2019.02.27
普通の大学生だけど、ゲーム機でゲーム出してみた!
クルステ
PHRASEFIGHT
超OK

普通の大学生だけど、ゲーム機でゲーム出してみた!

こんにちはクルステです!
おそらく世界一ふざけた名前のインディーゲーム開発スタジオ「超OK」の代表をしています。

超OKは2018年12月、初めてのコンシューマーゲーム機向けタイトル「PHRASEFIGHT」(フレーズファイト)をリリースしました。
フレーズファイトは音楽格闘ゲームです。
ふたりのキャラクターが互いにパンチやキックを繰り出し合い、そのリズムの正確さで勝敗を決めます。
動画を見るとわかりやすいと思いますので、動画をどうぞ!

とても面白くて楽しいゲームなので、ぜひ周りの人と盛り上がっていただけたら嬉しいです!

さて、このゲームが完成するまでに、いろいろなことがありました。
今回はそれについて書いていきたいと思います。
よろしくお願いいたします!

なぜ音ゲーと格ゲーを?

本作のそもそものはじまりは「音楽ゲームを作ろう」ではなく、「わたしにもできる格闘ゲームが欲しい」という思いからでした。
ご存知の通り格闘ゲームは、対戦を成立させるために、覚えておくべき情報が比較的多いジャンルです。
わたし自身、多くの知識と地道な練習によって成立する格闘ゲームのスタイルは大いにリスペクトしていますが、それと同時にこうも思いました。

「頭をカラッポにして殴り合えるゲームって作れないかな?」

そんなゲームを作るには、いったいどうすればいいのでしょう?
どうしたらいいと思いますか?
音楽ゲームと合体させるというのはどうでしょうか?

企画書?

ここでようやく「音楽ゲームの操作系で、格闘ゲームっぽいことをする」というアイデアが出てきます!
細かい要素などは現在と違うところもありますが、ひとまずゲームの大枠は見えていると思います。

・(押し分け、同時押しなどを求めない限り)ボタンひとつで完全に遊べる。方向入力すら不要。
・2人のプレイヤーに交互に手番が回ってくるので「初心者が上級者を殴れている瞬間」が必ず生まれる。
・楽曲の終了時にたくさん押し込んでいた方の勝ち。(体力の概念がない)→ 初心者が「瞬殺」されることがない。

これだけでもいい感じですが、大きな特徴がもうひとつあります。

・やっていることは「対戦」だけど、2人が協力して「合奏」している気持ちになれちゃうかも?

そうです!「戦い」の枠を超えたところに遊びがあるんです。
これはちょっと面白いことになるんじゃないか?と思いました。

しかし、すぐに「よし、これ作ろう!」となったわけではありません。

なぜかというと、プレイ環境を整える時点で敷居が高いのではないか?という不安が払拭できなかったからです。
コントローラーを複数用意して、PCの前に集まって遊んでくれる方もいなくはないでしょうが、このゲームにはもっと気軽にテキトーに接してほしいな~という思いがありました。

また、一緒の空間を共有して、みんなで盛り上がってこそのゲームだと思ったので、オンライン対戦の可能性も最初から除外していました。
(技術的にわたしには実装が難しそうだったからというのもあります)

そんなわけで、このアイデアはいったん保留ということになっていました。

Nintendo Switch登場!

ところが、それからしばらくして、驚くべきものが出てきました。
「Nintendo Switch」です。

Switchが初めて公開されたときの映像では、この時点で「1台のゲーム機から2個のコントローラーが分離して、2人で遊べる」様子が映っています。
ゲーム機が1台あるだけで、「2人がそれぞれコントローラーを持って、ゲーム画面の前にいる」環境を作れるんです!

Switchが1台あれば、2人プレイの環境が整います。

おまけに「Switchは、小規模な開発者でもゲームを作りやすいプラットフォームになる」という情報も出てきました。
「これはいけるんじゃないか?」と思ったので、Switchでのリリースを目指して作り始めることにしました!

