2017.06.02
かくして飛竜は大空を往く
渡部 晴人
ガンナーオブドラグーン
サークルハイドレンジャー

「変態プレイ環境」から始まったガンナーオブドラグーン構想

 2012年のこの時期、僕はあるゲームを楽しみにしていました。それは今から見ても珍しいKinectをフルに使ったハンド&ボディトラッキングで遊ぶ3Dシューティングゲームで、しかもドラゴンに乗って飛び回るという最高の題材でした。

 当時の僕はそのゲームを最高の環境で遊びたいと思い、ゲームの世界に没入するためディスプレイは普通の平面液晶ではなくソニーの有機ELヘッドマウントディスプレイHMZ-T1を被り、そしてパナソニックの健康用ロデオマシンJOBAに乗り、ゲームと同じ乗馬体勢で遊ぶという構想を立ててソフトの発売を心待ちにしていました。しかし、発売を1週間以内に控えた2012年6月、肝心のソフトの無期限延期が発表されました。のちに次世代機でそのゲームと同名のゲームが発売されましたが、Kinectの操作は排除され、従来のシューティングとほとんど変わらないゲームパッド操作になってしまったため、構想通りのプレイをする事は出来なくなってしまいました。

誰でも手を使ったゲームを作れるように

 その他に私事でも色々あって僕にとってはトラウマそのものな(今見たら本厄だった)2012年ですが、いい事もありました。まず一つが2012年の5月に発表されたLeap Motionです。全身を取れたKinectと違い手に特化し、指単位までトラッキングできるLeap Motionは非常にコンパクトかつリーズナブルで発表当初から注目を集めていました。これは絶対面白い!と思って予約だけではなく開発者登録も行って、2013年7月の正式発売前に開発キットが届きました。

Leap Motionの初出プロモーションビデオ

 そしてもう一つが2012年8月にKickstarterでクラウドファンディングを行ったOculus Riftです。これは元々買おうとしてたHMZ-T1よりも倍以上視野角が広い上、低遅延の方向トラッキングも備えている初の低価格VR HMDでした。当時は今から見ると超円高の時期で送料込みでも300ドルの開発キットが3万を切ったため、初めてKickstarterでBack(支援)を行いました。OculusのKickstarterは推薦者も豪華で、ValveやJohn Carmackと言った顔ぶれの中にUnity創業者のDavid氏も顔を並べている信頼できるプロジェクトでした。その後KickstarterでBackした多くのクラウドファンディングの結末を見ると、Oculus RiftのKickstarterは奇跡のようなプロジェクトだったと思います。

Oculus RiftのKickstarterページ(Kickstarterのレイアウトも古い)

 この2つが完成して発送された2013年頃、僕はドラゴンに乗りたかった記憶を封印しOculus RiftとLeap Motionを組み合わせたゲームを作ることに全力を投じ、その時に作ったのがコミックマーケット84で頒布した宇宙空間の3DシューティングPerilous Dimension(現BLAST BUSTER)です。Leap MotionとOculus Rift前提に作ったゲームを有償で物理配布するという無謀な行為は恐らく世界初の試みだったと思います。余談ですがPerilous Dimensionという名はコミックマーケット申し込み前の2013年正月に、「イニシャルがPDになるようにしよう」と英単語辞書を開いてゲームっぽいワードをでっちあげたものです(そもそも申し込み時はアクションのつもりだった……なんでPDなのかは想像してください)。なので後によりゲーム内容を表すタイトルとしてBLAST BUSTERに改題しました。Leap Motionで両手をトラッキングして最大10点の自動発射マルチロックオンレーザーを撃ちまくる体験はかなり好評で、2014年には何故か窓の杜ゲーム大賞を頂いてしまいました(Papers, Pleaseと同着、アスタブリードやクロワルールを差し置いての受賞という本当に何故なのか未だに分からない受賞)。

ディスプレイにそのまま2眼画面がミラーされていた時代の遺物

布石が積まれていった2014年前半

 Perilous Dimensionを初めて頒布して少し経った2013年後半、Razer Hydraを作ったチームが画期的なデバイスを発表していました。それはなんと磁気式のポジショントラッキングがあるものの有線式コントローラだったRazer Hydraとは違い、完全無線でポジショントラッキングが出来る非常に画期的なデバイスでした。HTC ViveやOculus Touchが「発表」されたのが2015年ですから、そのデバイスが当時どれほど画期的だったか想像に難くないと思います。

 発表が確実視されていたPlayStation VR(Project Morpheusという名前でした)、Oculus Riftの第2世代開発キットを見に行くのと、当時既にFacebook友達になっていた気さくな若者のパルマー・ラッキー会いたさがあり、トドメにGOROmanさんと2014年2月に飲んだ時に促されたのをきっかけにGDC2014へ自腹と有給を使って渡米したのですが、そこでもその画期的なデバイスは高いトラッキング性能を誇っており、「これは予定通りに2014年7月に出荷されそうだな」「遅れても年内には届くな」と当時の僕は確信しました。

