2017.03.03
恐怖を紐解く
河野 一二三
NightCry
NUDE MAKER

ホラーゲームの代名詞『クロックタワー』の精神的続編との呼び声も高く、巨匠・清水崇監督とのタッグも記憶に新しい気鋭のタイトル『NightCry』。開発を行ったのは『鉄騎』『無限航路』といった“尖った”タイトルを開発し続ける、株式会社ヌードメーカーだ。今回は本作のディレクターであり、代表を務める河野一二三さんに話を伺った。

インタビュアー:池和田 有輔(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン)

河野 一二三(こうの ひふみ)
株式会社ヌードメーカー、代表取締役。
株式会社シェード、プロデューサー。ディレクター、シナリオライター。
代表作に『クロックタワー』『御神楽少女探偵団』『鉄騎』『無限航路』等。

河野流、ゲーム開発の極意

池和田
河野さんはディレクターとして、どのような手順でゲームを組み立てていくのでしょうか?

河野
僕の場合はまず、やりたい題材を決めるんです。そこからさらに題材の中で一番興奮する瞬間、面白い瞬間を絞る。ホラーゲームだったらモンスターから隠れて、見つかるか見つからないかのハラハラ感。推理ものだったら刑事が犯人を問い詰めて、追い詰めていく感じ。そのポイントをどうやったらシステムにできるかを考えるんですよ。そうすると、例えば『NightCry』の世界を探索する「通常モード」と、より緊迫感を強調した「逃走モード」の切り替えというシステムが出来上がる。それが出来上がってから、次にそのシステムを生かすためのストーリーとか、副次的な要素を考えるんですね。

池和田
なるほど。完成されたものから一旦面白さのエキスというか、それを抽出する仕掛けをまず分析し、ゲームとして発展させるわけですね。

河野
そうですね。映画でもゲームでもさまざまな題材がありますが、その題材を自分が面白いと感じた部分はどこか、見極めて抽出することをまず考えます。そして僕の「面白い」を、ユーザーさんにも「面白い」と思ってもらえるシステムに昇華させていくことを模索する流れですね。

池和田
それは非常に理にかなった作り方に感じますね。

河野
僕がやるには理にかなっているけど、他人は違うやり方をするんだろうし。その辺りはいろいろですけどね。

池和田
つまり作る手法自体は正解のある話ではない、と。

河野
そうですね。他のクリエイターさんと話してもそれぞれ違っていますし、それぞれがやりやすいようにやれば良いと思っています。ゲーム制作の手法だってバジェットや環境でその時々の正解は変わるでしょうからね。例えば『NightCry』の製作は内容のわりに少人数なので今までの製作手法とはまったく異なっていて、ディレクターである私自らグラフィカルな演出、実作業にもかなり参加しましたよ。エディタ上でライトを並べたりとか。

池和田
え、 河野さんご自身でUnityを使われていたんですか?

河野
ベイクライト(負荷軽減のための焼き込みライト)はアーティストさんに任せてたけど、リアルタイムライトは僕がやりましたね。それからイベントカメラの配置も行いました。プログラマにカメラやライトのオン/オフを指定秒後に切り替えることができるツールを作ってもらって、それを使ってコントロールして、と。

池和田
ライティングはシーンの雰囲気を作る上でこの上なく重要ですよね。

河野
自分で触る意味は大きかったと思います。専門の人に任せられるのが一番よいのでしょうが、そうじゃないのならディレクターが自分でやることでリテイクとやり直しの時間を無くせますからね。イベントの設定などもエンジニアではなくプランナーが直接行っていたし、Unityだからこそできたことですね。

死にゆく男、生き残る女

池和田
ふと気がついたんですが、河野さんの手掛けた作品は女性主人公が多いですよね。

河野
『鉄騎』や『無限航路』のような硬派な作品は男性主人公にしていますが、『クロックタワー』、『御神楽少女探偵団』、『NightCry』はグロテスクで猟奇的な部分が共通していますよね。そこに美少女って本当に似合うんですよ。それに、おっさんの野太い悲鳴って聞きたいと思わないでしょう?

池和田
それはそうですね(笑)。

河野
それと、あくまで俗説としてですが、極限状態で生存する確率は女性の方が高いというのがあって。ギリギリまで追い詰められたときに、男性は無茶な行動をとって、結果的に死んでしまう。男性は無駄な勇敢さがあって、モンスターや殺人鬼に出会ったら、どこかでキレて立ち向かっちゃうんですよね。それは恐怖から逃れるための逃避行動であって、実は弱さでもあるんですが。

池和田
女性が隣にいると無駄に張り切って、死んじゃったりもしますよね。

河野
そうなんです。いらないヒロイズム。サバイバルには不必要なんですよね。それに男性は「諦め」と「潔さ」を悪い意味で混同しやすいところもあって……麻雀漫画の『アカギ』、読んでます?

