今回も一週間のきらめきが大集結!Unity一週間ゲームジャム2019.10注目作品ピックアップ

おなじみとなったUnityのお祭りUnity1週間ゲームジャム。2019年10月のお題は「さがす」

ゲームジャムはインディゲームの盛り上がりと切っても切れないものである。今日、多くのインディゲームが発売されているが、その中にはゲームジャムで作ったプロダクトから製品化させたものや、ゲームジャムをきっかけに生まれたディベロッパーの作品というものも数多く存在する。ゲームジャムはインディゲームシーンにおいて、非常に重要な文化へと成長したと言っていいだろう。

さて、そんなゲームジャムだが当然日本でも数多く行われている。その中でも注目度の高いイベントがUnity1週間ゲームジャムだ。2017年4月から定期的に開催されており、Unityを用いて作るというルール以外設けられておらず、だれでも気軽に参加できる。期限が過ぎても未完成でも大丈夫という懐の深いイベントである。Unityでゲームを作ることを楽しもう。気軽で楽しいUnityのお祭りなのだ。(主催者のnaichiさんに聞く開催のきっかけはこちらの記事にて)

2019年10月のUnity1週間ゲームジャムも多くの参加者とゲームで盛り上がった

2019年10月20日~2019年10月27日、Unity1週間ゲームジャムの第13回が開催された。お題は「さがす」。1週間という短い期間で参加者はアイデアをふりしぼり、持てる技術をUnityにぶつけ、数々のすばらしいゲームが集まった。

Unity1週間ゲームジャムは最初の1週間でこのお題に沿ったゲームを作り公開、次の1週間で自分以外の参加者のゲームを遊んで評価する。作るだけでなく、遊ぶことにも焦点が当てられており、制作だけでなくプレイと評価だけで参加することも可能だ。

ぜひとも多くの方にこのゲームたちを遊んでほしい!ということで、今回もインディゲームライターである私、洋ナシが「ぜひ遊んでほしい!」と声を大にしたい作品を紹介していこう。

ころころどっく『次のガソリンスタンドはきっともっとやすい』

「さがす」というお題はゲームにしやすい印象があるが、それは逆にテーマがかぶりやすいというマイナス面もある。もちろんテーマがかぶることはけっして悪いことではない。だが、できるならば他にないテーマを……というのは多くの開発者が感じるところだろう。

そこをころころどっくさんの開発した『次のガソリンスタンドはきっともっとやすい』は飛びぬけてきた!本作のテーマはなんと「ガソリンスタンドさがし」!長距離運転で必ず直面するあの「さがす」を見事にゲーム化したのである。すごい!

家への帰路の途中、財布に2000円しか入っていないことに気付いたプレーヤー。まずい!できるかぎり遠くまで車を進めなくては!プレーヤーは高速で走る車を操作し、ガソリンとお金の続く限り車を前へと進めていく。家への帰路というのは設定だけで、車を進めた距離を競うスコアアタックゲームだ。

車は走れば走るだけガソリンを使う。しかも他の車にぶつかるとガソリンがガクっと減ってしまう。ガソリンは道路沿いにガソリンスタンドがランダムに建っているで、ここで満タンに補給しよう。だがガソリンスタンドも商売だ。お店によってガソリンの値段が違ってくる。つまり、節約しなければ距離は稼げない。財布の中身とガソリンの価格、ガソリンの残量に気をつけつつ、お得な価格でガソリンを補給せねばならない。

残金とガソリン残量を気にしつつ、今入れるか次を待つか一瞬の判断が勝負を分けるのが非常に楽しい。神スタンドの登場は運とはいえ、それにたどりつくリソース管理はプレーヤーに委ねられている。スコアアタックにアツくなれる作品だ。ガソリンが切れる前に、安いガソリンスタンドはやってきてくれるのか……。このドキドキを体感しよう!(そんなの実際の高速道路でもゴメンだ!という考えはある)

作品はこちらからプレイ!→ Unityroom『次のガソリンスタンドはきっともっとやすい』
開発であるころころどっぐさんのTwitter→ @korodog0614

Syo『sweeeets』

お題から参加者たちがアイデアを絞り、結果テーマがかぶることはどうあっても避けられない。今回のお題「さがす」から多くの参加者が探させたものは、スマホ、漢字、お宝、人物あたりが人気であった。あと、”さが”すということで佐賀県もけっこうあった。テーマはかぶろうともその内容は千差万別だ。