もちろん、当時はコンシューマーゲーム機向けに開発する方法など全く知りませんでした。
ですが、Unityはいろいろなプラットフォームにリリースできるので、Switchにもリリースできるんじゃないか?と思っていました。
今にして思うとなんつー向こう見ずなスタートだという感じがありますが、最終的にはその通りだったので結果オーライということで!

もっと優しく、もっと楽しく

とりあえずPC上で動いているものを作ってみました。
骨格は音ゲーなので、面白くないはずはなかったです!

開発最初期のスクリーンショットです。

ただ、「もっとなんかできるな」と思ったのも確かでした。
そこで、ルールが複雑にならないように気をつけつつ、当初のコンセプトである「間口の広さ」「合奏する楽しさ」をアップさせる要素を入れていきました。

まず、楽譜の難しさが変動するようにしました。
最初は「EASY」から始まりますが、プレイが上手ければ上手いほど、「NORMAL」「HARD」…と難しくなっていきます。

EASY、NORMAL、HARD…楽譜の難しさは常に変化します。

また、すべてのキャラクターに4つの技を持たせ、技によって音色が変わるようにしました。
さらに、入力の指示がないタイミングでボタンを押してもいいことにしました。
好みの音色を持ったキャラクターを選び、好きな時に、好きな音色を鳴らして遊ぶことができます。

変な技の数々を駆使して戦いましょう。駆使しなくてもいいです。

一方で、キャラクターや技の違いによる攻撃力の差や、追加効果などは一切設けませんでした。
これは実装が難しかったとかではなく「いらないな」と思ったからです!

限られた曲数を遊びつくす

わたしは過去、すべての楽曲を自力でまかなってゲームを作ったこともあります。
しかし「音楽ゲームとしてのプレイに耐えうる楽曲」を作れる自信はありませんでした。
さいわい、かつて音楽関係のコミュニティに出入りしていた経験があり、そのツテをたどってコンポーザーの方々にご参加いただけることになりました。

しかし、それでも「曲の多さで勝負はできない」ということは最初からわかりきっていました。
そこで「1曲1曲の存在感を濃くする」という作戦をとることにしました。

具体的には、曲数(8曲)とキャラクター数(8人)を同じにし、1対1で対応させることにしました。
「それぞれのキャラクターが、『持ち曲』をひとつ持っている」というイメージです。
ひとり用モードで対戦相手となるコンピューターは、みんな自分の持ち曲で勝負を挑んできます。

楽曲の数=キャラの数。すべてのキャラクターに持ち曲があります。

また、楽曲は「ショートバージョン」と「フルバージョン」から選べるようにしました。
フルバージョンは一般的な音ゲーの1プレイに比べてかなり長いので、ガッツリ対戦したい時に選ぶといいと思います。

曲名に「フル」とついていればフルバージョンです。

全体像をつかむんだ!

ゲームのコアの遊びができたので、次はゲームの全体像が見えてこないといけないです。

本作のゲームシステムは、コンピュータープレイヤーを作るのがすごく楽です。そこで、

・リーグファイト(1人用。次々に出現するライバルを倒していく)
・フリーファイト(1~2人用。自由な設定で遊べる)

という2つの軸を用意しました。

「これだけだとゲームの中をループさせるパワーが足りないな」と思ったので、キャラクターの技の情報が見られるギャラリーを作りました。
リーグファイトをクリアするたびに、使用していたキャラクターのギャラリーがアンロックされます。

コレクション要素的なものです。

また、「どハマりしてくれる人がもしいたら、そのどハマりに応えたいな」と思ったので、リーグファイトではスコアアタックもできるようにしておきました。
このスコアはかなり厳密にカウントされ、ランク評価もつきます。

好きなだけやり込んでください。

さて、ここまででゲームの全体像が見えました。
全体像が見えたということは「あとコレとコレとコレと…をやったら、完成!」というのが見えたということです。
もちろんゲーム開発には予期せぬトラブルがつきものですが、とりあえずざっくりは見えたといえます。
あとは、この「完成へのチェックボックス」を埋めていけばいいということになります!

