Unity × 物理エンジン × YouTuber

Unity × 物理エンジン × YouTuber

“雨、歩くのと走るの、どっちが濡れないの?”
“摩擦がなければビリヤードは一発で全て入るのか?”
“時速何キロの球を投げればバントでホームランを打てるの?”

そんな世の中の素朴な疑問をUnityの物理エンジンで検証し、動画として配信するYouTuberさんがいる。彼の名前はこーじさん。チャンネル登録者数は約8万、人気動画に至っては100万再生回数を超える人気ぶりを誇っている。

彼は何を思い動画をアップしているのか。そして今後どこへ向かおうとしているのか。今回のUnity探検隊は、独特の切り口で動画を作成するYouTuber、こーじさんにお話を伺いました。


Unityと出会い、YouTuberになる

こーじさんがUnityを使うことになったきっかけは何だったのでしょうか。

こーじ

大学3年生のころ、友人から「Unityっていうのがアツいんだよ」と教えてもらい、半信半疑で触れてみたのが最初ですね。実際、使ってみて面白いと感じ、試しに色々作ってみたものの、離れてしまいました。

扱う上で難しいことがありましたか?

こーじ

作ろうとしてたのはiPhoneで遊べる2Dのゲームアプリでしたが、当時僕はMacを持っていなくて、結局できなかったんです。他にも技術的な壁にぶつかってしまったこと、ゲームにのめり込んでしまったことなどが重なり、離れてしまいました。

それからしばらく経って、一昨年の12月頃、物理エンジンを使った動画を視聴していたとき、「これならUnityでも出来るかもしれない」と思い、動画制作を始めました。

以前からプログラミングなどの素養はあったのでしょうか?

こーじ

はい、幼少時は夏休みを過ごした祖母の家が自然豊かな土地だったこともあり、虫を捕って飼育したりしてましたが、小学三年生ぐらいのころにゲームボーイを買ってもらって以降、ゲームに熱中してきました。一時は改造コードを趣味で作ったりして、そのころからだんだんとプログラミングが好きになりました。大学でもロボットのアームを動かしたりとか機械工学に関連することを学んでいましたね。

あ、今でも生き物は大好きで現在も複数のペットを飼育しています。

理系の大学生がYouTuberを目指すってちょっと珍しいことにも思うんですが、どのようなことに惹かれたのでしょうか?

こーじ

自分のやることを自分でコントロールできるというのが一番かなと思い、そこに惹かれました。「好きなことで、生きていく」というYouTuberの宣伝コピーがありましたが、そういう部分ですね。もちろん実際は大変なことも多いのですが、やりたいことのためには苦にはならないですね。

生み出される動画には、ふたつの軸がある

動画は主にどういったことにヒントを得て作られているのでしょうか?

こーじ

アイデアは、周りを観察しておもしろそうな物事を見つけては、それを無関係なものと組み合わせたり、あるいはパッひらめくという感じですね。

「誰もが疑問に思うことを検証する」というのは人を惹き付ける反面、ネタ探しが大変そうですよね。

こーじ

そうですね。でも、ありがたいことに、視聴者さんからすごくたくさん依頼がくるようになったので、それにヒントを得ていることもありますね、結構。

なるほど、視聴者の声ってやっぱりありがたいもんなんですね。

こーじ

メッチャありがたいです。あと最近は「誰でも疑問に思うようなこと」とは真逆の「誰も疑問に思わないようなくだらないこと」も動画にしてますね。

なるほど、たしかにもうひとつ軸がありますよね。疑問検証系と、完全なネタ系と。どちらが本質ということもなく、どちらも本当にやりたくてやっていることなんですね。

こーじ

そうですね。

「何回紙を折ったら宇宙まで到達するのか?」というのはまさに疑問検証系の動画

かたや「何粒の豆と速度で鬼は倒せるのか?」という誰も疑問に思わないようなことにも果敢に挑戦

バーチャルYouTuber、こーじの誕生へ?

動画非常にシンプルな絵づくりになっていますよね。Unityにはアセットストアがあるし、クオリティの高いモデルデータを容易に使うこともできますが、棒人間やカプセル人間でやっているのには、ある種のこだわりがあるんでしょうか?

