あなたのゲームを中国でリリースするには(後編)

あなたのゲームを中国でリリースするには(後編)

 前編はこちら 

前篇では中国市場でゲームをリリースする際に見えてくる問題をまとめてみた。
あなたのゲームは複雑なプラットフォーム・審査・ユーザーの意見などの試練に直面することになるので、中国国内のパブリッシャーと組んで解決することが最善だろう。
そして、やっとリリースしたゲームのプロモーションをどのようにすべきか。あなたの作るゲームは中国で受け入れられるのか。
私見を交えつつ筆を進めようと思う。

プロモーションはここから始める

中国のパブリッシャーによるプロモーションは、一言でいえばゲームのジャンル・内容により手法は大きく異なる。パブリッシャーのリソース・体制もそれぞれ違う。共通することといえばリリース前にゲームのターゲットユーザーを分析し、パブリッシングプランを作成することだ。それぞれのゲームは必ず独自の特徴があり、それを分析してユーザーへ届けることが目標となる。
以下で具体的な手法を解説してみよう。

1. プレスリリース

言うまでもなく、マスコミへの宣伝は不可欠だ。中国のゲームメディアは独特な特徴を持っている。多くのパブリッシャーはあらゆるゲームメディアと密な提携関係があり、リリースまで段階的にゲームの内容を披露していく。メディアの多くは1週間前にレビューを掲載する。
情報時代を生きるユーザーたちは簡単に情報を手に入れる。マスコミは毎日大量の情報を更新していくので、とりあえず新しいゲームの存在感を出すために露出を持続することは非常に重要だ。
そしてもう一つ重要なことはマスコミをカテゴライズすることだ。大まかに、中国では総合的なゲームメディアと、コアユーザー向けのバーティカルメディアの二種類が存在する。
プレスリリースを作るとき、それぞれのメディアの性質を分析し、ターゲットユーザーに向けて方向性が異なる文章を作成する。

超大手マスコミだけでなく、中小メディアの存在感も強い。

2. 生放送・動画番組

近年ではソーシャルメディアなどの影響を受け、マスコミの影響力は徐々に下がっている。この国でも長く堅い文章より動画・生放送・ユーザーレビューなど、キャッチーな内容がもてはやされるのだ。特にゲームスキルが高く、内容を面白く解説できる実況主はフォロワーを集めやすい。
現在中国のパブリッシャーはこういったユーザー達と深い繋がりを持ち、新しいゲームを配ることで生放送・動画レビューなどを依頼するのが常となっている。
もちろん実況主はそれぞれの好みがあり、必ずしも積極的な意見に終始するとは限らないが、それを踏まえても余りある価値があるというわけだ。

中国で有名な動画UP主たち

3. ソーシャルメディア

世界的な主要SNSは中国で使えないので、WeiboやWeChatなどの国内ソーシャルプラットフォームが主流となっている。WeiboはFacebookとTwitter双方の側面を持ち、基本的には他人とコミュニケーションするプラットフォームで、WeChatはLineのような友達とのソーシャルプラットフォームに近い。

WeiboとWeChatは中国最大のソーシャルプラットフォーム

Weiboはオープンなプラットフォームとして情報がとても拡散しやすい。しかし内容が非常に簡潔で面白いことが前提となる。また、Weiboの法人バージョンは景品抽選システムが搭載されており、拡散者の中から指定人数をランダムで抽選し、景品を送ることができる。それもよく使われるプロモーション手法だ。過去、爆発的な拡散現象は大体Weiboで発生している。

一方のWeChatモーメンツはもっと奥深いのある内容を拡散するには有利と言える。想像してみて欲しい。ゲーム好きな友達からシェアされたゲームのレビューとWeiboでただ140文字でリツイートされているゲームの感想との差を。SNSの力とは必ずしも拡散力だけではないだろう。

また、Baidu Tieba(BBS)も忘れてはならない。一言でいうと2chのようなものだ。スレッドの分類はややこしく、内容も特定しづらいが、匿名者でも投稿できるのでユーザー数は非常に多い。それ以外ではSteamCNも中国最大のSteamコミュニティーとしての人気を誇り、パブリッシャーにも意識されている。

インディゲームはどのぐらい売れるか?

皆が関心を持っている問題であろうが、答えを出すのはなかなか難しい。具体的な数字を提示する前に、筆者の考えを述べたい。

一般的な認識とは異なっているかもしれないが、ゲームの販売本数はプラットフォームによって大きく変化するわけではないと考えている。プラットフォームが強ければ販売数も上がる保証はなく、ゲームのクオリティ・販促手法・プラットフォームの宣伝リソースなど、あらゆる要素から策を練る必要がある。いくら中国のユーザーが多く、可能性も大きいとはいえ、ゲーム同士が競争することには変わりないのだから。

では例をあげよう。WeGameの場合は話題作・大作をピックする傾向が強く、Klei Entertainmentが開発したサンドボックスサバイバルゲーム「Don’t Starve」は200万以上売れた。同じスタジオの新作「Oxygen Not Included」は一週間で600万を突破した。
WeGameのピックアップは売り上げに十分な効果があり、1年間で1万本程度の売り上げが保証されると言われている。

WeGame「Don’t Starve」のストアページ

スマートフォンの場合、アンドロイドの移植がややこしいがTaptapだけは抑えるべきだ。例えば、「Home Behind」のような買切り式サバイバルゲームは充分な露出度を得て、約30万の販売数を獲得した。インディゲームでもクオリティ次第ではフィーチャーという露出を獲得できるのだ。
やはり現状ではパブリッシャーと密に動き、ユーザーとの繋がりを作ること、積極的にゲーム内容を更新して情報を発信することが宣伝の基盤となる。
中国の多くのユーザーはゲームだけではなく、ゲーム開発の裏とデベロッパーのストーリーにも興味を持っている。開発者とユーザーの間の距離がとても大切だ。信頼はそこから生まれるのだ。

チャンスとリスクは常にセットだ

プラットフォームのユーザー数が多いほどゲームの売り上げも多くなる。だがあくまで販売数を左右する要因の一つにすぎず、ゲームのクオリティとパブリッシング内容も大きな要因となる。あるジャンルのゲームはより売りやすいかもしれないが、そのジャンルはゲーム数も多く存在するのが常であり、当然開発段階で内容の差別化がきちんと考えられなくてはならない。
あなたがもし中国でリリースするのなら、まず余裕を持とう。そして中華要素が強い追加コンテンツを作ることを検討して欲しい。
うまくハマればユーザーは大喜びし、瞬く間に拡散されるだろう。

まとめ

中国のゲーム市場には巨大なチャンスが潜んでいる。政府の影響を受け、常に変化し続ける業界だが、この数年間の成長速度は世界中のどの国よりも早い。筆者は常に海外進出をし始めた中国企業に楽観的な期待を寄せている。海外のインディデベロッパーにはまだハードルは高いが、いまはもう手に負えない程ではない。
中国のパブリッシャーとの協力体制の構築は、熱心なユーザーたちがあなたのゲームに注目してくれるための第一歩となる。


COPYRIGHT © 2004-2018 Sina.com Technology (china) Co. Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.
COPYRIGHT © 2016-2018 X.D. Network Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

Made with Unity - 2018年10月9日