本版でちゃんと中央にしてくださって。だから絶対全部自分でやるというわけではなく、他にもっと理想に近いものがあれば他の方の素材を使わせてもらいます。ただ、基本的に音楽とグラフィックに関しては、自分で作りたいという気持ちが強いです。

池和田

音楽も自分で作られていたんですね。

yuta

僕が影響を受けた『ゆめにっき』のファイルを研究してたんですけど、ほとんどの曲が1秒以下なんですよ。それをひたすらループして曲として成立させている、そのミニマムさが面白いなと思って。僕のはもうちょっと長いんですけど、基本ループでしか作ってないので、作ること自体はそう大変ではないです。聞いたら気持ちいい、ずっと流れていても気持ちいい曲を目指してます。

池和田

作業環境は何を使っているんですか?

yuta

『Strange Telephone』に関しては全部Garage Bandです。音源はプリセットとMagical 8bit Plugっていう矩形波とか三角波とかの8bit音源が作れる無料のプラグインです。

新作の『Parasite Seed』に関してはiPhone版のKORG Gadgetです。寝ころがってリラックスしながら作っています(笑)。ジャズを作れって言われても絶対作れないんですけど、アンビエントでゲームの環境音とかBGMとして、自分の気に入る、場面に合った音を選んで作るのが楽しいですね。

池和田

プログラミングからグラフィック、サウンドまでいろいろなことをやってますけど、どれが一番楽しいですか?

yuta

全部楽しいんですよね。僕、結構サイクルを回していて、曲作っていて辛くなったら絵を描いて、絵を描いて辛くなったらプログラムやって、プログラム辛くなったらストーリー考えて、ストーリー辛くなったら音楽作って。創作の輪みたいに。

池和田

辛くって言うとネガティブに聞こえるけど、「飽きたら」じゃなくて?

yuta

「飽き」って感覚とちょっと違う気がします。

池和田

辛いほうなんだ。

yuta

辛い。もう、例えばバグが出たときに、全くうまくいかなくなったらそれはどうしようもないんで、もうわけのわからない絵を描いて、脳にたまったものを全部放出するんです。曲もそんな感じですね。プログラムだけはどうにもならないので、落ち着いたらもう一回冷静に見直すしかないんですけど。部屋の片づけとかするのに近いかもしれないですね。今日の作業あるけどとりあえず片づけるか、みたいな(笑)。

他のインディゲーム開発者は仲間? それともライバル?

池和田

インディゲーム開発者さんてTwitterで結構仲良くつながってたりするわけじゃないですか。yutaさんはそういうコミュニティに対する帰属意識はありますか?

yuta

僕自身は共同体という意識はそんなにないですね。もちろん友達としてご飯に行ったりとか、一緒に作業したりとかしますけど、結構みんな言ってることバラバラなんですよ。結局個人なので、その人が生きるか死ぬか、やり方も全然違いますし。

池和田

じゃあ「仲間」と「ライバル」という言葉のうち、より近いと思うのは?

yuta

どちらかと言うとライバルですね。もちろんダウンロード数が伸びたら「おめでとう」って言いますけど、そこには悔しさもある。お互いをライバル視しながら良い作品を作っていこうってなっていると思いますね。

池和田

では、特にライバルとして意識している人はいますか?

yuta

立場が近いという意味ではhako生活さんだと思います。hako君は理論からしっかり固めてくるタイプですね。僕は結構直感で適当にやっちゃうんですけど。

池和田

hako生活さんは『Strange Telephone』のクレジットでもスペシャルサンクスとして載ってましたよね。昔からの友達、知り合いみたいな?

yuta

知り合ったのは2年前ぐらいですね。開発環境が一緒で年代も近く、それでつながった感じです。あとはおづみかん君とかちょっとヤバいですね。

池和田

僕もおづみかんさんのtwitterはよく見てるけど、成長度合いがすごいですよね!

yuta

最近も仲良くご飯行ったりしましたが、まだ若いのにあの本数をしっかりしたのを出せるのは、やっぱすごいなと思っています。あとは、『SOULLOGUE』とか『バトルーン』のはちのす君。彼は完全に天才なので、尊敬しています。どちらかというと僕は同年代かちょっと下くらいの世代がちょうどいいライバルになっている気がしていて。

池和田

年上にはそういう意識が向きにくい?

yuta

年上の方になると既にしっかりした作品を作られている人が多いし、ライバル視みたいなものはあまりないんですよね。年下や同世代のほうが刺激になります。みんな才能がすごいので負けてられないなと。ただ影響を受けるだけでなく、サポートもしっかりしたいです。その人たちが辞めちゃうのは嫌なので、自分が特攻して経験したことは話していますね。失敗したことも含めて。

池和田

みんなでつながったりとか、失敗を共有したりとか、僕の勝手なイメージかもしれませんが、yutaさんはそういう機会やコミュニティを作ることを周囲から期待されているような気がします。

yuta

僕としてもやってみたい気持ちはありますが、ゲーム開発を優先したいし「どっちもできるのかな」って思っていて。みんな基本的に個人というか小規模なので、うまくまとまるのかどうなのかわからないですし、今はとりあえず自分と身近な周りの人たちのことで精いっぱいなんですけど。

ただ、出展できるところとか、多くの人に触れてもらえるチャンスみたいな場所。僕自身もBit Summitで初めて出展して、いろいろな人に知ってもらえたので、そういうイベントをいつかやってみたいな、とは思っていますね。

プロフィール

池和田 有輔

フリーランスとしてWEB制作・広告制作のキャリアを経て、2013年からRépublique開発チーム(Camouflaj, LLC.)に参加。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社に入社後はエバンジェリストとしてUnityの伝道活動に携わりつつ、Made with Unity日本版の編集長をやってます。

Strange Telephone

HZ3 Software
  • カジュアル
  • アドベンチャー

プラットフォーム

  • iOS
  • Android
  • Windows

言語

  • 日本語
  • 英語
  • 中国語
  • appstore
  • googleplay
  • steam

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