さて、ゲームジャムではその時々のトレンドが反映されることが多い。例えば前回のUnity1週間ゲームジャムではタピオカのゲームが大量に投稿されたが、今回はその数を激減させている。トレンドの移り変わりを感じられるのもイベントの楽しみだ。今回のUnity1週間ゲームジャムはハロウィンが近い関係からか、ハロウィンやおばけがテーマの作品が多かった。今回はその中から、Syoさんの開発した『Sweeeets』を紹介しよう。

『sweeeets』はハロウィンではおなじみのおばけカボチャを導き、キャンディケインまで導くパズルゲームだ。だが、画面上にはおばけカボチャの顔は描かれているものの、おばけカボチャもキャンディケーンも、それどころかステージのオブジェクトのほとんどが描かれていない。ここで登場するのがプレーヤー操る魔法のランタンだ。魔法のランタンで黒く照らされると、白い画面に隠されたブロック、おばけカボチャ、キャンディケインが画面上に姿を現す。真っ白の画面からおばけたちを探し出し、ゴールを目指すというわけだ。

もちろんただただ実体化させているだけではゴールにたどりつくことはできない。また、おばけカボチャはお菓子に目がないのか、キャンディケインが実体化していると一目散に歩き始め、落ちたり挟まったりしてゲームオーバーになってしまう。魔法のランタンで様々なものの実体化と透明化を切り替え、ステージをクリアしていこう。かわいらしいグラフィックとゲームシステムがすばらしく、短いながらも満足感のあるゲームに仕上がっている。今だからより楽しいおばけカボチャのゲームをぜひ楽しんでほしい。

作品はこちらからプレイ!→ Unityroom『sweeeets』
開発であるSyoさんのTwitter→ @goki_jet883

パン@ブルークリエイター『ハイスピード間違い探し』

誰しも遊んだことがあるゲームを下敷きにするのはゲーム制作の基本と言ってもいい手法である。当然、今回のUnity1週間ゲームジャムでもそうしたおなじみのゲームを下敷きにした作品がたくさん見受けられた。同じゲームを下敷きにしつつも、足していく要素や演出の仕方などに作者の個性や狙いが見えてくる。遊ぶ側として非常に面白いポイントである。

個人ディベロッパーブルークリエイターのパンさんが開発した『ハイスピード間違い探し』もまた探すゲームの代表格である間違い探しを下敷きとしている。だが、そのプレイ感はまったく一般的な間違い探しとは異なる。このゲームは制限時間20秒の間に代わる代わる出題される間違い探しを解き、その正答数を競うゲームだ。20秒の間に間違い探しを何問も解けるのか?と疑問に思うだろう。

安心してほしい。解ける。このゲームで出題される間違い探しの間違いは全て全裸中年男性3Dモデルである長谷川さんがTポーズで配置されているだけなのだ。間違いをなじませて気付きにくくするという努力を一切放棄している。そして、問題は数問しかなくそれがランダムで表示されるので、すぐに答えの場所を覚えてしまう。このゲームで探すことは一切ないだろう。……お題はどこへ行った?

このゲームは間違い探しという皮を被ったいわばおバカゲーム、マウス操作の速度を競う超高速クリックゲームなのだ!表示された画像にいち早く反応し、次々と長谷川さんをクリックしまくる。その精度と速度を競うゲームが『ハイスピード間違い探し』である。高速エイミングとクリックで間違い探しのスピードチャンプになれ。非常にバカバカしいゲームだが、シンプルで楽しく、速さを競う楽しさを感じられる。

「さがす」というゲームに組み込みやすいお題だが、お題はあくまでお題だ。このゲームのようにお題をゲームシステムではなく、ジョーク、演出として取り入れるのもまたアリ!それがゲームジャム、それがUnity1週間ゲームジャムということだろう。

