Unityインターハイ2017 レポート

Unityインターハイ2017 レポート

「Unityインターハイ2017」は、高校生や高専生および小・中学生によるゲーム開発の全国大会です。出場者は2017年度に在籍している高校生、高専生(3年生以下)および中学生や小学生であり、年齢制限はありません。第4回目となる今回は、参加校や開発チームが増加し、全国から65校がエントリーしました。

そして去る10月22日(日)には予選から選ばれた出場者によるプレゼン発表会が秋葉原コンベンションホールで開催され、学生同士の交流も活発に行われました。

当日のイベントは、各チームの「プレイ動画 or デモプレイ」「資料を使用したプレゼン」「質疑応答」が行なわれ、その後に審査員による審査が行われます。参加者にとっては自分たちの作品を広くプレゼンテーションする場であるとともに、作品をより魅力的に発表することの重要さを学ぶ機会でもあります。当日のプレゼン発表会に選出たチームは計14組。一般の観覧希望者も含めた来場者の目は壇上に釘付けでした。

審査員インタビュー

大会の意図や変遷、そして探究心あふれる子どもたちを親御さんはどのようにサポートすべきかなど、審査員の方々にお話を伺いました。

千葉 慎二

日本マイクロソフト株式会社、デベロッパー エバンジェリズム統括本部エバンジェリスト。

鳴海 拓志

東京大学大学院情報理工学系研究科・講師。

山本 正美

株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント、コンテンツマネジメント部部長兼シニアプロデューサー。

簗瀬 洋平

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社プロダクト・エバンジェリスト。

学生時代にゲーム業界で働くことに不安はありましたか? それは働くことで解消されましたか?

千葉

小学校の頃、ゲームを作りたくなり、パソコンを親に買ってもらいましたが、のめりこみすぎてパソコンを取り上げられました。中学生になると知恵も働くようになり、電気屋さんにパソコンを使うために通うようになりましたね。そこには同じような環境の人が集まっていました。小さいコミュニティでしたが、ゲームを作っていた人もいたので一緒にワイワイガヤガヤしていました。そうしていくうちに、知らない間に技術が身について、自分の知識が高まりました。いい経験ができましたね。人生どう転ぶかわかりませんが、ゲームもひとつの職業として、悪くないと思います。私自身はそれほど不安はありませんでしたね。

鳴海

大学時代にゲーム会社でインターンをしてから大学院に進学しました。実はインターンでゲームを作ったことが活きていて、他人を喜ばせることや他人の行動への理解が学問にも繋がっていました。なので、人を喜ばせるゲームを作りたい気持ちがあれば、それを真剣に考えることが大事です。それさえあれば、どんな分野に行ってもうまくやっていけると思っています。学問の分野の人たちがゲーム会社で面白いゲームを作る場合もあるので、一番大事なのは何よりも強い気持ちがあることです。そういう経験がある人はどこに行っても成功すると思っています。ですので、何かを作りたいモチベーションがある高校生は応援したいと思っています。 

簗瀬

小さい頃からゲーム開発者になりたいと思っていました。高校の頃、大学を見学した際にバーチャルリアリティを初体験して、ゲームを開発するならバーチャルリアリティを勉強したいと思い、大学に進学しました。そこで学んだことやゲーム開発をしていた経験は他の企業と仕事をするのに活きていました。ゲームを作ること自体が勉強の原動力になり、ゲームを作って勉強したことが、あらゆることに役に立っています。そういう意味でまったく不安はないかと思います。

山本

僕は皆さんとはパターンが違って、最初はアスキーという会社にアルバイトとして潜り込んで社員になりました。ハタチの頃で、ゲームを作ることが自分にできるのかが不安でした。いざ入ってみると同じ志の人しかいないので、自分にできることよりもこの人たちと一緒に仕事ができる素晴らしさに気付き、一瞬にして不安はなくなりました。現在は3社目ですが、ゲームは一生の生業にしようと思った仕事です。それが初就職で環境に恵まれたことは本当に幸せでした。

ゲームはどのような影響を社会にもたらしているのでしょうか?