こーじ

一番の理由は、むにむにさんというクリエイターの方が、シンプルな棒人間でいろいろなことをされていて、それがとてもおもしろかったので、それを見習ってということですね。

あとは他の方が作ったアセットを、自分の動画のメインにするのには抵抗があるので。自分のオリジナルのものを使いたいという思いから、今は棒人間を自分で作り出演させています。人間ではなく、顔の表情もないので、どんなふうにでも捉えられますし、シュールな感じに見えるのもおもしろいかなと。

世間ではバーチャルYouTuberが大人気ですよね。

こーじ

すごい人気ですよね。でも今のバーチャルYouTuberって、主に画面の前でしゃべるのが中心じゃないですか。なので僕はバーチャルの世界で物理エンジン使って一緒に何かしたいです(笑)。実は今、イメージイラストをデザイナーの方に依頼しているんですが、僕のオリジナルキャラクターのモデルを作ってます。

おお、それはどんなものになるんでしょうかね?

こーじ

そうですね「面白いキャラを考えている」とだけ言っておきます。3月中にはデザインが上がるので、そのイラストをもとに自分がモデリングする予定ですね。

モデリングは自分の手で、というこだわりがあるんですね。

こーじ

はい。モデリングは楽しいので。あとは、作る様子とかを生放送することも考えています。

自分の手でやるのは、とても愛着が湧きそうですね。

インタビュー後、PERCEPTION NEURON 2.0 を導入し、実際にバーチャルの世界へ

ゲーマーとして、そしてゲーム開発者として……?

普段はゲームで遊ばれていますか?

こーじ

PUBGというバトルロワイヤルゲーム、あれをプレイしていますね。セカンドチャンネルでやったりもしてます。昔からFPSは好きでしたが、見つかるか見つからないかの緊張感、それからどこに敵がいるかわからないという感じがとても好きですね。

では、今まで一番ハマったゲームは?

こーじ

PSPの『メタルギアソリッド・ポータブル・オプス』というおそらくシリーズの中では最もマイナーな作品です。実は受験に失敗してしまうくらい没頭していました。ユーザーが減ってしまった後も、サービス終了間際までプレイし続けて、オンラインランキングの上位に位置していたこともあります。そのときにオンラインで知り合った方とはまだ仲が良くて、今も連絡を取り合っています。

ちなみに、いわゆる物理ゲーム、物理演算を使った格闘ゲームや『どうぶつタワーバトル』のようなゲームは、遊ばれたりされないんでしょうか。

こーじ

ああいうゲームは、むしろ「作ってみたい」と思いますね。当初からは思いもしなかった形でUnityを使ってますが、今でもゲームは作りたいと思っています。Unityの勉強とYouTubeとしての動画作りを併行して行っていけば将来、Unityでゲームを作ったとき、そのゲームをYouTubeで広めたりもできるかな、と思ってますね。

では今後、もし作るとしたら、やっぱり物理ゲー的なやつを?

こーじ

そうですね。この前ニコニコ動画に肉を焼き皿の上に置いて焼け具合が点数で採点されるゲームがあがっていたのですが、それがとても難しくて、意味のわからない挙動をするんです。ああいうゲームは良いですね。

それであれば普段の活動と近いものがあるし、シナジーが生まれそうですね。

Unityを使おうとする人たちへ

こーじさんはUnityのチュートリアル動画を作り、2ndチャンネルで公開されましたよね。見つけたときは非常に嬉しかったです。

こーじ

Unityについて検索すると記事はたくさん出てくるのですが、ブラウザ上で長い説明読むのは大変だし、続かないだろうと。なので初心者向けに、少し笑える要素を交えて紹介してみたら需要あるかなあと思ってやってみました。まあ、続きませんでしたが(笑)。

では、こーじさんのファンで、Unityに挑戦してみたいという方のために、メッセージを頂いてもいいでしょうか?

こーじ

僕もまだまだ勉強中なので、そんな大きなこと言えないんですけど。Unityはドラッグアンドドロップで、いろいろなものをポイポイポイポイ置くこともできるので、最初はそれで遊んでいるだけでも楽しいので、難しそうだからやめているという人は、ちょっともったいないと思いますね。

Unityはコーディングしなくてもできることが色々ありますからね。本日はありがとうございました!

池和田 有輔 - 2018年3月20日