作品はこちらからプレイ!→ Unityroom『ハイスピード間違い探し』
パンさんが代表のブルークリエイターのサイト→ ひとりゲーム制作集団ブルークリエイター
開発であるパンさんのTwitter→ @pann_burukuri

nobunagwa『えきさがし』

ゲームジャムというのは前衛的なアイデアとそれをそのまま作ってしまう瞬発力が非常に現れるイベントだ。これまでも多くのマニアックな、尖ったテーマのゲームが生まれてきた。今回のUnity1週間ゲームジャムでも、狙ってのものか、それとも意識していないのか、マニアックで尖ったテーマの作品がいくつか発表された。

nobunagwaさんが開発した『えきさがし』もまさしくそんなマニアックで、尖ったゲームだろう。本作でプレーヤーが探すのは日本に実在する駅だ。日頃多くの人がお世話になっている鉄道であるが、日本全国に存在する駅の名前と所在を記憶している人などそうそういるものではない。プレーヤーは探す駅の名前とその駅が属する路線名だけを頼りに、日本地図に赤い点で描かれた駅の中からその所在を探し出さなくてはいけない。やさしいだと東北地方の駅を、むずかしいだと全国の駅から探すこととなる。近畿住まいの私にとってはやさしいモードですら超難問だ。「ドラゴンレール大船渡線の小梨駅」と言われたところで、どの県の駅かすらわからない。なんだよドラゴンって。ドラゴンは日本にいないだろ!?あまりにも鬼畜なゲームである。

ただ駅を表す点にマウスオーバーすると駅名と路線名の情報が表示されるので、情報なしで当てる鉄道超人向けのゲームではない。路線名からある程度場所を絞り、マウスを走らせ駅の場所を特定していくのは面白い。他にない難しいゲームだからこそ挑みたい。そんなチャレンジ精神をくすぐってくれる作品だ。

作品はこちらからプレイ!→ Unityroom『えきさがし』
開発であるnobunagwaさんのTwitter→ @nobunagwa

きのはな『PokerRush』

ゲームジャムは限られた短い期間でゲームを作るトライアルイベントである。Unity1週間ゲームジャムもその名前の通り、1週間という非常に短い期間でゲームを開発することを参加者に強いている。いかに気軽に参加できるイベントとはいえ、時間という制約はあまりにも重い。だが、この短い期間であっても細部まできっちりと作り込まれたゲームは発表される。開発者の技術力の高さを見せる。ゲームジャムの一つの側面であろう。

きのはなさんの開発した『PokerRush』は今回のUnity1週間ゲームジャムで公開されたゲームの中でも、その細部まで行き届いた作り込みがすばらしいゲームだ。まず、UIが今すぐダウンロード配信しても大丈夫そうなほどに、きっちりしている。ボタンがアニメーションするなんてすごい。細かいところまで1週間の間に手を入れている。

このゲームで、プレーヤーは場に並べられたトランプからカードを集めポーカーの役を作っていく。ポーカーの役がより強力なものであるほど高い点数を得ることができる。場のカードを適宜補充しつつ、どんどん強い役を揃えてスコアを稼ごう。もちろん制限時間があり、これがなくなるとゲームオーバーだ。だが、指定された数字、スートのカードを利用して役を作れば制限時間が回復する。場のカードを上手くやりくりしていくことが重要だろう。

コメント欄を見るとリリースをほのめかす返信をなさっており、今後にも期待したい一作だ。更なる作り込みを経て、手元に届く日が来るかもしれない。

作品はこちらからプレイ!→ Unityroom『PokerRush』
開発であるきのはなさんのTwitter→ @kinohanya

ゲームを遊んでイベントを楽しみ、参加者を応援しよう!

続けて5作紹介したが、今回も応募作品が300作越えと紹介しきれるはずもない量のゲームが公開されている。すでに表彰も終わり今回のUnity1週間ゲームジャムは終了してしまったが、今回のイベントで作られたゲームに触れ、気に入ったゲームがあればコメントを残すなどして、参加者を応援してあげてほしい。また、たくさんのゲームが集まるこの盛り上がりを知って、次回の参加を検討するのもいいだろう。とにもかくにも、まだまだイベントの熱気が収まっていない時期である。今回の「さがす」をお題とした作品に触れるなら今だ。

「Unity1Week」とは?

定期的に開かれる、一週間でゲームを作るイベントです。
月曜00時にお題が発表され、日曜20時までにお題に沿ったゲームを作ります。
期間中に投稿されたゲームはunityroomに投稿され、日曜20時に一斉公開されます。
ハッシュタグは #unity1week です。
みんなでゲーム作りを楽しみましょう!

公式サイト

洋ナシ - 2019年11月1日