千葉

ゲームは直感的にわかりやすいことと世界観に入り込みやすいことが特徴です。さまざまな社会の難しい問題もゲームで楽しみながら触れることで、違った形で問題意識を持つことができます。なので、ゲームを通じて世の中の問題や自分自身に関わる問題を認識できる良いツールであると思っています。

鳴海

実は僕の弟が自閉症で、日常のコミュニケーションをとることがなかなか難しいのです。けれど、一緒にゲームをすると弟が何を考えているのかが手に取るようにわかるんです。レースゲームをしていると「こいつは今俺を抜かそうとしている」など。ゲームを介することで、コミュニケーションが豊かになり、相手の気持ちがわかるようになります。それはゲームというメディアの持っている可能性のひとつだと思っています。人と人のコミュニケーションのあり方を変えるような可能性を持っているのが、ゲームの持つひとつの役割なのかと思っています。

簗瀬

ゲームは、さまざまなことを他人に理解させる力があると思います。例えば、みんな戦争は良くないと意識の中では思っていますが、反戦を訴えるコンテンツを作ったとしても反戦に興味がある人しか見てくれません。しかし戦争のゲームをプレイすると、かっこよさやロマンがある一方で、戦争が悲惨でやってはいけない辛いものだということを伝えることができるんです。それだけでなく、やはり人間は楽しいことが好きなので、日常を楽しくしてストレスを軽減できるわけです。そしてゲーム開発の知識やゲームで培われた知見は広く役に立つものだと考えています。

山本

例えば、ATMでお金を下ろす時にボタンを押す作業や病院の順番待ちをもっと便利にできるようにするという、サービスを提供する側がサービスを受ける側に対してどういうインターフェイスを用意するかの理解力を高めるのがゲームだと思います。ゲームのノウハウがゲーム以外の場所で広まることによって、もっと便利になるポイントになるはずだと思っています。そういう意味では社会に対して役に立つ要素はゲームに内包されていると日々思っています。

出場者の将来を心配する親御さんに、何かアドバイスはありますか?

鳴海

Unityインターハイに去年出てくれた子は、僕が審査でコメントをしたら「ゲームは総合芸術で、勉強しないと面白いものは作れないし、教養があるからこそ面白いゲームを作れることに気づきました。今は東大を目指して勉強してます」と言ってくれたんですね。他人から良い評価をもらうと本人が伸びようとがんばるので、良い部分を見つけてあげて、いかに伸ばしてあげるかが高校生にとって応援になると思っています。

簗瀬

去年優勝をした親御さんから「この子は将来ゲーム開発者になれるんですか?」と相談を受けましたが、Unityインターハイで決勝に出てくるような子は、何にでもなれる可能性があると思います。ゲーム開発はアートや技術、それだけでなく人の振る舞いを考えるわけで、さまざなな製品やサービスを作ることに必要な知識が詰まっています。つまり、ゲーム開発という狭い道だけではなく、ものすごく広い道が目の前に開けていると思って欲しいんです。ただ、将来的にはすごく勉強が必要です。本人も勉強が必要と理解して、これからどんな勉強をするべきか、一緒に探してあげて欲しいと思います。

山本

2020年にプログラムが必修科目になりますが、プログラムはきちんと順番を追って考えるという論理的思考に基づいて組まないと動きません。そういう意味では身に付けることがたくさんあります。ゲーム業界は制作期間も長いので残業が多いのですが、休暇を取れるようにする流れを業界全体で進める動きもあります。お客さんを喜ばせるエンターテイメントの仕事に向けて、是非ともお子さんのことを信じてチャレンジさせてあげて欲しいと思います。


今回の大会は、若者たちが世に出る経験の積み重ねの第一歩。出場者だけでなく参加者のみなさんは、この大会の経験を元により大きな経験に向けてチャレンジを続けてもらいたいと切に願います。

Made with Unity - 2017年11月17日