全世界の295タイトルから選りすぐりのインディーゲーム8タイトルが集結!「センス・オブ・ワンダー ナイト 2018」

全世界の295タイトルから選ばれた8作品

Unityを使った作品を紹介する「Unity探検隊」。

今回ご紹介するのは、2018年9月21日(金)、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2018」にて行われた「センス・オブ・ワンダー ナイト 2018(SOWN 2018)」。SOWNとは、”見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚”=「センス・オブ・ワンダー」を引き起こすようなインディゲームを表彰する賞。

今年は全世界より295タイトルの応募があり、選考委員によって86タイトルが選ばれ、その中から最終的にファイナリストとして選ばれた8作品がプレゼンテーションされた。国の内訳は、カナダとドイツが各1作品、日本から4作品、オーストラリアから2作品。今年で11年目の開催となるが、インディゲームが世界的に盛り上がるにつれ、応募作品のクオリティも高くなり、表現領域が広がったという。

会場では観客がピコピコハンマーを振り回して、「センス・オブ・ワンダー」を感じたゲームに称賛を送る。「広がるパズルの可能性」と「心に入り込む体験」の2ジャンルに別れ、プレゼンテーションが行われた。

二種類のパズルを駆使する「ブロックキング」

まず最初にプレゼンテーションされたのは、横スクロールのゲーム「ブロックキング」。プレイヤーは二種類のブロックを吐き出す事ができるのだが、青ブロックを赤ブロックのほうに移動させることができるので、ブロックに乗って移動したり、ブロックで敵を挟んで倒すことができる。

ブロックを置いて、ジャンプで越えて行けない場所を超えたり、青ブロックを赤ブロックのほうに移動させることによって、青ブロックに乗って移動して進むことも可能。まとめて敵を倒す瞬間が、このゲームの面白いところだ。

制作者は新潟コンピュータ専門学校・ゲームクリエーター科3年の宇野銀河さん。

開発者Twitter


和風パズルゲーム「カミオリ」

「カミオリ」は、Hanaji Gamesが開発した、紙を折るというアナログな感覚とデジタルが融合したゲーム。昔からある、紙の片側にインクを付けると片方にコピーされるという「合わせ絵」という遊びからヒントを得た。もともと地形が変わるゲームを考えていたが、アイデアを紙に描いて折りたたんだことがきっかけで、このままゲームを作ったという。

基本的なアクションは、紙を折ってインクをコピーするというもの。紙を折って足場をコピーして進んでいく。一つのシーンで折れるのは一方向だけ。折れ線を動かして、方向を変えて、どのような方向にするのかを考える。シンプルな操作だが奥深いゲームだ。ステージにはトライアルモード、ダンジョンを探索するストーリーモードの二種類があり、紙を折ることで爆弾を爆発させたり、水の流れを変えるギミックもある。現在iOS、Androidで配信中だが、「今後はスマホ以外や多言語で提供したい」と語った。

公式サイト


ジョイコンを回して遊ぶ「Zen Bound 2」

続いては、Nintendo Switchでリリースされているパズルゲーム「Zen Bound 2」。スイッチのジョイコンを動かすことでオブジェクトを縛っていくパズルゲーム。Joy-Conを回転させることで、木彫りのオブジェをロープでぐるぐる巻きにして色を塗っていくアンビエントなゲーム。

開発はフィンランドのSecret Exit。「クラシックな日本の美しさにインスパイアされた」というこのゲームのアイデアは、「ケチャップを剥がしたり、ギフトラッピングを剥がす気持ちよさから思いついた」そうだ。

公式サイト


シンプルな光のインスタレーション「ロトリング」

「ロトリング」は、LEDのリングとコントローラーボックスで構成されるシンプルなゲーム。明るいライトが回転しており、スイッチを回すことで光の位置を変えていく。赤い光が敵で、敵と一緒に回転して、敵の間を縫っていくゲーム。25ものレベルがあり、ラストレベルにはトリックがあってクリアは困難を極める。このゲームはインタラクティブな光のインスタレーションでもあり、美術館で展示も行っている。「ゲームをプレイしたことがない人でも楽しんでもらえるようなものにしたかった」と語る。

