センス・オブ・ワンダー ナイト 2019

アスキーアートRPGがグランプリ!大波乱の「センス・オブ・ワンダー ナイト 2019」

2019年9月12日~15日に開催された「東京ゲームショウ」にて行われた「センス・オブ・ワンダー ナイト 2019(SOWN 2019)」。”見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、誰もがはっと、自分の世界が何か変わるような感覚”=「センス・オブ・ワンダー」を引き起こすようなゲームが紹介されるイベントだ。今年で12回目の開催を迎える。昨年のレポートはこちらから

今年の応募総数は世界から322作品。そこから選びぬかれた8作品(内訳:中国1・ポーランド1・アメリカ2・日本4)の作者が自らの作品をプレゼンテーションする。そして最高位である「Grand Audience Award(オーディエンスアワード)」が観客の投票によって選ばれるというわけだ。今年、そのオーディエンスアワードに選ばれたのはアスキーアートのみのRPGという異例の事態に!そして、このタイトルの開発にUnityが使われた理由とは?

アスキーアートでRPG?!

まずは動画を見ていただきたい。これが『Stone Story RPG』だ。2019年に発売されたとはにわかに信じがたい、アスキーアートのみで構成されたUnity製のゲーム。開発はカリフォルニアのMartian Rex、standardcombo。ソウルストーンを発見するのが目的で、プレイヤー同士の会話が主な要素になっており、ストーリーのあるRPGやシューティング要素などバラエティに富んだ内容が特徴だ。

「ターミナルでなくUnityで開発した理由は、ターミナルにはないパーティクルなどのエフェクトがあるから!」とのこと

キャラクターはプレイヤーが操作するのではなく、自動的に動き周り、プレイヤーはそれを見るという形になる。ビジュアルの要素を削ることで「プレイヤーが想像力を使って世界を作りあげることができる」ことがテーマ。グラフィックの進化が競われるゲーム業界だが、そこに文字通り一石を投じる作品になりそうだ。

全作品のプレゼンテーション終了後に発表された、観客の支持が一番高かったタイトルに贈られるオーディエンスアワードに輝いたのがこの『Stone Story RPG』。観客は手に持っているパチパチを鳴らして各タイトルに投票するのだが、『Stone Story RPG』は満場一致でのグランプリだった。

現在Steamでアーリーアクセスが行われているので、興味のある方はぜひプレイしてみてはいかがだろうか。

それでは、他にもSOWNに登場した注目タイトルをご紹介しよう。

ノワールなグラフィック・ノベルがインタラクティブに

ポーランドのインディゲーム開発スタジオ「Atomic Wolf」が開発中の『Liberated』。硬派なノワール・グラフィック・ノベルをインタラクティブに表現したスタイルで、発売前から期待が高いタイトルだ。

コミックブックのコマの中がアニメーションし、シームレスにコミックの世界と行き来するスタイルで2019年のイベント「SXSW」ゲームプレゼンテーションにて4部門で賞を獲得した。舞台は政府によって国民が監視され、自由に行動する権利を奪われているディストピア。SNSでの発言、オンラインでの買い物の監視はおろか、GPSで居場所を常に把握されている。『Liberated』ではこの世界での管理する側とされる側、どちらの体験もできるという。Unityで開発されており、PlayStation 4、Steamにて2019年のリリースが予定されている。

Atomic Wolf。ポーランドではインディゲーム開発が盛んなのだそう。

空白こそが芸術である

こちらは中国のインディゲームスタジオ「NEXT Studios」が開発した『Unheard』。このゲームはビジュアルではなく、聞こえてくる音や話し声だけを手がかりにして、過去の事件を解決するというのがユニークだ。誰の発言を信じていいのか?君は真実にたどり着くことができるか?

NEXT Studios

開発のNEXT Studiosは、このゲームを作ったきっかけを「ビジュアルアーティストが産休に入ったから」と冗談交じりに語った。インスピレーションの元は、中国の伝統的な絵画のレイアウトのほとんどを占めるのが「空白」であるということ。鑑賞者が想像で空白を埋める、それこそが芸術性だというアイデアからだ。サウンドだけといっても、話している人が苛立っているのか、落ち着いているのか、など、様々な情報を得ることができるのにプレイヤーは気づくだろう。ラジオドラマのような経験をゲームで再現したという。既にSteamにて発売中。詳細はこちら

今年も個性豊かな作品が揃ったSOWN。来年の開催も楽しみに待ちたい。

齋藤 あきこ - 2019年10月11日