池和田
大好きです(笑)。

河野
「無茶な牌を切るのは、実は楽になって逃げたいから」ってアカギがいう、あの感覚ですよ。麻雀だからそれで済んでいるけど、スラッシャーのいる館なら死んでいるよねって。僕はゾンビが出てくる夢を定期的に見るんですけど、いつも追い詰められて、大変なことになる。だいたいのオチは面倒くさくなって突撃して、自分がゾンビになるパターン(笑)。そうしたらすごく楽になるんですよ。殺されて結局ゾンビになるけど、いままでの「死にたくない!」と思いながら怯え続けている状況より気分が圧倒的に楽で。男なら共有できる感覚なんじゃないかな。

池和田
わかります。なんか悲しくなりますけどね、男としては(笑)。

河野
まあ俗説ではありますけどね。

『NightCry』メインキャラクターの一人、ルーニーのコンセプトアート

池和田
ところでホラーゲームって一般的にVRと相性がいいと言われていますが、興味はありますか?

河野
もちろんあります。ただ、いまは操作系やフレームレートの問題があるので、そういった失われるものに見合った面白さを作り出すのは難しいと感じています。僕はVR化することでちょっと面白くなる、程度だったら、別にやらなくてもいいかなと思うんです。でも、『カイジ』の鉄骨渡りみたいなものは、相当ハラハラするだろうし楽しそうですよね(笑)。そう言った本当にドンピシャなやつはやるべきだろうし、そうでなければやらないほうが良い。今VRやるならそれなりの長時間を遊ばせるゲームより、アトラクションの方が候補ですね。5分間とか短い間だけど「尋常じゃなく楽しい」みたいなやつ。現段階のVR技術では、それが一番合ってるんじゃないかな。

池和田
なるほど、体験型コンテンツとしては、まだまだテーマや環境を選ぶもの、という認識なんですね。

河野
まず、VRで臨場感を手軽に実現できるとは思うのは間違いかなと思ってます。4DXシネマに行くと感じるんだけど、雨や風のシーンと実際に浴びせられる水や送風を受け手の感覚の中でリンクさせるのって実はとても難しいんです。よっぽど物語や世界に引き込んだ後じゃないと成立しないというか。その一方で、本当に良いホラー小説を読むと、めまいや吐き気を感じることさえある。『ぼっけえきょうてぇ』なんて三池監督の映像を先に観てオチは知ってるのに、原作小説の読後めまいに襲われましたからね。でもVRを使って通り一遍の演出をされても、何も来ない。よっぽどちゃんと練り込んで作らないとダメなんだなと。ホラーゲームはすごく才能がいると思うので、「手っ取り早くVRで作ったら怖い!」とか、そういうものじゃないと思うんです。

インディだからこそできること

池和田
河野さんはインディゲームの魅力はどのようなところにあると考えられていますか?

河野
一般的なビジネスフォーマットに乗らない企画やゲームデザインを出せるというところですね。今はパブリッシャーさんによる商業タイトルの売上本数の見積もりが非常に精密になってきているので、例えば「このジャンルで、このキャラデザイナーを使ったこんなタイトルだとこれくらいの売上本数は狙える」というのがまずあるんです。ところがそういう見積もりができるのはあくまで一定数のサンプルデータありきの話ですから、そこに乗らない、既存のデータにないものや、リリース数が少なくなって消えてしまったジャンルに関しては、なかなかゴーが出にくいという。ホラーなどはまさにそれで、『SIREN』や『零~zero~』みたいに素晴らしいタイトルがあったけど、それでも回収が難しいと認識されてしまっているのが現状だと思います。まず企画を通すこと自体が難しい、となるとそれでも作るには、『NightCry』のようにクラウドファンディングを使うというのも1つの方法ですよね。

池和田
僕はそういったチャレンジブルなゲームを作ろうとする方を応援したい一方で、「売れるゲームの型」から抜け出るというのはなかなか難しいのかな、とも思ってしまうんです。

河野
リアルですね。バジェットが大きければ大きいほど「こうあらねばならない」「こうしておかないと広くユーザーを獲得できない」というフォーマットは要求されてきます。ソーシャルのマネタイズが様々な実証サンプルの末に結局ガチャに落ち着いたのと同様で、ワールドワイドのAAAタイトルも多くの試行錯誤と屍を作った結果、ある程度のフォーマットが決まってきたわけですからね。決してそれまでに誰も冒険をせずにパターン化したフォーマットをやってるわけじゃないわけです。

池和田
なるほど。確かにそうですよね。

河野
とはいえ一方でエンターテイメントに従事する者は夢を与えなければならない。それは昔からそうだし今後も変わらないと思います。だからビジネス的には厳しくても、「男気」とか「ロマン」とか「仁義」とか、そういう単語が自然と飛び交うような環境が僕はずっと好きでなんです。やっぱり精神というか気概が重要で。インディには「自腹切ってでも好きだから作るんだ!」という強い思いがある人が報われたりすることがケースとしてはあるわけで、型から抜け出るにはやっぱりそいういう話が絶対に必要なんだと思います。溢れ出るから、抑えられないから、もう知らないうちに「ガッ!」て作っちゃった、みたいな。それがインディのあるべき姿だと思います。まあそんなわけで、私自身引き続き冒険者をやりつつも、これからはゲーム業界に恩返しという意味で、次世代を担う開発者のサポートをしたりしていこうと思っています。

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