このような作り方は、完成する確率は上がると思いますが、同時にちょっと機械的な感じもします。
テキトーに気の向くままに作っていって、「あ、できた」と思ったら終わりにする…なんて作り方がしたくなる時もあります。
ですが、その感じでゲームを完成させるのはなかなか難しいですね。

イベント出まくり大作戦

あとは完成に向けて突っ走るだけですが、黙々と作っているだけではつまらないので、イベントに出ていきます。

イベントに出ると、

・自分のゲームのことを知ってもらえる
・自分のゲームが遊ばれているところを見ている中で、ゲームの改善すべき点がわかる
・年に数回のペースで、開発に「暫定締め切り」的なものが生まれる
・非日常な体験ができて、単純に楽しい

など、いいことがたくさんあります。

全国エンタメまつり2018にて。

個人的には、いつも平面のスクリーン上で展開されるゲームを作っているので、設営という形で物理的なモノづくりができるのも楽しみのひとつです。

東京ゲームショウ2018にて。

東京ゲームショウでは、そもそも人出がすごかったというのもありますが、なんかめちゃくちゃウケたのでよかったです。

未知の領域、ゲーム機移植へ

開発を始めた当初は、「パブリッシャー」という概念自体を知りませんでした!
なので「イベントに出ていれば、なんかいい感じのことが起こってSwitchで出せるようになるんじゃないかな~」という認識でいたのですが、いつまでたってもなんかいい感じのことは起こりませんでした。

でも、どうしてもSwitchで出したいので、インターネットで調べたところ、
「学生が完全に自力でSwitchに出すのは、まだなかなか難しい」
「『パブリッシャー』に協力してもらえば、いける…かも?」
ということがわかりました。

そこで、一番話を聞いてくれそうなパブリッシャーに「わたしはSwitchによく合うゲームを作っているので、Switch版を作らせてください」(要約)というメールをしてみました。そこが、Switch版「PHRASEFIGHT」のパブリッシャーであるPlay,Doujin!です。

現在、Play,Doujin!のトップバナーに掲載されています!

何の実績もない普通の大学生の話をそもそも聞いてくれるのか分からなかったので不安でしたが、とにかく快諾いただき、Switch版を作れることになりました。

こうして、講義がある日は大学に行き、ない日は家でゲームをSwitchに移植するという意味不明な生活が始まりました。

いわゆる「おすそわけプレイ」機能はもちろん実装しましたが、Switchを見ているうちに「これ、1台を2人で持ってもいいな」と思ったので、そういう遊び方もできるようにしました!

開発中は「カップル持ち」と呼んでいましたが、カップルがテストプレイしたことはありません。

そうこうしているうちに完成したので、リリースすることにしました!無事に発売されたのでよかったと思いました。

もはやeショップに自分のゲームがあることが「日常」です。人間は何にでも慣れます。

今後について

普通の大学生のよく分からない体験談に長々とお付き合いいただきありがとうございます。
「めちゃくちゃかよ」という感じのところも多々あったかと思いますが、これからゲーム作りを志す方、今まさにゲームを作っている方に「自分にもできるかも」という気持ちを持っていただけたら嬉しいです!

今後についてですが、長い間の目標であったコンシューマーゲーム機でのリリースを達成してしまった以上、もうやりたいことはないのでは…と思っていましたが全然そんなことはありませんでした。
むしろ、本作を作ってみての反省を活かして、あんなことができる、こんなものも作ってみたい…という気持ちでいっぱいです。
これからもいろいろなゲームを作ったりしていこうと思っているので、よかったら応援してください。

ありがとうございました!

プロフィール

クルステ

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科4年 (2019)
おそらく世界一ふざけた名前のインディーゲーム開発スタジオ「超OK」代表。
2018年末、初のコンシューマーゲーム機向けタイトル「PHRASEFIGHT」をリリース。

PHRASEFIGHT

超OK
  • リズム
  • ファイティング

プラットフォーム

  • Windows
  • Mac
  • Nintendo Switch

言語

  • 日本語
  • 英語
  • nintendoeshop

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