開発者Twitter


時間を操るパズルゲーム「The Gardens Between」

続いては、Steam、PS4、Nintendo Switchでリリース中のばかりのゲーム「The Gardens Between」。Unityで開発されている。舞台は美しい庭園の島が連なる不思議な世界。プレイヤーはあらゆる方向から庭を眺め、庭に流れる時間をコントロールしてパズルを解いていく。

開発はオーストラリア・メルボルンのThe Voxel Agents。ゲームの世界観は、ジブリの映画や枯山水からヒントを得たという。制作には2年4ヶ月をかけた。

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無力だったこどもの頃の記憶を蘇らせる「The Inner Friend」

モントリオールのスタジオ「PLAYMIND」による「The Inner Friend」。現在Steamで配信中だ。PLAYMINDはインタラクティブスタジオで、普段はインスタレーションを発表する一方で、ゲームの開発にも取り組んでいる。「The Inner Friend」は心理学をルーツに持つゲーム。謎の影に導かれながら、その潜在意識の宇宙に住まう恐怖や悪夢に立ち向かっていく。

「自分以外のすべてのものが大きくパワフルに見えた、自分が弱く力がないと感じた感覚を思い出してほしい」と語る。70〜80年代のゲームや映画からインスピレーションを得たという。チームのメンバーの子供の頃の思い出などを語り、それをもとにゲームを制作しており、この作品自体がインタラクティブアートでもあるという。

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本物の木を準備せよ!VRゲーム「Richie’s Plank Experience」

オーストラリアのスタジオ「Toast VR」が開発した「Richie’s Plank Experience」は、VRで高所恐怖症の体験ができるゲーム。ゲームは道路から始まり、プレーヤーがエレベーターに乗ってドアが開くと、そこは80階の超高層ビルの外!あなたは果たして足を進めることができるのか?!

コンテンツは高所恐怖症の他にも、ビルの間を飛んだり、サンタクロースになって煙突に向かってプレゼントを投げるなどのオプションもある。まず、最初に適当な大きさの木材を用意しなければならないのがユニーク。実際にある材木の長さを登録すると、ゲームの中でもそのとおりの大きさの材木が出現する。

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二人で6年間かけて開発中!「RPGタイム!~ライトの伝説~」

最後に登場したのは、大阪を拠点にする「DESKWORKS」が開発中の「RPGタイム!~ライトの伝説~」。2019年夏の発売を予定しているが、6月に開催された「BitSummit Volume 6」で発表され、その完成度の高さで既に話題になっているタイトルだ。たった二人で、6年をかけて開発しているという。

主人公は、ゲームクリエイターを夢見る10歳の少年。プレーヤーは、少年がノートに落書きした「ぼくがかんがえるさいきょうのRPG」の世界を体験する。ページをめくるたびにアイデアがいっぱい詰め込まれている。少年が作っているので、登場するのはリッチなグラフィックではなく身近なもの。攻撃力はアイロンビーズで、十字キーやボタンはダンボールで作られている。SEも机を叩いた音。まだ開発中だが、RPGへの深い愛情を感じさせる、感動的なプレゼンテーションだった。

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「RPGタイム!~ライトの伝説~」が三冠!

全作品のプレゼンテーションが終わり、審査結果の発表へ。「ベストアート」「ベストプレゼンテーション」「グランドオーディエンスアワード」の3つの賞を「RPGタイム!~ライトの伝説~」が独占!ほか、「ベストゲームデザイン」は「ロトリング」、「ベストテクノロジー」は「The Gardens Between」、「ベストエクスペリメンタル」は「The Inner Friend」が受賞した。ますます多様性が広がる世界のインディゲーム。来年はどんな作品に出会えるのか楽しみだ。


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齋藤 あきこ - 2018年10月10日