ビジュアルデザインスタジオWOW「はこだてみらい館」

ビジュアルデザインスタジオWOW「はこだてみらい館」

Unityを使った作品を紹介する「Unity探検隊」。

今回ご紹介するのは、ビジュアルデザインスタジオWOWが手がけた、北海道函館市に昨年オープンした公共施設「はこだてみらい館」に設置されている映像インスタレーション「メディアウォール」。

これは、映像やセンシング技術を用いて、縦2.4m横14.4mの高精細LEDディスプレイいっぱいの巨大な映像を楽しむことができるというもの。WOWのCGデザイナーとプログラマーの連携によって作られた。CGデザイナーとはFBXやOBJを介して連携し、現場では画面にコンテンツを再生しながらデザイナーとプログラマーが最終調整していったという。

「メディアウォール」の中でUnityが使われているのは、函館名物の、イカが登場するコンテンツ。センシングシステムを実装し、鑑賞者の動きに沿って画面いっぱいのイカが寄ってきたり、離れたりするというリアルなものだ。制作にあたっては、北海道大学大学院水産科学研究院 桜井教授の監修のもと、イカの動きをリサーチ。精巧なイカのモデリングを、イカの実際の習性に合わせてプログラムで再現した。約1000匹のイカの群れを、処理落ちすることなく再現できているのに注目!通常の飼育は、とても難しいらしいので、この群れを見る事ができるのは世界でもここだけかも?

Unityを使った利点については、「修正点を逐次ビルドする必要なく、スライダーやアニメーションカーブを使うことで、デザイナーも直感的にプログラムを修正でき、大幅な調整時間の短縮に繋がった」ということ。

この夏休み、函館を訪ねる際には是非立ち寄ってみては?「はこだてみらい館」詳細はWebサイトにて。

「BAKERU」

そしてこちらは、2017年3月に宮城県仙台市の「せんだいメディアテーク」で開催された展覧会「BAKERU」。東北に古くから伝わる祭りや伝統行事をモチーフにした、体験型の映像インスタレーション作品だ。会場で配られるお面を着けると、スクリーンに映る自分の姿が自分ではないものに変化!自分の身体を動かすと、スクリーン上のキャラクターも動く。「なまはげ」「鹿踊」「加勢鳥」「早乙女」の4種類の伝統行事をモチーフにし、WOWの解釈を加えてビジュアライズした。



今作においては、WOWのCGデザイナーが慣れ親しんだCinema4DなどのソフトウェアとUnityを併用。FBXやOBJといった汎用形式で書き出したモデルやアニメーションをUnityに取り込んで利用した。キャラクターの動きは、Kinectを利用し、体験者の骨格やお面の3次元位置情報などを取り込んでに反映(センシングアプリケーションはopenFramework製)。シーンやインタラクションの情報をサウンドデザイナーが制作したサウンドアプリケーション(Max/MSP製)に送信し、シーンの状態に合わせてたえず音を生成している。

「Unityが色々なセンシングや音など他のアプリと連携できるプラットホームになってくれた」とプログラマの佐藤宏樹さんは語る。Unityのアニメーション機能や、それを補助するアセットを利用することでデザイナーも演出のプログラミングに参加することができたということだ。

WOWとは

東京と仙台、ロンドンに拠点を置く、ヴィジュアルデザインスタジオ「WOW」。
国際的に活躍するこのスタジオが手がけるのは、3DCGによるハイクオリティなCMやVIなどの広告映像表現のほか、レディー・ガガの顔面プロジェクションマッピング、さらにマーク・ニューソンとコラボレーションした日本刀まで!”映像から空間、伝統工芸から仮想現実までを操る先鋭的創造集団”と言われるプロダクションなのだ。

WOWでは、クライアントワークを行うだけでなく、社内に研究開発部門の「wowlab」を擁し、オリジナルワークの開発を行っている。ここで作られるインタラクティブな作品は国内外の美術館で発表され、多様な世代にも受け入れられている。そうしたインタラクティブな作品の開発に、Unityが使われている。今後もWOWの作品に注目!

Staff

はこだてみらい館

Conceptor : Yuki Tazaki (WOW)
Producer : Yasuaki Matsui (WOW)
Director : Hiroshi Ouchi (WOW)
CG Designer : Shota Oga(WOW)
Programmer : Hiroki Sato / Atsushi Yoshimura (WOW)
Music : Masato Hatanaka
Backendsystem development : Rhizomatiks

BAKERU

Producer : Hiroshi Takahashi
Project Advisor : Mamoru Kano
Creative Director : Kaoru Kudo
Planner : Hiroki Sato
Art Director : Yusuke Mizuno
Designer : Sayaka Maruyama / Shinya Kikuchi / Hiroshi Ouchi / Yusuke Mizuno / Takuma Sasaki
Programmer : Atsushi Yoshimura / Hiroki Sato / Seiya Takasawa
Sound Designer : Tomohiro Nagasaki
Product Designer : FabLab Sendai Flat

齋藤 あきこ - 2017年7月28日