 確信を得たGDC2014から10日間のVR界隈は色々な事がありまして、つい先週GDC2014のパーティで飲んで会場でインタビューもしたOculusがFacebookに買収されたり、ドワンゴの会議室で1日VRオンリーのLT大会をやったり、現在株式会社ハシラスをやっている安藤さんや株式会社桜花一門をやっている桜花一門さん(パワーワードだ)に加えてVRアドベンチャーゲームの「Project LUX」や「星の欠片の物語」の開発を担当しているフォージビジョン株式会社の長谷川さんといった錚々たるメンツが開発したHashilusがお披露目されたり、大きな事が色々とありました。僕はその頃あまり大した事をしておらず、自腹と有休を使って4月初旬のUnite Japan 2014にDK1/2対応版のPerilous Dimensionを出展したり、Unite会場で初めてやったHashilusが面白かったので持ってきたDK2用SDKで1日目にHashilusを対応させたりといったくらいの事しかできていませんでした。

竜が目覚める時

 その後の僕は「みんな凄いなー」と黄泉平坂のある島根県から地上を眺めながら日々を過ごしていましたが、2014年の6月に公開されたデジゲー博2014のサークル募集要項にこんな画像が掲載されていました。

デジゲー博2014で新設されたフリースペースの展示例

 ゲームの展示・即売会は通路側に机を置いて来場者の方々と対面で向かい合うのが普通で、ゲームの展示・試遊体制もそれに合わせた事しか出来なかったんですが、このフリースペースで申し込むと自由にモノを配置できて「JOBAのようなもの」も使っていい……2014年11月までなら「2014年7月発送予定のあのコントローラ」も届いているはず……馬ではなくJOBAに合った動物……そう考えながらピンと来た僕は封印していた過去の記憶をサルベージし、「ドラゴンに乗って銃を撃つゲーム」の構想をデジゲー博に応募しました。この時の僕は既にフリースペースがあるのに普通の展示を応募する方が失礼に当たるという境地に至っており、デジゲー博2013で展示したPerilous DimensionあらためBLAST BUSTERを出す事は完全に選択肢から外していました。どうせJOBAを使うならHashilusで使われているマイコン制御で本体スイッチを自動押下する方式のJOBAを使いたい、という事で申し込み前に安藤さんに貸してもらえないか相談したところ快諾を頂き、デジゲー博で使うJOBAはひとまず確保できました。

 しかしこの後大きな問題が発生します。

例のコントローラが当初予定の7月どころかデジゲー博直前の10月になっても来ない

 この後、僕が何をどうやって「手に持った銃」をVRに持ち込んだのかは当時の告知記事をご参照ください。全ては2012年のあの頃から始まっていました。

11月16日は秋葉原UDXで蒼いドラゴンに乗ろう!

デジゲー博前のプロトタイプ版のキャプチャ。ちなみに夕焼けライティングのせいでそう見えないけど今も蒼いです、確か。ちなみにガンナーオブドラグーンのスカイボックスは全て高専の同級生が作っているものです。

そして竜は世界を駆ける

 Leap Motionを使った銃トラッキングシステムは問題も多かったですが2016年3月にHTC Vive Preを手に入れるまで現役で戦ってくれました。インタビューでも話したUnity VR Expo ShibuyaはこのLeap Motion版での結果です。

 こうして世に出たガンナーオブドラグーン(当時は名無しでした)の初回展示は体験料1回100円を取る有料体験にも関わらず行列が絶えず、開場から閉場まで一度もスペースを離れる間もなくイベントを駆け抜けました。よく考えるとデジゲー博は貴重な展示・即売会イベントなのに2014年以降僕は何も物を売ってないな……。

 HTC Viveに対応したガンナーオブドラグーンは当初描いていた理想的なVRドラゴン騎乗シューティングとなっており、皆さんもそこそこ名前だけは知ってるかなと思います。日本のメディアでは記事になってないので知らない方も多いと思いますが、実は2016年9月の台北のイベントでHTC本社ブースで展示して貰ったり、サンノゼのSVVR2017にロデオスリムをスーツケースで持参して展示したりと東西で海外デビューをしてたりします。

台北101で行われたDigital Taipei 2016のHTC Vive(公式)ブースで

 インタビューでも答えた通り、現在はこの理想的なドラゴン騎乗体験を世界中に広めるべく絶賛開発中です。畏れ多くも毎年デジゲー博でZUNさんに遊んでもらっている話などガンナーオブドラグーンに関するネタはほかにもあるんですが、ストーリーに書いて良い文字数も既に少々オーバーしているので今回のお話の教訓を書いて〆ようと思います。

厄年を超えればゲーム開発も何でも何とかなる

プロフィール

渡部 晴人

島根県松江市出身。2011年松江高専 専攻科卒。2013年の松江市在住時にサークルハイドレンジャーを立ち上げ。2016年より上京し現職のゲーム会社へ所属。Oculus RiftのKickstarterのバッカーとなって以来VRゲームの開発を始め、現在『BLAST BUSTER』『ガンナーオブドラグーン』をともに1人で開発中。

ガンナーオブドラグーン

サークルハイドレンジャー
  • AR/VR
  • FPS
  • シューティング

プラットフォーム

  • HTC Vive
  • Oculus Rift

言語

  • 日本語
  • 英語

GAME ゲーム

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